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47-16.マチアスのプライド

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


47-16.マチアスのプライド


『マリスがプライドが高いと思うのですか?』

ミグルディアが幼少期の呼び名で言う。

『違うの?』

『私は3歳の時の彼しか知りませんし、今回会った時も私には丁重に接してくれてます。高飛車な所は微塵もありませんよ』


そりゃ幼児は大好きな先生に尊大な態度を取らなかったろうし、今のマチアスは恋する男だ。

ご機嫌取りもするだろうさ。


孔雀の様に雄が美々しく飾り立てるのは、求愛のためだし、牡鹿の角が立派なのは力の象徴だろう。

この様な自己顕示男を好む傾向は人間の女性にもあるだろうが(軽に乗ってる男よりレクサス男を選ぶとか)、どちらかと言えば着飾るのは女性の方だ。

人間の男性は好きな女性が現れるとひたすら女性のご機嫌をとる。

デートでレストランに入れば勘定は男が払うのが普通だし、服装も彼女に気に入られる様に必死だ。


『私の知らない時代のマチアスも、才能をひけらかして威張り散らした。なんて話はなかったはずです』

確かに復讐を決意して精神操作魔法にのめり込んでいったマチアスは、そんな事をおくびにも出さずに、にこやかに人気者の天才少年を演じてきた。

少しでも陰謀を疑われれば、モノがモノだけに即処刑が待っているからだ。


『俺が言っているプライドというのは、ちょっと違うんだよ』

レムリア人の宗教観は多神教だから、気に入らなければ簡単に神を捨てる事ができる。

そのため前世の一神教のような

「完全にうちのめされ、神に従う事を誓う」

と言う、使徒パウロみたいないわゆる

「回心体験」

を持つことが少ない(聖狐天信者にはそういう傾向があるが)。


絶対神に類するのはレムリア神だが、この神は

「語らぬ神」

であるので、信者になる事が困難なのである。

信仰が支えているレムリア神界では

「有名だが身近ではない」

神々は信仰の対象になり得ない。


バクロンの主神エルロンも

「沈黙の神」

として知られる。元々は古代アッチラの神だが、少女に暴行した。と言う神話があり、英雄ギルガメシュによる裁判で冥界の牢に繋がれた。

と言う不名誉な神なのだが、バクロンを征服したアンゴルモア大王の孫のイズ王(イザン朝の祖)が、打倒したバロニアの主神女神アステルに代わり、イザン朝バクロンの主神に据えた。


ゴルモア人にとっては始祖のアンゴルモア大王こそが祀るべき神であるので、統治のためにバクロンの民が納得すれば誰でもいいのであって、イズ王自身は

「神など要らんのだ」

と豪語していたのだという。


この態度こそが、自信あるレムリア人が神に対する態度であって

「ご利益がないなら乗り換えるぞ」

と言うプライドなのだ。


魔法と科学とは違うが、それぞれの信奉者は

「神には頼らず人間の力で問題を解決する」

と言う面では共通のプライドがある。

そこに運命神などという、極めて逆らいにくい力を持つ神が登場しても、簡単にはその存在を認めたくないのだ。


魔法の中では、聖狐天やオコの持つ神聖魔法は神の恩寵の領域であるのだが、治癒魔法使いたちはその力の大きさに驚嘆しつつも、学ぼうとはしない(学べるものではないが)。

治癒魔法を極めて、病気や怪我を治療する事に人生を捧げる。

神に祈って願いを叶えるのは、プライドが許さないのだ。


俺がマチアスのプライドについて説明すると、ミグルディアは

『そう言うプライドなら私にもありますけど、三次元の私たちが四次元のクロノス神に逆らっても仕方ないでしょ?』

と言った。


『君はクロノスの事を知っているんだね?』

と俺が聞くと

『魔法学院では学びませんが、魔法大学では主要な理論哲学の1つです』

と言った。


確かにナイラスの魔法大学でも、進化猫で未来予知学教授のトト教授は、時間論の専門家だった。

運命と言う人間や普通の神々では変えようのない時間の流れを読む。

と言う未来予知学は、占いとあまり変わりがない様に見えるが、クロノスの眷属神(同一神?)

である運命神が、どのような決定を下すかを予測しようと言う学問だ。


『マチアスは運命をどのように思っているのだろうか?』

『わかりませんね。だからこそ、やるっきゃない。と思います』

勇敢な女性だ。

そうだな、影響をあれこれ気にしているうちに、事態はどんどん悪化する。


ミグルディア処刑の真の黒幕を明かすことで、マチアスがどうなるか?


自信を失って引きこもるか?

絶望してやけくそになるか?

あるいは?

やって見るしかない。


目を挙げると俺はミグルディアの石像の前に座り込み、仲間達は円陣を描いて体育座りして、俺を静かに見つめていた。

「すまない、どれくらい経った?」

「15分と言うところね。いつもよりは短いわ」

とオコが言う。

主に相手はスミティだが、俺は時々こんな瞑想状態になる事があるので、みんな慣れたものだった。


「で、なんの話があるの?」

ステルが訊く。

こういう長い瞑想は、俺が誰かに相談している時で、その後必ず重要な話をする事を、ステルは知っている。


「ご飯食べてからにしよう。マチアス。君に話がある」


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