47-20.記録の神殿にて
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
47-20.記録の神殿にて
「マリス・プロタ様、ミグ・プロタ様と…」
神官は申告通り記録簿に記入し、ニッコリと微笑む。
「お待ちしておりました」
どういう事?
つい先ほどミグルディアが名付けたはずの名前を、なぜ神官が知っている?
「神官さんはこのお二人をご存知で?」
つい訊いてしまう。
「プロタ夫妻が御来殿なさる事は、3千年前から予約されておりました」
この施設も何か運命神との関係があるのだろうか?
元々記録の神殿は先代神官が趣味で旅人の宿屋をやっていたのを、オリビア会議の前身にあたる神界連合的な組織が
「通行者(通れるのは人間より上の存在のみ)の記録をとって保存し、何か事件があった時の資料として欲しい」
という、現在の上警にあたる組織の要請で改装したもので、現在も宿泊費・食事代は無料だが、個人情報は申告しなければならない。
偽りの情報で宿泊することも出来ないことはないが
「××と偽っている○○」
ときっちり記載されてしまうので、今回二人が
「マチアス・ナビルとミグルディア・ゲオルギウス」
と言う元来の名を名乗らなかったのは正直
「やっちまったなあ」
と言う感じだった。
だが神官は一切前歴を問いただすことなく、ミグルディアが新しく名付けた名を受け入れ、その上予約があるとまで言うのだ。
「その…予約された方のお名前を教えて貰う訳には?」
と俺が聞くと、当然の様に
「コンプライアンス上、お伝え致しかねます」
と言う言葉が返ってきた。
まあそうだわなあ。
上警の依頼であれば教えてくれるかも知れないが、これは捜査上必要であると上席が認めねばならないし、例えば四娘の上席はオブリトゥスNo.6という謎の神なので、簡単には令状を貰えそうにない。
例え何とか依頼出来たとして、回答が例えば
「三千年ほど前、デウス・エクス・マキナ様がご予約されました」
と言う回答だったとしても
「ほぅ…なるほどねえ」
だけで、3次元人の俺が4次元人とコミュニケーションを取ったりは土台無理な話なので、捜査はそこで終わってしまう。
今回分かったのは、結局
「ミグルディアの名付け能力が本物だ」
と言う事だけだった。
俺たちはいつもの居室でくつろぐ前に、マーリンの別荘を訪れる事にした。
相変わらず宅配鳥だけが通れる小さな通路はオープンだったが、俺たちを結界は通してくれなかった。
ミグは通行許可証を持っているので、それで入り、義父の許可を得て俺たちを招き入れた。
「ワッ!」
マリスが飛び上がる。
「どうしたの?」
とミグが聞くと
「なんかドアノブがピリッとした」
「先生の軽い嫌がらせですね。後で〆めときます」
とオコαが言った。
「リリス因子は増大してませんので、軽い冗談です」
とセイコα。
「相変わらずマーリン様も僕もチェック対象なんだよねぇ」
とマリスが言うと
「はい、チェック出来る範囲に居られれば、永遠に」
とオコα。
「おお!ミグルディアよく帰って来た。ちょうどレムリア坊やも旅から帰ってきてなあ。そりゃもう大騒ぎ。ところで…、あんたあの娘の、なんなのさ」
と翻訳機能が懐かしいところでボケをかましてくれた。
俺の前世、大学時代。
よく夕飯を食いに行った中華料理屋になぜかジュークボックスがあって、先輩がずっと掛けてたなあ…。
「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ(ダウンタウン・ブギウギ・バンド)」
「そりゃもう大騒ぎ」
の前は
「マリーのお客を取ったってサ」
だった。
ちなみに
「あんた、あの娘のなんなのさ」
と言うキメセリフだが、2番以降は酒場の女が、ヨーコのことを色々語るのだが、1番だけは
「そんな娘沢山いるからねえ、知らないねえ」
みたいな塩対応なのに
「あんたあの娘のなんなのさ」
と言ってしまうのは、ちょっと変だな。
と思っていた。
「あんたその娘のなんなのさ」
が正しいよねえ。
だが、2番以降のリフレイン効果を考えると、“あの“で統一したいんですよね。
だったら…と当時ソンガー・シングライター(ネタです)目指してた俺は考えた。
「これはシラを着るつもりが、つい好奇心にかられて、ヨーコを知ってる事をバラしちゃった本当は人の良いママさんを描いているんじゃないか?」
と。
まあそこまで深読みは違うかな?
