45-30.アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
45-30.アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
そう言うところだよ。
と言うセンテンスが俺の晩年に流行したな。
ノヅリ師匠は非常に冷静で、合理的な思考をする人なのだが、こと人情と言う事になると、ステル曰く
「スミティちゃんなみにヤバい」
と言うレベルだ。
失われた下等生物の持つ
「感情」
なるものを研究に来た宇宙生命体のエージェント並みの評価。と言う事だ。
魔法研究に集中すると、食事もしなくなる。
奥さんのクリン社長が夜食を作ったりするが、朝起きると手付かずで置いてあったりする。
「少しはクリンさんの気持ち、考えなさいよ」
とオコなどは憤慨するが、社長も忙しい人なので、似た者夫婦な所はある。
だが八咫くんが生まれ、師匠も大分変わって来た。
この時の師匠の思考回路は誰も理解出来ないレベルだった。
・連絡をすれば安心して恋人はマルブに留まる。
・連絡をしなければ恋人は心配して、きっと来てくれる。
だから来て欲しいなら、音信普通が正しい解。と言うのは
「そりゃないぜベイビー」
と誰でも思うだろう(誰だよお前)。
「初恋だったのよ」
「ごめん、本当にごめん」
「まあ、そう言うのがいかにも師匠らしいけどな」
俺が余計な取りなしをしてしまった。
「あんたは黙ってなさい!」
オコの一括。
「はい」
なんとか延焼は食い止めた。
「誓って」
「誓うよ。二度と自分勝手な行動パターンは選ばない」
「具体的に」
「どうやって?」
「私ノヅリは」
「私ノヅリは(以下師匠が社長の言葉を繰り返す、"遠い世界に"パターン)」
「コリナンクリンを、病める健やかなる時も、常に愛し、守り、慈しみ、支え合う事を誓います」
前世のキリスト教式の結婚式と同じだ。
俺は守れなかったが…。
「これで私はもう悪夢は見ないわ」
社長はにっこり笑って師匠を抱き起こす。
「でも忘れた訳やないで」
わかってるって、婆さん。
「で、残るはパーサとメグルなんだけど」
オコが話を戻す。
パーサが見る悪夢は、多分
「合理キー(仮名)」
と呼んでいたプロトタイプ天使兵に首を捩じ切られた時の事だろうとは思うのだが
「そもそもパーサちゃんってゆめ見るの?」
「夢、言うかさいが、寝る事がそもそもにゃあでよ」
そうなのだ。
シバヤン作のナンバーズ、自動式侍女人形は、高度なAI脳を持つアンドロイドだから、睡眠は必要ない。
スターウォーズ第1作でC3POが
「休ませていただいてよろしいでしょうか?」
と言って、自ら電源を切るシーンがあったが、パーサの場合は俺たちが寝ている時間帯には半径5km位の範囲を警戒パトロールするのが日課で、基本眠らない。
「夢言うか、フィードバックはするけどがよ」
つまり、彼女自身がその日起こった映像や思考記憶を整理してアーカイブに書き込む。以前一娘のネットワークに繋がっていた時代には、それをクラウドにアップロードして共有する。
「今でも、母さん(沖縄の美味しい=マーサンと同じイントネーション)とか五娘ちゃんとは共有するけどな」
「四娘とは?」
「よ、四娘様からは指令を頂くだけです」
相変わらず四娘の話題になると緊張して標準語※になるパーサだった。
※最近標準語を共通語と字幕で言い換えるマスコミが多いが、あれは何故なんだろう?
標準と言うと
「日本標準時(東経135度、明石天文台)」
みたいに
「愚民ども、余に合わせるのだ」
みたいな強制感があって嫌、と言う様なエモーショナルな理由なのか?
でも共通ならいいの?
