48-30.オコの気持ち2
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
48-30.オコの気持ち2
オコと15歳のコンコンは驚くほど似ていたので、俺には新しいオコも違和感がなかったが、当人にとっては、やはりこの事は引っかかっていたのだ。
オコの母サリナは妖狐の里の女だから、同じ妖狐の里出身のコンコンの若い時と姿が似ているのは当然だ。
歴代の妖狐は全て初代妖狐の面影を残しており、先先先代妖狐の鼎尾銀狐はとりわけ初代様に生写し(尾が三本な事を除けば)と言われていた。
だが父の吐心(蓬莱系)の遺伝子が失われたのは残念だとオコは思ったらしい。
オコは大人になるまで両親に会った事はなかったが、俺が行政改革を行い、ジョウザの使用人全てに里帰り制度を実施した時、妖狐も例外にはしなかった。
だが妖狐を出した家は、妖狐とは完全に縁を切らねばならず、オコが里帰りしても実家というものはないのだ。
なので俺はオコの実家にオコを
「遠縁の娘」
と言う体で里帰りさせ、両親や弟妹に再会させた。
妖狐の里の娘は出来るだけ素質のいい婿を迎えるのが目的であったため、必ずしも妖狐の里生まれの男子(出生比率は女9:男1)に拘らず、世界中に知れ渡った
「美女の里」
を目指してやって来る男たちの中から優秀な者を婿に迎える者が多かった。
そう言う夫婦から次期妖狐が生まれるのである。
選ばれなかった妖狐の里出身男子は、外国に出て働く事になり、娘たちの中にも婿を取らず、外国から来た男と外で結婚する例もあった。
なのでどこの家にも都合よく
「家を出て外国で暮らしている親戚」
はいたのだ。
オコが実の娘である事を隠して実家に初めて帰った時、弟や妹たちはこの異国から来た親戚のお姉ちゃんを大歓迎したが、両親にはジョウザに知らされずともオコがあれほど会いたかった娘である事がわかった。
両親にとってオコは初めての子で、最初オコをジョウザに差し出すのを断るつもりだった。
だが村長はじめ村人にとって、妖狐が出るのは大変な名誉であり、実際その家にも里にも多額の支度金も入ったので、よもや両親が反対だなどとは夢にも思わなかった。
若い両親の里の掟に逆らえなかったのだ。
両親は泣き寝入りするしかなかった。
ちなみに俺の両親も俺をジョウザに渡した事を後悔し返還運動まで起こしている。俺はその事を知らず、金で俺を売った毒親だと、成人するまで両親を憎んでいた。
そんな経緯があったので、俺はオコを里帰りさせる事を決心したのだ。
オコが初めて実家に戻った時、弟妹たちが寝静まった後、両親はオコに跪いで許しを乞うたという。
オコは両親を抱きしめ、本当の再会を喜んだ。
後で聞いたのだが、この時オコは父の吐心を見て、その佇まいに俺の面影を感じて驚いた、と言う。
もちろん俺と吐心には血のつながりはない。
俺はジョウザ近在の村で生まれ、外見はその辺りの住民と同じだ。
カールした黒髪とあざ黒い肌。
いわゆる大街道人なのだが、背は平均より低く、肌の色もそれほど濃くない。
これはジョウザ宮殿で勉学と修行の日々を送っていたせいもあるが、ジョウザを飛び出して流浪の旅をしていても変わらなかった。
今では鍛えられ逞しくなったが、背は結局170cnちょっとしか伸びなかった。
鼻も大街道人の平均よりは低く、蓬莱を旅してもあまり異人とは思われなかったほどだ。
パーサはこの事にとても興味を持って
「ウラナさは前世で蓬莱に似とる国におったんでしょう?その霊魂が、こっちでウラナさのかだらに宿ってさいが、それが体付きや顔立ちに出てきてまったんだないの?」
と根拠のない持論を展開していた。
