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47-5.石化の謎

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


47-5.石化の謎


ちょっと勘違いがあった様だ。

直近で石化魔法と言えば、ポエミ人のエリッサが生まれてすぐ石化されて小舟で漂流し、ヴェスパ火山近在の漁村で救出された話。

ポエミ人の石化魔法は時限魔法だったので、エリッサは石化が解けて村外れで育ち、俺たちに出会った。

今は記録の神殿で見習いシェフとして働いている。


ポエミ人は古代民族だが、先祖は魔界からやって来た有尾人だった。

混血が進んだので尾のないポエミ人がほとんどだが、たまたま隣国のナイラス(今とは別の王朝)に嫁いだポエミの王女が尾のある先祖返りの子を産み、ポエミ人はナイラスから迫害を受け、西内海の漆黒大陸北海岸に移住する。

その後ポエミ人は拠点をほとんど対岸のヴェスパに移していたので、ヴェスパ火山大噴火でほぼ全滅した。

その生き残りがエリッサだった。


バクロン魔法大学図書館には世界各地から集めた古代魔法の魔導書が所蔵されており

「当然古代ポエミ人の石化魔法もマチアスは見つける事が出来たろう」

と言う思い込みで、マチアスが石化魔法をマスターして、今回ちょうど浮遊神界に入ろうとしたか或いは出て来た所で、俺が天空城をスペシャルマジックポーチに入れたので、生命の危険を感じたマチアスが自分とミグルディアに石化魔法を掛けたのだろう。

と推測したのだ。


だがどうやら石化魔法を使ったのはミグルディアの方らしい。

ミグルディアは伝説の英雄サンダル大王と、アトランティスの貴族の娘の間に生まれ、出生の秘密を秘匿されたまま母親と共に貴族の別邸でひっそりと育った。

サンダル大王は英雄色をなんとやらで、各地に

「うちはサンダル大王末裔で」

と言う一族がいるが、大半は嘘っぱちらしい。


だがこの貴族の娘との恋愛は本物で、娘は親に承諾されぬままにミグルディアを生んだ。

この頃サンダル大王はアトランティス征服に動いており、それはアトランティス大陸が徐々に水没して行く中

「住民を退去させたい」

という考えだったのだが、反対派のアトランティス貴族達は

「デマによってアトランティスを無血占領するための大王の卑劣な陰謀」

と言い張って、事態はどんどん悪化していった。


ミグルディアの父は反対派の急先鋒なので、まさか娘とサンダル大王の結婚を許すはずもなく、しかし

「大王の子を握っていれば将来大王の弱みを握る事が出来るかも知れない」

と言う下衆な思惑で、シングマザーのまま娘を別邸に閉じ込めたのだった。


ところがミグルディアが幼い時、突如別邸の庭に現れたゴーゴンが、ミグルディアを石化させてしまう。

アトランティス水没後、娘が生まれた事実を初めて知ったサンダル大王は、親友のマーリンにミグルディアの保護を依頼し、マーリンは石像を見つけ出して石化解除の実験を行ったが、ゴーゴンによる石化はその個体の血が無ければ解く事が出来ないため、千年以上苦心した。


結局アトランティス島嶼にマーリンは別荘を構え、海底を探索した結果、遂にゼウスの盾に取り付けられていたゴーゴンの一個体、メドゥーサの首を入手し、僅かに残った血液から汎用人工ゴーゴン血液の生成に成功し、ミグルディアは千年ぶりに幼女の姿に戻った。


「ミグルディアさん、石化魔法使えるの?」

オコがストレートに訊く。

『魔法じゃないですよ。ポーションです』

それは水薬(ポーション)と言うより、毒薬じゃ…。

「へえ、アブナイ物を持ってるのね」

義父(ちち)が、"何かの役に立つだろうから、持っていなさい"と』

ああそうか。


マーリンの所にはゴーゴンの人工血液があるので、逆の石化液も開発していたのだろう。

ミグルディアは大学を中退した後、隠者として暮らしているマーリンの住処の近くの街で市井魔法使いとして暮らしていた。

慎重に身元を隠していたので、この地味な女魔法使いが、新進の天才魔法使いである事は知られて居なかった。


彼女が街で知りあった女の夫の精神的疾患を精神操作魔法で治療した時、魔法省の職員として潜入していたマーリンの式神、ウォズとジョブズ(仮名)の元に

「天才魔法使いミグルディアの禁忌魔法使用疑惑」

について通報があったのは、だからかなりおかしい。


そんな事を知っているのは、魔法大学内部の事に通じている者しか居ない。

つまりミグルディアを恨んでいるあのお粗末貴族息子の実家(本人は既に処刑されている)以外考えられない。

この一家も程なくこの世から姿を消しているが(怖)。


マーリンがミグルディアに石化液(ポーション)を持たせたのは、現在の事態を予測しての事だろうか?

「ミギーちゃん、そろそろナマミでお話ししたいな」

ステルがタメ口をきく。

「私も久しぶりにステルちゃんをモフモフしたいわ。でも」

「でも?」

「私、解除液持ってないもの」


確かに仮に持っていたとしても、どうやって使うんだ?

魔法ならともかく、化学製品である解除液の瓶は石化する時に一緒に石になるだろうし、手も動かない。

「ダメじゃん」

「困ったねえ」

ミグルディアは他人事のように言う。


「わかっぱ、ステルが取りに言って来るよ」

ステルが小岩井よつば※の様な返事をする。


※漫画と言うより、もはや芸術作品の

「よつばと(作:あずまきよひこ)」

の主人公の幼女。

世界中にカルトなファンのいるこの作品は、月刊コミック電撃大王に連載しているが、休載の多い事でも有名で、先日(2025年2月26日)に4年ぶりの16巻が出た。


あずまきよひこ先生と言えば、これも日常系漫画・アニメの元祖と言われる

「あずまんが大王」

の作者としても有名だが、この作品の中で最も読者の支持が高かった登場人物が、よつばと16巻で衝撃の再登場をした。筆者はベッドで読んでいてしばらく起き上がれなかった。もちろん幸福感で、である(※終わり)。


「ステル、どこへ行くの?」

「きまっとるがね。いんごージジイのとこだぎゃあ」

ステルがパーサの真似で答えた。


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