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5-21.帰路帰路と

転生したら転生してないの俺だけだった

〜レムリア大陸放浪記〜


5-21.帰路帰路と


「一つお願いがあるのですが」

司祭はちょっと困った様な顔をして俺に話しかけた。馬車を止め昼食を取った後、しばしの休憩をしていた時の事だった。

「なんでしょうか?」

あと5日程で妖狐の里に到着だ。きちんと整備されたオアシスに宿泊するので、特に困る事は無いのだが…。


「私個人としては、今回の旅に大変満足しております。マルブの聖狐天教会の様子を視察出来、里に戻ったら早速教会堂を建設しようと思います。礼拝のやり方も大変参考になりました。何より聖狐天様にお会い出来たのは、一生忘れられない奇跡の体験でした。しかし…」

しかし?後の7人の事か?

「直接聖狐天様に労いの言葉を頂いたのですが、あの者達にとっては、里に帰ってからが針の莚だと」

なるほどな。色々道中の話を里で聞かれるだろう。そして

「で、お前さん達は何をしてたんだい?」

と聞かれたら、外交使節が交渉するのを、街の外で待っていた。としか言えない。道中の警護だって全く無用だった。


「それで願いと言うのは?」

「これから立ち寄るオアシスで、住民が何か困っている問題があれば、力になりたい。と言うのです」

世直しか。でもそれはチャガマン国への内政干渉になるんだよな。個人的なウラナの旅行なら、いくらでも水戸黄門やってやるけど、公式な使節団だからなあ…。

「ですよねえ〜。御供は里の衆もオマケみたいに思ってるのでいいのですけど、残りの6人は、結構期待を背負って送り出されたので…。落ち込んでるんです」

「ちょっと考えてみるよ」

「ありがとうございます」


俺たちだって好きで問題に首を突っ込んで来た訳ではない。暴力で解決しなければならない場面も無かったしな。でもそう言う危険性は充分いつもあったし、敵が襲って来てもうちの女性陣はまず負けない。一万人位までの軍隊なら勝つんじゃないかな?マジで。あと今回の往路なんかは、多分パーサが先に危機を回避していたんじゃないかと思う。護衛も数人だし、本当は狙われてたんじゃないかな?

「まあ楽な仕事だったに。幾つかある山賊の巣は抑えてたけど、手を出されんかったなあ」

使節団と言っても村立みたいな規模だから、貧乏と思われたのかなあ。


俺は事情を話した。

「判った。要は悪もんがわらわら寄って来ればいいんでしょう?」

「出来るか?」

「信者のチャガム太守に、銀貨1万枚の喜捨を受けたらしいちゅう噂を流して来るわ」

この辺の情報戦はナンバーズのお家芸だ。

ナンバーズは、嘘は言えないのだが

「偽りの情報を流す」

と言う行為は作戦なので問題ないらしい。

なんだかなあ…。

「それにしてもが。でゃーじょうぶなんけ?あの人ら弱いに」

「そうなのか?」

「まあその辺のチンピラには負けせんでしょう?けど山賊はなあ…」

「こっそり助けるとか」

「メグルさやコンコンさの術の出番だろなあ」

なるほど、すぐコンコンにも相談だ。


聖狐天が五カ条を出した以上、そんな大枚の寄進など受けるはずも無いのだが、世間はそうは思うまい。里に大きな神殿を立てる費用とかな。

案の定次のオアシスで、チンピラに絡まれた。飛び出しそうになるオコを止めて様子を見た。男達は結構怪我をしながらもチンピラを叩きのめし、番屋に連れて行った。

「これ使わない程度の怪我で良かった」

シャミラムから預かった青い回復薬(ヒーラーポーション)をしまいながら、回復魔術(ホイミ)を打ちまくった俺はホッと一息ついた。待機していたコンコン(木の葉隠れで、敵をすっ転ばせる役)も、出番が無かった。


「やったぜ!」

男達の顔は明るい。例の鉢金を付けて居るので、頭へのダメージは皆無だし、攻撃を回避する(ラック)も向上しているので、腕を斬り飛ばされるはずが、ちょっと皮膚が切れる程度で済んだりしている。しかし

「それにしても弱いなあ…」

一番使えるのは実は御供だった。左手に父から貰った偃月刀。右手にオコから借りたマキリ(狩猟ナイフ)を持って果敢に飛び込んで行く。背が小さいのも有利で、主に足を狙って相手を戦闘不能にしている。


俺とコンコンが大活躍する機会はすぐ来た。オアシスを出た所で50人程の山賊に囲まれたのだ。パーサの扇動大成功だな。

「おとなしくチャガムに貰ったお宝を置いて行け」

50人相手だと流石に死んじゃうので、こっそり風魔法でザコNo.30〜50位を吹き飛ばした。後はコンコンと二人で敵を転ばせまくった。結局御供が20人位倒したみたいだ。後の10人の極めて不運な敵を里勢は徐々に圧倒し、遂に勝利した。男達は抱き合って喜んでいるが、2人程シャミラム製薬のお世話になる者が出た。このポーションは斬り飛ばされた手足でも繋がってしまうのが凄い(もっと上級のだと生えて来るらしい)。


それ以来もうオアシスでチンピラに絡まれたり、盗賊に襲われたりする事は無かったが、最後の夜に大変なお客さんが来た。

「お前アヌビス姿になってけしかけたのか?」

「あしじゃにゃあよ。あいつら銀貨なんか要らせんし」

平原狼(ステッペンウルフ)だ。前にメルが

「可愛くない」

と言う理由で殲滅していた奴だ。人間を襲う事は滅多に無いのだが、飢えたりすると襲って来るのだ。

「犬だろあれ。楽勝だぜ」

と意気盛んな男達だったが、獣相手は分が悪かった。スピードが違い過ぎる。一人に5頭位で襲って来る狼に圧倒されて、必死で逃げ帰って来た。

「獣に対してはオコに任せておけ」


男達はいつも御飯の用意をしてくれるおばさん(ごめん)が弓の名手だとは知らなかった。

「100頭くらいか。できるだけ沢山助けてやりたいな」

オルコンの弓を組み立てたオコは呟いて、5本の矢を同時に射る。矢はそれぞれ違う方向に飛んで行き、斥候役の狼を倒す。

これで群れは簡単に動けなくなった。

「これで終われ!」

7本の矢がボスと側近を倒す。

「あれ?逃げないなあ」

「あのボス、結構年寄りやったわ。世代交代の若いボス候補が指揮を受け継いでるんやろ」

その若旦那がどこにいるか探してるうちに、4、5頭の狼が飛び込んで来た。


オコが蹴り殺す。

コンコンが一瞬で永遠に眠らせる(マヒャド?)。

パーサがごく自然に首を折る。

ラン子が一瞬だけ翼獅子になり嚙み殺す。

俺が風魔法で吹き飛ばす。

流石に残りの狼は敗走した。


「やった〜」

が聞こえないので振り向くと、男達が正座している。

「俺たち、調子に乗ってました。皆さん滅茶苦茶強いじゃないですか。山賊なんか瞬殺だったろうに、俺達に花を持たせてくれたんですね」

「いやあれは間違いなく君達の手柄だよ」

「君達、筋が良いよ。訓練詰めば、きっともっと強くなる」

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