俺と吐心の顔立ちは似ていないけれど(彼は昔の侍のような顔立ちだ)、オコは父の佇まいが俺に似ているので、体を入れ替えて蓬莱人の血が混じっていない外見に生まれ変わった事を残念がった。
それ以上にオコのトラウマになったのは手術が終わった後のコンコンの心ない言葉
「同じ十五歳でも、お乳はわての方が大きいわえ」
わえ
わえ
わえ…
あの頃俺は
「これしかない!」
という感じで脱出作戦を練っていたけど、もっと相方の気持ちを考えるべきだった。と後悔している。
コンコンの外見は、15歳がピークでそれ以上体型は変わらなかった。
と聞いてオコの心に炎が灯った。
ペンジクの美容の女神(世界初のピーリング実行者)パトゥニーや、実妹で美容品の交易で大きな利益を上げていたリュナの指導を受け、エステとエクササイズに努めた結果、現在のオコのボディは理想に近づいている。
もちろん巨乳とかなんとかだと(俺はあまり好みではないが)、オコを凌ぐ女性はいるだろう。
オコの体はあくまでも実戦のため。
鍛え抜かれた肉体だ。
前世ギリシャ神話の伝説の女戦士国
「アマゾネス」
は弓を射るのに邪魔になる片乳を切り落としたと言う(怖)。
オコは狩をする時に、日本の弓道の女子選手の様な胸当てをつける。
そのサイズをしばしば交換せねばならない程、発達が続いている。
俺はオコが大好きだが、その刺激的な発達が、俺の心を大いに乱すのだった。
ラピュタで言うなら
「すまんがその胸をしまってくれんか?ワシには強すぎる」
と言う感じだ。
ちなみに子供ができてゆったりした(そんなに太ってはいないが)オコも大好きだ。
そして俺たちの子供たちが
「俺に似てきた」
と喜ぶオコは、初めて15歳で経験した
「肉体の喪失」
を克服したのかもしれない。
(完)
※いや嘘です。終わりません。
※48部の主な登場人物
◯旅の仲間(ビッグセブン+α)
メグル(ウラナ)…主人公。元ボン76世(未)。旅行家志望。生真面目なまもなく18歳(僕)と結構浮気症な66歳(俺)が同居している。"国民的英雄"に加え、"改革者"の称号を獲得。更にマーリンから"人類の代表(略して人代)"を押し付けられる。
聖狐天の父となる。朱雀国ガルーダ元帥となる。
オコ…メグルの妻の元妖狐。メグルとの子作りを夢見ている。弓の達人。弱者の味方で直情的。聖狐天の母となる。大聖母。
コンコン…先先代妖狐。通常は子狐に憑依しているが、最近は仙桃の力で元の姿も長くとれる。
ステル(ラン子)…鳥ジャガー神。ラン(獅子)とヘレン(白虎)の娘。メグルをあるじと慕う優しい少女。第6章で進化を遂げ成体、幼体(子猫)以外に猫耳娘の形態をとる。第26部でさらなる進化を遂げ、龍神ケツァルコアトルにも化身。別名悪食。
パーサ…元八娘2号。シバヤンから譲渡され、メグルの侍女となった名古屋弁美少女。諜報活動に大活躍。自称第二夫人。大型肉食獣アヌビスと美しい牝馬に変身出来る。
今後は小説家になるらしい。
ノヅリ…バクロン第3王子。魔法省長官を辞し魔法修行の旅に出る。メグルの師匠。コリナンクリンの夫。
コリナンクリン…ワタリガラスの鳥神。運送業ワタリガラス商会の女社長。ノヅリの妻。
"僕"…"俺"の中に共存する肉体の本来の持ち主。スミティと共にウラナに様々な助言をする。
八咫…ノヅリ師匠とコリナンクリン社長の息子。寄宿舎学校に通っている。
トトム…師匠と社長が駆る飛竜。知性が芽生えつつある。
○聖狐天神界
聖狐天…オコを崇める人々の信仰が造り出した神をオコの分魂とメグルの造った依代で具現化した新しい神。ウラナ夫妻の娘。
シャミラム…聖狐天四天王の一人。元北風の巫女。
サンコン…聖狐天四天王の一人。オコの先々先代の鼎尾妖狐。
二娘…聖狐天四天王の一人。ナンバーズ一の武人。
メルファ…聖狐天四天王の一人。元暴風の魔女メル=ハバ。