「色々あるけど比較が難しいから合わせよ?」
と言う標準より
「これを全世界で使うのが常識なのだ」
と言う共通の方が、よけしか(名古屋弁)強制感を感じるのは俺だけ?(※終わり)
つまりパーサは安全な環境でメンテナンスモードに入り、フィードバックを行ってデータ整理をしている。
「ごめん、ちょとアシに話いかけんでちょ」
と言って、皆の食事中(パーサは味見程度で食べない)に1〜2分黙る事があるが、あれがそうらしい。
「つまり、クビチョンパのゆめは見ないと?」
ステルがPTAで問題にされたドリフ版西遊記の販促人形(胴をぐっと押すと首がポンと飛ぶ)みたいな事を言う。
「あれは反省点が多い案件だったでさいが、何度でも反芻してシミュレーションしたでよ。同じミスはもうせんて」
パーサは後に天使兵との戦闘に於いてその成果を見せてくれたが、今は教えてあげない。
「これで、あの屋敷にはパーサだけが入って無事な事が分かるな」
「あら私ももう大丈夫」
「ハニーお願いだから僕のそばに居て?」
師匠が悪夢の再発を恐れて慌てて止める。
先ほどの社長の豹変が余程堪えたのだろう。
師匠にとって、新しい悪夢の誕生だった。
「それで、メグルはどうなのさ」
「どうなのよのさ」
オコのツッコミにステルがブラックジャックのピノコの様に被せる。
「俺は…、悪夢が多すぎてどれが出てくるか分からない。心ない一言で永遠に恋人や友を失ったり…。夜中に頭を抱えて『ああ、俺は死んだ方がマシだ』とか叫ぶ事ばかりで」
※これは私小説ではないので、これ以上は勘弁してください。生きててすみません。
45部の主な登場人物
◯旅の仲間(ビッグセブン+α)
メグル(ウラナ)…主人公。元ボン76世(未)。旅行家志望。生真面目なまもなく18歳(僕)と結構浮気症な66歳(俺)が同居している。"国民的英雄"に加え、"改革者"の称号を獲得。更にマーリンから"人類の代表(略して人代)"を押し付けられる。
聖狐天の父となる。朱雀国ガルーダ元帥となる。
オコ…メグルの妻の元妖狐。メグルとの子作りを夢見ている。弓の達人。弱者の味方で直情的。聖狐天の母となる。大聖母。
コンコン…先先代妖狐。通常は子狐に憑依しているが、最近は仙桃の力で元の姿も長くとれる。
ステル(ラン子)…鳥ジャガー神。ラン(獅子)とヘレン(白虎)の娘。メグルをあるじと慕う優しい少女。第6章で進化を遂げ成体、幼体(子猫)以外に猫耳娘の形態をとる。第26部でさらなる進化を遂げ、龍神ケツァルコアトルにも化身。
パーサ…元八娘2号。シバヤンから譲渡され、メグルの侍女となった名古屋弁美少女。諜報活動に大活躍。自称第二夫人。大型肉食獣アヌビスと美しい牝馬に変身出来る。
今後は小説家になるらしい。
ノヅリ…バクロン第3王子。魔法省長官を辞し魔法修行の旅に出る。メグルの師匠。コリナンクリンの夫。
コリナンクリン…ワタリガラスの鳥神。運送業ワタリガラス商会の女社長。ノヅリの妻。
"僕"…"俺"の中に共存する肉体の本来の持ち主。スミティと共にウラナに様々な助言をする。
八咫…ノヅリ師匠とコリナンクリン社長の息子。寄宿舎学校に通っている。
トトム…師匠と社長が駆る飛竜。知性が芽生えつつある。
○聖狐天神界
聖狐天…オコを崇める人々の信仰が造り出した神をオコの分魂とメグルの造った依代で具現化した新しい神。ウラナ夫妻の娘。
シャミラム…聖狐天四天王の一人。元北風の巫女。
