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47-34.ミーティングの前

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


47-34.ミーティングの前


「夕食後話がある」

俺はマリスとミグに告げる。

2人はちょっとピリッとしたが

「では、私たちの処遇が決まったんですね?」

とミグが言う。


「さっき御手水のついでに、ちょっとあんたたちの部屋覗いてんけど、なんやあの布団は」

もう姑モード全開のコンコンが突然聞く。

「何?布団がどうしたの?」

二日目からは部屋を移動して、いつものラブラブ部屋を二人に明け渡している社長が聞く。

頭の中に部屋の間取りを思い起こして、ニヤニヤしている。


「どうしたもこうしたもおまへんで、部屋のこ〜んな端っこに離して布団敷いてはるんやで」

いつもは師匠と社長が宿泊する、ステル曰く

「ただれきったじょうよくべや」

は蓬莱風の和室で、八畳の畳の間に、縁側みたいな細長い部屋がくっついている。

和風旅館によくあるガラス窓と障子の間の板の間で、テーブルと椅子が2つ置いてあったりするやつだ。


ミグは部屋に入ってすぐに布団を敷いており、廊下から見たコンコンが

「よしよし、2人で仲よう1つの布団で寝てはるんやな」

とニマニマしながら、ふと部屋の中に入ると(入るなや婆さん!)、その板の間にもう一客布団が敷いてあった。

というわけだ。


「え〜いっしょにねてないの?はんしょくできないじゃん」

とステルが相変わらず際どい事を言い、2人が赤くなる。

「い、いや先生と、そんな、ふしだらな」

マリスが完全にテンパって先生呼びに戻る。


「キスくらいしたんでしょうねえ」

オコがちょっと意地悪く聞くと、2人がシンクロして手を顔の前で振るのが面白い。

「しとらせんの?なっさけにゃあなあ」

とパーサに言われ、ミグがちょっとムキになって

「キスは毎晩してもらってます」


「「「「おおお!」」」」

女性陣盛り上がる。

「寝る前にマリスが私のおでこに」

一同夕食の支度ができた大広間に転がる。

「コラカン」

「奥手も限度を超えると、犯罪やな」

前回の女子会で、この手のネタは出尽くしていたのではないか?

と思ったが、あの時は滅多に参加しない社長にアダルティな質問が集中したらしい。


「君たち愛し合ってるんだろ?」

師匠も不思議そうに聞く。

「「もちろん!」」

「抱き合うたり、接吻したり、ややこし事したくならへんのか?」

とコンコンが聞くが、これは実はかなり自虐的な問いなのだ。


ジョウザの妖狐は、主君として仕えるボンに生涯の愛と忠誠を誓うが、醍醐教の生き菩薩であるボンは、女性に触れる事は生涯ない。

つまりこの若夫婦の(ねや)を覗くのが趣味みたいなエロい小狐婆さんは、生涯愛する人と交わる事がなかった。


オコもボンとして俺が生涯をジョウザで終えれば、同じ運命だったのだ。

ただスキンシップの方は1つ上の姉ちゃんとして一緒に育ったので、途中まではハグとかはし放題だった。

ある年齢になってからは、ボンとその妖狐として、側からみておかしくないようにはしていたよ。

人前ではね。


「マリスは2人っきりになると、私をうっとり眺めているし、私は恥ずかしくて…」

「うぶなねんねじゃあるまいし。あんた、あの子のなんなのさ」

ステルが宇崎竜童のように凄む。

「僕は、彼女のフィアンセです!」

マリスが断言し、一同拍手する。


「それなら、せめて今夜からは布団をくっつけて寝なさいよ」

社長が命ずる。

「そうだね。それでまず手を繋いで寝るところからだ」

師匠もアドバイスする。

「手を…つなぐ」

ミグがもう倒れそうになっている。


「それができたら、今度は1つの布団で腕枕ね」

社長がつなぐ。

「腕枕…。なんて素敵な!」

マリスが叫ぶ。

が、現実には腕枕は男女ともに中々の苦行だという話がある。

男性は

「ずっとしてると腕が痺れてくる」

女性は

「男の腕は硬くて眠れない」

らしい。


それで適当なところで、

「ふふふ寝てるね、ぐっすりお休みベイビイ」

とか言って女性を隣の布団に移し、女性は実は起きてるのだけれど

「ああ、助かった」

と安眠に入る。

までが遠足らしい。


「まあその問題はともかくとして夕食後、そうだなひとっ風呂浴びてから、この大広間に集合だ」

「承知仕りました」

「精進潔斎して参ります」

「なんか2人ともあまり固くならないでよ。そうだね楽しい遠足のお話だと思ってさ」

「せんせい、バナナはおやつに入りますか?」

だから、なんでステルはそういうフレーズを知ってるんだ?


俺は高揚していた。

一番の心配事。

世界の未来を左右するほどの問題が、もうすぐ解決するかも知れないのだ。


だが同時に俺の心の中には

「これは二人を厄介払いしたいだけじゃないのか?」

という気持ちも湧き上がっている。


なんか子猫を数匹拾って、必死に里親を探して、

ようやく見つかった時に

「もうこの子たちには会えないんだな。達者でな」

みたいな感傷だ。


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