ドルマ…ゴルモア大草原の元霊犬。聖狐天を守護する魔喰い。よつばを産む。
○ナンバーズ
一娘…ナンバーズの統括。シバヤンの宮宰。
五〜七娘の母。
二娘…武人。聖狐天に仕える。八娘の母。
三娘…シバヤン宮廷の家事一般を取り仕切る。完全なお掃除をする侍女人形。
四娘…隠密活動に特化。上警で働く侍女人形。
五娘…キャーリーの親友。足が速い。
六娘…唯一人間と同じ消化器官を持つ。記録の神殿で修行中。
七娘…背が高い。宇宙での活動に特化。
八娘…パーサ。クローン分裂したもう一人の八娘のパー子は、人間のパナとなりバクロン元第5王子にして元国王アルディンの妻。
○その他の神・人
アドミン…管理者。スミティを派遣する。
スミティ…アドミンに派遣されたエージェント。メグルの脳内で、メグルの宿主意識の少年と暮らし、メグルに助言する。
マーリン…古代の魔術師。元人類の代表。因業爺。超古代の英雄神イーオンの転生。太古の名はアダムらしい。ゴンドワナでは白いフクロウを依代とする。
ミグルディア…マーリンの養女。名付けの聖女。
ベンガニー…元ジョウザの侍女。大ベストセラー作家。今回はコンサートツアーギョウザ公演のプロデュースと新しい"3メタル物語"の脚本を担当。
小孫妹…ベンガニーが飼っている金糸猴の小猿。
パピーズ…レムリアとゴンドワナを行き来出来る4人の犬人の子(ウラナ、オコ、ノヅリ、セイコのαと4匹の橇犬の仔犬(同β)。
3メタル…初代妖狐の娘白銀丸、初代妖狐の義妹の黄金丸、赤銅丸。
レナルド・ダンチビ…妖狐の里の天才発明家兼工房長。
イグルー…大氷原の族長の娘。ヤクスチランワイン貯蔵庫責任者。ベンガニー本のヤクスチラン語翻訳者を目指している。自著名"威愚瑠烏"
トマレ…大氷原の少女。
ウメダ…元チャガマン公国の王子、現在はアマランタインの夫。ハーフエルフ同士の子。
アマランタイン…千年の眠りから覚めたエルフ女王。
ハツホ…ウメダとアマランタインの息子。
○オコの家族
吐心…父。蓬莱系移民。
サリナ…母、妖狐の里一の踊り子だった。
御供…オコの弟。二娘とメルファに師事。請われて女神モリガンのタイラン軍に入隊。
リュナ…オコの上の妹。商才に長ける。
愛…オコの下妹。魔性の妹で今はローカルアイドル。
○神々
ダガムリアル…古代神の一人。滅亡したドワーフの祖先神で工芸の神。キャーリーと結婚。
シバヤン…ペンジクの有力神。破壊と創生神。
パトゥニー…シバヤンの妻。慈母の女神。
キャーリー…シバヤンとパトゥニーの娘。ダガムリアルの妻。漆黒の女神。太古の女神スバーハと習合している。
アヌビス…ナイラスのミイラ作りの神。パーサの義兄。馬鹿助。
マァト…太陽神ラーの娘、冥界審査官、冥王補佐、アヌビスの恋人。
記録の神殿の神官…本名は漆黒大陸の神オニャンコポン。
アンゴルモア大王…ゴルモア人の大草原冥界で暮らす先祖神。
モリガン…タイラン島の女神。実体はナイラスのマヤ・ティティ。マヤ・ティティはモリガンの頭の中で夫のイグナスIII世と共存している。
ターワン・ラメン…古代ナイラスの元帥で御供の守護霊。タイラン島の猿人を指揮するため御供を左腕にして復活する。
レムリア神…ついに明らかになったレムリア最高神は宇宙生命体天御中神だった。レムリア神は天御中神の作ったプログラムで、生命の創造と進化を担当。
ワダツミ大神…蓬莱の海神。ムーの主神でカナロアと呼ばれたが、本当はオケアノスと言う古代の海神。正体は宇宙生命体天御中神の組んだプログラムで、生命の環境を整える役目を負う。
朱雀王…朱雀神界の主神。メグルの主筋。
高御産巣日神…天御中主神、神産巣日神とともにレムリアを訪れた神。天御中主神の作ったプログラムか?別の宇宙生命体か?
