表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1812/1941

47-14.マーリンの退場

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


47-14.マーリンの退場


みんな迂闊にもちょっと感動した。

あの因業爺が、こんなにも娘思いの老人だと言う事に。


「善き哉善き哉」

マーリンはどこかのオクサレ様の様に微笑み、帰り支度を始める。

「先生、先程の宿題は?」

師匠が突然思い出す。

「だから自分達で答えを見つけよ」

宿題とは

「なぜマーリンはミグルディアを見殺しにしたのか?」

であり、それは多分マチアスが完全に魔女の勢力と縁を切るための、最後のピースだろうと思う。


マーリンにミグルディアとの結婚を許して貰えたのは収穫だったが、それはマーリンとマチアスが義親子になったという事ではない。

言うなれば

「勝手にしろ!(ドアをバタン)」

であり、そこには

「あらあら…お父さんたら照れちゃって」

と最強のフォローをする義母は存在しない。


「あらあら、おじいちゃんたらグレちゃって」

とステルに言われるのがオチである。

マチアスももう、マーリンがミグルディアを死ぬように仕向けた。とは思っていない。

だがスッキリしないのである。

破滅の魔女と手を組み、世界に復讐しようとまで思った、その振り上げた拳が

「下そうにもおろせない…。(久々の池波正太郎調)」

のである。


『お義父様、私たちはこれからどうしたらいいのでしょうか?』

ミグルディアは独り現実的に、将来を心配する。

いかに恋に狂った乙女でも、マチアスに比べれば女性は現実的(リアル)だ。

マチアスが魔女側から離脱しても、まずミグルディアを全力で守るための、身分の保証、経済力をどうするのか?


マチアス・ナビルが全バクロン、下手すると全レムリアのアイドルスター的存在だっただけに「彼が暗黒側(ダークサイド)の黒魔法使いに墜ちてしまった」

と言う魔法省の発表には衝撃が走った。


この出来上がってしまった風評を覆すにはベンガニーの手を借りるしかない。

もちろんこの話にベンガニーは乗ってくるだろうが、彼女が現在進行中の二人の物語をベンガニーロマンスに仕上げ、出版されるまで、3年はかかるだろう。

その間、世間の冷たい目の中で、二人が現世のレムリアで暮らすのは非常に難しい。


神界であれば例の

「神界タイムス」

がスクープしてくれるだろうから幾分マシだが、それでも大歓迎。と言う訳にはいかないだろう。


そして生活の確保である。

マチアスが魔法使いとして生計を立てるのは、当分無理だろう。

というか永遠に諦めた方がいいかもしれない。

黒魔法使いという存在はそれほど恐れられているので、いくら名誉回復されても、彼に仕事を依頼する人はいないだろう。

勘違いして悪の世界から用心棒的なお仕事が来るのも困る。


ミグルディアの名付けは商売にできるものではないし、魔力の譲渡も言うなれば命懸けの大量輸血みたいなもので、とてもUSB電源みたいに、気楽に他者に供給できるものではない。

栄養をとって休養して、時間が経てば復旧するのだが、ドラクエの宿屋の様に一晩寝ればMPが満タン!とはいかないのだ。


当然義父に頼りたいのだが、この因業爺の返答は実にあっさりしたものだった。

「ウラナよ、二人の事はよろしく頼むぞ」

いや、それはやりますけどさ。

マーリンはつむじ風の様に去っていく。

「さらばじゃ〜」

何もかもほったらかされたままで、俺たちは呆然と取り残された。


「ふむ、はん人ののこしたメッセージは4649か。どんななぞが…」

謎探偵(ステル)の推理が始まる。


小学生の時友人から来た年賀状の裏に

「○○…(謎の数字列)–4649」

というのがあり、3学期になってから

「あれは何だったの?」

と聞いたら、謎の数字列は、その年賀状のお年玉抽選番号で、ヨロシク(当たったら半分よこせ?)だった。

ということがあった。

あの頃は1月15日の成人の日に確かお年玉付き年賀状の抽選があり、翌日朝刊の当選番号を楽しみにしていたものだ。

せいぜい切手シートだったが。


「とりあえず二人の石化を解くか?」

と俺がいうと

『ちょっと待って欲しい。僕の心の揺らぎがなくなるまで』

という申し出がマチアスからあった。


つまり

「なぜマーリンはミグルディアを見殺しにしたのか?」

の納得行く答えが得られない限り、心に空いた穴にうっかり

「魔が刺す」可能性がないとは言えない。というのだ。

「ここは反転地だ、魔物はいないよ」

と言ったのだが、どうも魔女の呪いはタチが悪いらしい。

やはり絶対に魔女の手が伸びない様に、オコに神聖魔法をかけて貰った方がいいのだろうか?


「ウラナくん、マーリンの宿題、もう答えわかってるんでしょ?」

社長が困った事を訊いてくる。

まだ解らないからだろうって?

いや本当に言っていいものか?

ちょっと迷ってしまうのだ。


『やるっきゃないですよ』


最初スミティかと思った。

だが、ここはスサ大神のホームであり、余り念話交感をするのはマズイかもしれないという事で、スミティとのコンタクトは避けようとしていたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