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46-16.桜の名所

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


46-16.桜の名所


「パーサ、ナナちゃんと連絡つく?」

「出来るけどが、なんだの?」

「いや、宇宙空間から蓬莱を見て、桜前線が何処まで北上してるかな?と思ってさ」

「聞いてみるで、ちょと待ってちょ」

パーサは天を見上げ

「あああそこにナナちゃんちが見えるでよ」

七娘の住まいはレムリア星を周回する人工衛星なのだった。

流石に星の裏側に衛星があると、念話も届きにくいらしい。


実は俺たちが大気圏を突破して七娘の家や蓬莱神界を訪れるまでは、そんな苦労は無かったと言う。

普通のレムリア人は未だに天動説で、平板な大地の上に天蓋としての空があり、太陽や月や星々が巡っている。と信じていたので、七娘の家もその一つで、地上のパーサとの間に障害物はなかったのだ。


だが宇宙に出たために地動説をとらざるを得なくなり、レムリアを周回する七娘の家が星の裏側に入る事もある。

と言う認識を持ったとたん、念話の届きにくい時間が出来た。

と言うのだ。

これは神々や神界だけでなく、世界全体が人々の観念によって変わる。

と言うレムリア世界の特質と言える。


「まだ東国までは行っとらんとよ。明後日あたり蓬莱山の裾野で満開だにゃあか?言うとったわ」

姉との念話を終了してパーサが告げる。

上の四姉妹と異なり、五娘〜八娘の歳下の姉妹は中々顔を会わす事が難しいが、仲は悪くない。


ペンジクに残っているのは五娘だけだったが、主人のキャーリーがダガムリアルに嫁ぎ、主に蓬莱で暮らしているので、五娘はシバヤンから独自の任務を与えられて各地を飛び回っている。

いわば四娘に近い仕事で、実際四娘と連携して動く事も多いらしい。

彼女の持ち味は、二足歩行としては世界最速の脚で、メッセンジャーとしても活躍している。


六娘はナンバーズ唯一の人間と同じ味覚と消化器官を持つ自動式人形(オートマタ)で、夭折した天才的な料理人の臓器を譲り受けているので料理に秀でている。

料理の質の高さにおいては神々の間で名高い

「記録の神殿」

の神官に弟子入りが叶い、日々研鑽しているが、シバヤンが修行の条件として、自分たちの食事をケータリングする事を義務付けたので、未だに実家にウーバーしている。

そろそろ解放してやって欲しい気もする。

六娘は大好きな料理人の道を邁進しつつ、師匠である神官に恋心を抱いており、神官の方も吝かではない様だ。


そして七娘は宇宙の彼方。

彼女は巨大なモビルスーツ型宇宙船(その姿は前世の名古屋駅前で確認出来る)に入って、シバヤンの神界との間を行き来出来るが、常に地上を監視し記録する

「サンダーバード」

のトレーシー兄弟の次男、ジョン・トレーシーの役回りなので、中々休暇がない。


そして末妹の双子八娘、パー子とパーサだが、パー子はバクロン第五王子にして短期間のバクロン王(末子相続の掟に従い国王になってすぐ退位し、長兄の第一王子フサイに譲位した)アルディンと恋に落ち、強靭で不死なナンバーズの体を捨てて寿命のある人間のパナとなり、アルディンと共に旅に出た。

もうナンバーズ念話ネットも使えないので、パーサとも長らく連絡出来ていないが、今でもパーサはパナを想っている。


ナンバーズの歳下四姉妹は、中々会う事も難しく、特にパーサは俺の配下になった時、俺の人代と言う立場からナンバーズ長女の一娘のデータベースから切り離された。

これは大東神界やバクロン神界、ナイラス神界への配慮で、人代と言う人類を代表して神々と交渉する立場の配下に、ズブズブのペンジク神界がいてはまずい。と言う政治的判断だ。


同様な立場は聖狐天の配下として入った二娘にもある。

新しい神界勢力としての聖狐天には二娘以外にも

「天帝神界に関わりの深い(※天帝神界の高官である神仙達は誰も派遣を了承しなかったため)、ジョウザ妖狐の鼎尾銀狐(サンコン)

「古代スメルのヌナムニエル神に仕えた北風の巫女シャミラム」

が仕えている。


彼女達は、それぞれのルーツとの関係性をあえて絶たず、いわば

「二重スパイ」

として聖狐天の四天王になっている。

危ない事極まりないが、現状メルファを含む四天王は聖狐天に絶対の忠誠を誓っており、それぞれのルーツ神界へのパイプ役として重要な役割を果たしている。


忙しい中でパーサは五娘、六娘、七娘と独自の念話チャットを構成しており、絆は深く協力し合っているので、七娘とも情報共有が可能なのだ。


「と、いう事は明後日あたり蓬莱山近くで桜祭りがあるのかな?」

夏祭り(お盆的なもの)や秋祭り(収穫祭)は寺社が開催するもので、台風でも来ない限り決まった日に開催される。

前世でのお祭りは利便性を考え、大体休日とか週末に開催されるが、まれに頑固に教祖とかに縁のある当日(縁日)に開催される場合があり、いきなり週末半ばの水曜日とかに凄い人出になって、近辺の勤め人が面喰らう場合があった。


蓬莱でも人が集まり易い日時を寺社が選ぶが、桜祭りに関しては人間が日時を設定する事が出来ない。

「桜が満開になったぞ!」

となって初めて、人々はそれっ!と集まり、自然に祭りが始まる。

出店を出す業者は数日前から待機するのだ。


蓬莱山は前世の富士山に似た休火山だから、噴出した溶岩が広い裾野を作り、南側は火山灰土壌の為、水田耕作には適さず畑地が広がり、北側には樹海が広がる。


富士山と同じく蓬莱山も信仰の対象で、守護神は木花之佐久夜毘売。

天孫族の瓊瓊杵(ニニギ)命が国津神の有力者、大山津見神の娘を娶ろうとしたが、姉の石長比売を醜女として返し、美しい妹の木花之佐久夜毘売だけを妻とした。

まあこれは

「石長比売と結婚していれば不死を与えられたものを」

と言う

「日見呼命の子孫であるのに天孫族がなぜ不死でないのか?」

と言う理由の説話なのだが、本人は姉の方が今風の彫りの深い美人である事にコンプレックスを持っている。


この木花之佐久夜毘売が蓬莱山の護り神となり、登山口に神社があるのだが、ここの桜が有名なのだ。

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