日見呼主命…蓬莱の主神。正体は不明。
スクナヒコナ…ヒーナル。波乗りする小さな神。ワダツミの子として、ワイハ人をムー島嶼に導いた。正体はワダツミ大神の創造した上位エージェント。
伎芸天…所属神界のない芸能神。芸能事務所社長。実は醍醐如来の娘にあたる。
フォクシー御酒子…3メタルの振付を担当する世界的振付師。
三元道士…マーリンの弟子の一人でコリナンクリン社長の同級生の親友。
ドスル…名前を奪われた元古代神ロキ。放浪しながら魔女を追う。現在は軍師。
パトニカトル…現レムリア神界最古の神。酒神。ヤクスチランの主神。オオモノヌシとも言われる。
ハトホル…ナイラスの女神。マヤ・ティティの母。前世はイブ。
ハマチャーン…ペンジク神界の猿面の神。
斉天大聖…上警の上級捜査官。水簾洞の主人でハマチャーンのクローン兄弟だった。
クロノス神…運命の神。レムリア人・神々が、漠然と思う時間の神。実際には時間局を統括する四次元神。
醍醐如来…醍醐教の主神。
大日如来…醍醐教密教の主神。
不動明王…大日如来を護る五大明王の一人。だけでなく、大日如来の意を伝えるCOO役でもある。
薬師如来…醍醐神界の医療・薬学の総帥。
観世音菩薩…醍醐神界のお助けヒーロー。33の変化体を持つ。
シンダル王…エルフの祖先神。
制咜迦童子…不動明王の眷属八大童子の八男。
孔雀明王…密教守護神で、ペンジク由来の強力な女神。
西老猴、北武猴、南温猴、東徹猴…水蓮洞の四大猴。
魔光仙女…斉天大聖の娘で売れっ子漫画家。水簾洞の金糸猴。通称マコちゃん。
ディード…ポエミの神。幼名エリッサ。亡命魔神。
○敵
合理キー(仮)…パーサの首を捻じ切った謎の怪力マン。正体は天使のプロトタイプ。
ヨルムンガンド級…オケアノスが警告するラグナロクでの強敵。精神操作系の術者だと思われる。
カペラ…スミティと同等の宇宙生命体の部下。
ケイオス…アドミンと同等の宇宙生命体。
天使兵…宇宙空間でスサ大神を拘束していたフェンリル級怪力天使。生物ではない様だ。兵団単位。
怪僧…黒衣の修道僧の姿の魔女の新しい部下。天使を操る力を持つ。正体は蓬莱東国の銅居。
虚無の女神…宇宙生命体でも制御出来ない、天体を飲み込んでしまう負の存在。ブラックホール的なもの。
マチアス・ナビル…バクロン魔法省に処刑された、当時12歳の少年。しかし心理地雷で脱出し、魔女の陣営に加わる?ヨルムンガンド級と思われる。別名魔智吾主。
◯第48部の登場人物・神
レムリア…レムリアくん。レムリア坊や。ミグルディアの命名。マーリンとハトホルの子。高位の生命体、またはプログラムと思われる。ミグルディアによって新たに『幼な子の君』と名づけられる。
マリス・プロタ…元マチアス・ナビル。名付けの聖女ミグルディアの名付けによって、新しい名を名乗る。
ミグ・プロタ…元ミグルディア。
テケ…ルディン村にいた孤児。体力抜群でボディガードに抜擢された。
レイラ…山賊村の姉妹の妹。抜群の動体視力を持ち、上警の捜査官になった。
エール…山賊村の姉妹の姉。結界の展開能力に優れ、上警の捜査官になった。
羽鳥子蔵…異我忍者の上警捜査官。仲間の負った怪我を代わりに引き受ける能力を持つ。




