47-35.神話の世界
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
47-35.神話の世界
「マリス君には正式に紹介していなかったね。彼らが俺たちの仲間、パピーズだ」
ミグルディアは既に聖狐天の御前で会っている。
「初めまして」
マリスは気乗りしなさそうに挨拶をする。
「マリス君、彼らの種族がわかる?」
「犬は逞しくて、何かの使役犬でしょうか?」
「βたちは、大氷原の橇犬だ」
「大氷原!あのヤクスチラン帝国の近くにあり、常人は決してたどり着けないと言われる極寒の地ですね?」
「そう。そこで橇犬の子として生まれた4兄妹さ」
マリスは膝をついて、一頭ずつ前足をとって挨拶する。
セイコβが
「きゅう〜ん」
と鳴いた。
「え?なんて?」
とオコが聞くとセイコαが通訳する。
「若いのに礼儀正しいわね。これならミグルディアちゃんを任せても大丈夫。だって」
「ああそういえばセイコαはもう知ってるんだよね?」
「僕のリリス因子が増大したとか言って、脅かすお姉さんですよね?」
【現在、マリスのリリス因子は常人以下です】
「それそれ」
「それでマリス君は、パピーズの残り4人をどう思う?」
「どう思う?って人間の子供でしょ?10歳くらいかな?」
αたちは人前では、騒ぎにならない様に帽子や頭巾を被っているのだが、それを脱ぎ、ズボンやスカートも脱いだ。
パンツは履いてるぞ。
「え?ええ〜つ?」
マリスはちょっと声を上げた。
「耳と、尻尾?」
「そうだよ。本物だぜ」
αたちは耳をピクピク動かし、尻尾を盛んに振る。
「ステルもステルも」
ステルはヤクスチランの鳥ジャガー神の化身である事を公言しているので、そのサーバル娘ぶりは知られているが、スカートを脱いで尻尾を見せることは少ない。
だがステルのこの化身形は15歳位の少女の設定なので(※メタ表現)、ちょっとはしたない。
「やめなさい!」
やっぱりきっちりオコに〆られている。
「こういう種族をマリス君は見た事ある?」
「神話図鑑の中でなら。古代にレムリアにいた、犬人ですよね?」
「よく知ってるね」
「小さい頃、ミグルディア先生に読み聞かせしてもらったんです」
3歳だもんな。
神童といえど、ミグルディアは家庭教師であり、イギリス風で言えば、メアリ・ポピンズのようなナニーだったのだろう。
マチアス少年にとっては、楽しい思い出の1つなのかな?
「で、なんでここに犬人の子がいるのか、不思議じゃないかな?」
「人代様のパーティですからね。異国の神、ワタリガラス神、子狐の幽霊。これだけいたら、大抵驚かなくなりますよ」
「まあ、そうかもね。だけど俺はこの子達をどうやって仲間にしたと思う?」
「マーリン師の幻覚魔法?あるいはシバヤン神の自動人形とか」
「いーや、彼らは両親から生まれた生き物だよ」
「まさか!どうやってレムリア神の目を逃れて?」
レムリア人で、レムリア神が行った愚行、つまり
「人間以外の高等生物の繁殖を阻害し、徐々に滅ぼす」
施策を知らないものはいない。
少なくともラグナロク後もしばらくは、人間はそれらの生物と共存していた。
エルフ、ドワーフ、ものを言う獣。
寿命の短い方から姿を消して行き、エルフだけがつい百年ほど前まで生きていた。
犬人の寿命は人間と変わらないので、早々に姿を消し、伝説にさえ余り残っていない。
「レムリア神の目を逃れる事など出来ない。シバヤン神でさえ、どれだけ人間に近づけるかを実験したナンバーズを八娘で断念せざるを得なかった」
「アシ、アシが最後の最高傑作なんだでかんわ」
パーサが妙な自慢をする。
「では、彼らは…」
「別世界から来たんだよ」
「!!」
「そ、それはちょっと奇想天外すぎませんか?」
ミグも驚く。
ゴンドワナの事は、聖狐天神界の者とマーリン、シバヤン、そして大氷原のイグルーくらいしか知らない。
そしてビッグセブン以外にはパピーズの能力を知っているのは、聖狐天とマーリンだけだ。
「ミグは前からα達を知っているはずだが、不思議に思わなかったの?」
「耳は…見た気がしますが、尻尾は見てなかったです。耳は犬と仲良くするための道具だと思ってました」
前世の萌えグッズのネコ耳みたいなものと思ったらしい。
「では正解を述べよう。彼ら犬人の子は、異世界のゴンドワナから来た」
「ゴンドワナ?聞いたことがありません」
「君はペンジクの古代神話、大魔王ヴァルガとアスラ軍団の話は知ってるだろう?」
「シバヤンがスーパー美少女戦士を作るお話ですよね?あれも好きだった」
ヴァルガに追い出されたペンジク諸神は、魔具や体を提供し、シバヤンがサンディを作り、ついにヴァルガを異界に追い払った。
だがサンディのエネルギーが暴走し、今度はサンディが町々を破壊し始めたので、シバヤンは神々から責任を追求され、サンディに立ち向かうが、会えなく踏みつけられる(この姿のシバヤン神像がある)。妻パートゥニーの助言を受けたシバヤンは、サンディを優しくハグし(この姿の神像もある)、サンディを第二の妻として迎えることを宣言し、サンディの暴走は止まる。
というラブストーリーだ(ちょっと違う)。
「そのヴァルガが治めていたのだがゴンドワナだ」
「ではゴンドワナは魔界ですか?」
「いや違う。アナザーストーリーなんだよ。ヴァルガはゴンドワナでは偉大な狼神さ」