と思ったけど、後でこの楽曲が宇崎竜童さんの妻、阿木燿子さんが、まさにチラシの裏に書いた処女作だったと知って、やはり仕掛けがあったか。と腑に落ちたものだった。
山口百恵さんに多くの歌詞を提供した阿木燿子さんと、松田聖子さんに多くの歌詞を提供した松本隆さんの作詞は、トリッキーな仕掛けがいっぱいあって好きだった。
「なんなのか?ですか。そうです僕がミグの旦那です」
と志村けん風の返しで、マリスは答える。
「マチアス・ナビル改め、マリス・プロタと申します」
「私も、ミグルディアからミグに改めました」
と言う挨拶を聞いて、例のちゃぶ台返しが始まるか?と思いきや、マーチンは大笑いを始める。
それは何分も続き、腹を抱え、そっくり返り、膝を叩いての大笑いだ。
しまいにはヒーヒー笑い転げた後に、マーリンは真顔になった。
※47部の主な登場人物
◯旅の仲間(ビッグセブン+α)
メグル(ウラナ)…主人公。元ボン76世(未)。旅行家志望。生真面目なまもなく18歳(僕)と結構浮気症な66歳(俺)が同居している。"国民的英雄"に加え、"改革者"の称号を獲得。更にマーリンから"人類の代表(略して人代)"を押し付けられる。
聖狐天の父となる。朱雀国ガルーダ元帥となる。
オコ…メグルの妻の元妖狐。メグルとの子作りを夢見ている。弓の達人。弱者の味方で直情的。聖狐天の母となる。大聖母。
コンコン…先先代妖狐。通常は子狐に憑依しているが、最近は仙桃の力で元の姿も長くとれる。
ステル(ラン子)…鳥ジャガー神。ラン(獅子)とヘレン(白虎)の娘。メグルをあるじと慕う優しい少女。第6章で進化を遂げ成体、幼体(子猫)以外に猫耳娘の形態をとる。第26部でさらなる進化を遂げ、龍神ケツァルコアトルにも化身。
パーサ…元八娘2号。シバヤンから譲渡され、メグルの侍女となった名古屋弁美少女。諜報活動に大活躍。自称第二夫人。大型肉食獣アヌビスと美しい牝馬に変身出来る。
今後は小説家になるらしい。
ノヅリ…バクロン第3王子。魔法省長官を辞し魔法修行の旅に出る。メグルの師匠。コリナンクリンの夫。
コリナンクリン…ワタリガラスの鳥神。運送業ワタリガラス商会の女社長。ノヅリの妻。
"僕"…"俺"の中に共存する肉体の本来の持ち主。スミティと共にウラナに様々な助言をする。
八咫…ノヅリ師匠とコリナンクリン社長の息子。寄宿舎学校に通っている。
トトム…師匠と社長が駆る飛竜。知性が芽生えつつある。
○聖狐天神界
聖狐天…オコを崇める人々の信仰が造り出した神をオコの分魂とメグルの造った依代で具現化した新しい神。ウラナ夫妻の娘。
シャミラム…聖狐天四天王の一人。元北風の巫女。
サンコン…聖狐天四天王の一人。オコの先々先代の鼎尾妖狐。
二娘…聖狐天四天王の一人。ナンバーズ一の武人。
メルファ…聖狐天四天王の一人。元暴風の魔女メル=ハバ。
ドルマ…ゴルモア大草原の元霊犬。聖狐天を守護する魔喰い。よつばを産む。
○ナンバーズ
一娘…ナンバーズの統括。シバヤンの宮宰。
五〜七娘の母。
二娘…武人。聖狐天に仕える。八娘の母。
三娘…シバヤン宮廷の家事一般を取り仕切る。完全なお掃除をする侍女人形。
四娘…隠密活動に特化。上警で働く侍女人形。
五娘…キャーリーの親友。足が速い。
六娘…唯一人間と同じ消化器官を持つ。記録の神殿で修行中。
