48-3.任務
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
48-3.任務
『運命神のいう通りに流されるのは、ちょっと癪なんだよなあ。何か俺たちもミグ達を助ける方法がないか…』
『先ほど言いましたが、ルールが変わりましたよね?』
『通行ルールのこと?』
『はい。マリスとミグはレムリアとゴンドワナを通行出来る初めての人間です』
『それは運命神の計画で』
『他にもそういう人間がいるかもしれない』
『!どうやって探す?』
『わかりません』
なんじゃそりゃ。
だがそんな人間がいる。という事さえ、つい先日お守りで確認できたのだ。
『お守り、いや髪の毛を集める。とか?』
『その前に大切な事があります』
『どういう事?』
『いつもなら、あなたが真っ先に指摘しそうなものですが』
俺は、俺たちのエージェントが突然扉を叩くシーンを想像する。
「どなたですか?」
「人代の代理の者です。あなたが異世界に行ける能力をお持ちとわかりましたので、すぐお支度ください。ご案内します」
「異世界?なんで私がそんなところに?私には妻子がありますのに」
「残念ながら奥様とお子様には適性がないと判明しました。お一人で参加頂けますか?」
ダメじゃん。これ。
『つまり宇宙生命体の感覚なら、本人の意思は関係ない。と』
『まあそうですね。“適材適所”です』
『確かにまずいなあ。というか無理やり連れて行っても自暴自棄になって、マリスとミグの邪魔をしかねない』
転生もので、無理やり異世界に召喚された高校生とかが、無茶苦茶やる話、結構多いよな。
『それが人間らしい感情、というものだと分かってきました』
感情の件でスミティに指摘される日が来るとは思わなかった。
『これは是非とも必要な施策だが、時間がかかるな』
『運命神の計画、というか、彼らがパピーズを設定した理由が私にはわかります』
『このため。という事?ゴンドワナでのマリスとミグのサポートじゃなく?』
『あの二人は孤立しなければなりません。自分で賢者やヴァルガ神に会い、人間の祖神たるを宣言し、人を集め、国家を建国し、ゴンドワナの人類を復活させねばなりません。どうしても犬人の利益代表になりがちなパピーズの助言を受けたりは、しない方がいいでしょう』
レムリアで滅亡の憂き目を見た異種族たちの一部は、人間との混血を選び、比較的目立たない
「隠れ里」
的なところにひっそりと住んでいる。
古代のナイラスとポエニ人の逸話を除けば、人間とそれら異種族との間に対立とか弾圧とかはなかった。
だが、ゴンドワナの異種族もそうとは限らない。
エルフは相当気位が高そうだったし、ドワーフも頑固一徹だった。
マリスとミグの子孫たちと混血した新人類と、それら純血異種族の間に、対立が生まれない。とは確約できないのだ。
『それを解決するために祖先神がおり、エルフのシンダル王やドワーフ神のダガムリアル、犬人の神マルモシウスなどと協調していく必要があるのですが、味方する信者の強化は必要でしょうね』
神々の力関係。
というものもあるだろう。
『俺たちが、適合しゴンドワナ行きを希望する者を探し出し、定期的にゴンドワナに送り込む必要があるわけか』
『いえ、それはビッグセブンの仕事ではありません。パピーズに任せればいいのです』
『そういうことか』
『はい。こちらで如何に張り切って人員を送り込んでも、マリス達にはありがた迷惑かもしれないじゃないですか』
『そのへんを総合的に判断できるのが、どっちにも行けるパピーズ。ということか』
『そのために運命神はパピーズを選んだのだと思われます』
俺は早速ビッグセブンとパピーズを呼んで、スミティとの会話内容を伝えた。
「ちょっと頭が追いつかないのでまとめるね」
社長が、黒板を取り出して整理する。
1.マリスとミグはゴンドワナに渡り、ゴンドワナ新人類の祖先神となる。
2.最初はマリスとミグの子しかいないので、異種族と混血せざるを得ない。
3.だがそのままでは異種族のコミュニティに飲み込まれるだけなので、運命神は過去のゴンドワナ人を召喚するだろう。
4.召喚されたゴンドワナ人はゴリゴリの純血主義者とは限らず、彼らに淘汰された混血容認派もいるだろう。
ここで社長は俺に確認をとって付け加えた。
5.マリスとミグはレムリア神の創造物なので、子供は産める。だが召喚されたゴンドワナ人はラプラス神の創造物なので、異種族との間でしか子供を作れない。
6.レムリアにはまだ、ゴンドワナに行ける素質のある者がいるかもしれない。そういう者を探し出してゴンドワナに送り込み、マリスとミグを助ける事が必要。
7.本人の希望なしに強制的にゴンドワナに送り込んだりはできない。それを見定め、希望者をゴンドワナに送る機関が必要。
8.ビッグセブンはゴンドワナに行けないので、サポートしかできない。主力はパピーズ。
社長はパピーズのところにハナマルをつけた。
「僕たちがそんな大事な任務を?」
ウラナαが身震いする。
「いや、そんなに身構える必要はない。マリスとミグを導いたり諌めたりする必要はないんだ。全てはゴンドワナの運命なのだから、彼らが決めることだ。だが彼らが新しい国民を必要とするなら、こちらで準備する事くらいはできる」
「古代ゴンドワナ人とも上手くやらなきゃ行けないだろうし、お二人も大変なわけですね?」
「そうなんだ。これらの事が、彼らの孫の世代あたりに、一気に起きる。だから彼らが必要ならレムリア人を送り込む事ができるように備える事が、君たちの任務だよ」