七娘…背が高い。宇宙での活動に特化。
八娘…パーサ。クローン分裂したもう一人の八娘のパー子は、人間のパナとなりバクロン元第5王子にして元国王アルディンの妻。
○その他の神・人
アドミン…管理者。スミティを派遣する。
スミティ…アドミンに派遣されたエージェント。メグルの脳内で、メグルの宿主意識の少年と暮らし、メグルに助言する。
マーリン…古代の魔術師。元人類の代表。因業爺。超古代の英雄神イーオンの転生。太古の名はアダムらしい。ゴンドワナでは白いフクロウを依代とする。
ミグルディア…マーリンの養女。名付けの聖女。
ベンガニー…元ジョウザの侍女。大ベストセラー作家。今回はコンサートツアーギョウザ公演のプロデュースと新しい"3メタル物語"の脚本を担当。
小孫妹…ベンガニーが飼っている金糸猴の小猿。
パピーズ…レムリアとゴンドワナを行き来出来る4人の犬人の子(ウラナ、オコ、ノヅリ、セイコのαと4匹の橇犬の仔犬(同β)。
3メタル…初代妖狐の娘白銀丸、初代妖狐の義妹の黄金丸、赤銅丸。
レナルド・ダンチビ…妖狐の里の天才発明家兼工房長。
イグルー…大氷原の族長の娘。ヤクスチランワイン貯蔵庫責任者。ベンガニー本のヤクスチラン語翻訳者を目指している。自著名"威愚瑠烏"
トマレ…大氷原の少女。
ウメダ…元チャガマン公国の王子、現在はアマランタインの夫。ハーフエルフ同士の子。
アマランタイン…千年の眠りから覚めたエルフ女王。
ハツホ…ウメダとアマランタインの息子。
○オコの家族
吐心…父。蓬莱系移民。
サリナ…母、妖狐の里一の踊り子だった。
御供…オコの弟。二娘とメルファに師事。請われて女神モリガンのタイラン軍に入隊。
リュナ…オコの上の妹。商才に長ける。
愛…オコの下妹。魔性の妹で今はローカルアイドル。
○神々
ダガムリアル…古代神の一人。滅亡したドワーフの祖先神で工芸の神。キャーリーと結婚。
シバヤン…ペンジクの有力神。破壊と創生神。
パトゥニー…シバヤンの妻。慈母の女神。
キャーリー…シバヤンとパトゥニーの娘。ダガムリアルの妻。漆黒の女神。太古の女神スバーハと習合している。
アヌビス…ナイラスのミイラ作りの神。パーサの義兄。馬鹿助。
マァト…太陽神ラーの娘、冥界審査官、冥王補佐、アヌビスの恋人。
記録の神殿の神官…本名は漆黒大陸の神オニャンコポン。
アンゴルモア大王…ゴルモア人の大草原冥界で暮らす先祖神。
モリガン…タイラン島の女神。実体はナイラスのマヤ・ティティ。マヤ・ティティはモリガンの頭の中で夫のイグナスIII世と共存している。
ターワン・ラメン…古代ナイラスの元帥で御供の守護霊。タイラン島の猿人を指揮するため御供を左腕にして復活する。
レムリア神…ついに明らかになったレムリア最高神は宇宙生命体天御中神だった。レムリア神は天御中神の作ったプログラムで、生命の創造と進化を担当。
ワダツミ大神…蓬莱の海神。ムーの主神でカナロアと呼ばれたが、本当はオケアノスと言う古代の海神。正体は宇宙生命体天御中神の組んだプログラムで、生命の環境を整える役目を負う。
朱雀王…朱雀神界の主神。メグルの主筋。
高御産巣日神…天御中主神、神産巣日神とともにレムリアを訪れた神。天御中主神の作ったプログラムか?別の宇宙生命体か?
日見呼主命…蓬莱の主神。正体は不明。
スクナヒコナ…ヒーナル。波乗りする小さな神。ワダツミの子として、ワイハ人をムー島嶼に導いた。正体はワダツミ大神の創造した上位エージェント。
伎芸天…所属神界のない芸能神。芸能事務所社長。実は醍醐如来の娘にあたる。
フォクシー御酒子…3メタルの振付を担当する世界的振付師。
三元道士…マーリンの弟子の一人でコリナンクリン社長の同級生の親友。
ドスル…名前を奪われた元古代神ロキ。放浪しながら魔女を追う。現在は軍師。
パトニカトル…現レムリア神界最古の神。酒神。ヤクスチランの主神。オオモノヌシとも言われる。
ハトホル…ナイラスの女神。マヤ・ティティの母。前世はイブ。
ハマチャーン…ペンジク神界の猿面の神。
斉天大聖…上警の上級捜査官。水簾洞の主人でハマチャーンのクローン兄弟だった。
クロノス神…運命の神。レムリア人・神々が、漠然と思う時間の神。実際には時間局を統括する四次元神。
醍醐如来…醍醐教の主神。
大日如来…醍醐教密教の主神。
不動明王…大日如来を護る五大明王の一人。だけでなく、大日如来の意を伝えるCOO役でもある。
薬師如来…醍醐神界の医療・薬学の総帥。
観世音菩薩…醍醐神界のお助けヒーロー。33の変化体を持つ。
シンダル王…エルフの祖先神。
制咜迦童子…不動明王の眷属八大童子の八男。
孔雀明王…密教守護神で、ペンジク由来の強力な女神。
西老猴、北武猴、南温猴、東徹猴…水蓮洞の四大猴。
魔光仙女…斉天大聖の娘で売れっ子漫画家。水簾洞の金糸猴。通称マコちゃん。
ディード…ポエミの神。幼名エリッサ。亡命魔神。
○敵
合理キー(仮)…パーサの首を捻じ切った謎の怪力マン。正体は天使のプロトタイプ。
ヨルムンガンド級…オケアノスが警告するラグナロクでの強敵。精神操作系の術者だと思われる。
カペラ…スミティと同等の宇宙生命体の部下。
ケイオス…アドミンと同等の宇宙生命体。
天使兵…宇宙空間でスサ大神を拘束していたフェンリル級怪力天使。生物ではない様だ。兵団単位。
怪僧…黒衣の修道僧の姿の魔女の新しい部下。天使を操る力を持つ。正体は蓬莱東国の銅居。
虚無の女神…宇宙生命体でも制御出来ない、天体を飲み込んでしまう負の存在。ブラックホール的なもの。
マチアス・ナビル…バクロン魔法省に処刑された、当時12歳の少年。しかし心理地雷で脱出し、魔女の陣営に加わる?ヨルムンガンド級と思われる。別名魔智吾主。
◯第47部の登場人物・神
スサ大神…日見呼命神の弟。反転地の主。
クシュナダ姫…ペンジクコウモリ神の娘でスサ大神の妻。
レムリア…レムリアくん。レムリア坊や。ミグルディアの命名。マーリンとハトホルの子。高位の生命体、またはプログラムと思われる。
マリス・プロタ…元マチアス・ナビル。名付けの聖女ミグルディアの名付けによって、新しい名を名乗る。
ミグ・プロタ…元ミグルディア。