サンコン…聖狐天四天王の一人。オコの先々先代の鼎尾妖狐。
二娘…聖狐天四天王の一人。ナンバーズ一の武人。
メルファ…聖狐天四天王の一人。元暴風の魔女メル=ハバ。
ドルマ…ゴルモア大草原の元霊犬。聖狐天を守護する魔喰い。よつばを産む。
○ナンバーズ
一娘…ナンバーズの統括。シバヤンの宮宰。
五〜七娘の母。
二娘…武人。聖狐天に仕える。八娘の母。
三娘…シバヤン宮廷の家事一般を取り仕切る。完全なお掃除をする侍女人形。
四娘…隠密活動に特化。上警で働く侍女人形。
五娘…キャーリーの親友。足が速い。
六娘…唯一人間と同じ消化器官を持つ。記録の神殿で修行中。
七娘…背が高い。宇宙での活動に特化。
八娘…パーサ。クローン分裂したもう一人の八娘のパー子は、人間のパナとなりバクロン元第5王子にして元国王アルディンの妻。
○その他の神・人
アドミン…管理者。スミティを派遣する。
スミティ…アドミンに派遣されたエージェント。メグルの脳内で、メグルの宿主意識の少年と暮らし、メグルに助言する。
マーリン…古代の魔術師。元人類の代表。因業爺。超古代の英雄神イーオンの転生。太古の名はアダムらしい。ゴンドワナでは白いフクロウを依代とする。
ベンガニー…元ジョウザの侍女。大ベストセラー作家。今回はコンサートツアーギョウザ公演のプロデュースと新しい"3メタル物語"の脚本を担当。
小孫妹…ベンガニーが飼っている金糸猴の小猿。
パピーズ…レムリアとゴンドワナを行き来出来る4人の犬人の子(ウラナ、オコ、ノヅリ、セイコのαと4匹の橇犬の仔犬(同β)。
3メタル…初代妖狐の娘白銀丸、初代妖狐の義妹の黄金丸、赤銅丸。
レナルド・ダンチビ…妖狐の里の天才発明家兼工房長。
イグルー…大氷原の族長の娘。ヤクスチランワイン貯蔵庫責任者。ベンガニー本のヤクスチラン語翻訳者を目指している。自著名"威愚瑠烏"
トマレ…大氷原の少女。
ウメダ…元チャガマン公国の王子、現在はアマランタインの夫。ハーフエルフ同士の子。
アマランタイン…千年の眠りから覚めたエルフ女王。
ハツホ…ウメダとアマランタインの息子。
○オコの家族
吐心…父。蓬莱系移民。
サリナ…母、妖狐の里一の踊り子だった。
御供…オコの弟。二娘とメルファに師事。請われて女神モリガンのタイラン軍に入隊。
リュナ…オコの上の妹。商才に長ける。
愛…オコの下妹。魔性の妹で今はローカルアイドル。
○神々
ダガムリアル…古代神の一人。滅亡したドワーフの祖先神で工芸の神。キャーリーと結婚。
シバヤン…ペンジクの有力神。破壊と創生神。
パトゥニー…シバヤンの妻。慈母の女神。
キャーリー…シバヤンとパトゥニーの娘。ダガムリアルの妻。漆黒の女神。太古の女神スバーハと習合している。
アヌビス…ナイラスのミイラ作りの神。パーサの義兄。馬鹿助。
マァト…太陽神ラーの娘、冥界審査官、冥王補佐、アヌビスの恋人。
記録の神殿の神官…本名は漆黒大陸の神オニャンコポン。
アンゴルモア大王…ゴルモア人の大草原冥界で暮らす先祖神。
モリガン…タイラン島の女神。実体はナイラスのマヤ・ティティ。マヤ・ティティはモリガンの頭の中で夫のイグナスIII世と共存している。
ターワン・ラメン…古代ナイラスの元帥で御供の守護霊。タイラン島の猿人を指揮するため御供を左腕にして復活する。
レムリア神…ついに明らかになったレムリア最高神は宇宙生命体天御中神だった。レムリア神は天御中神の作ったプログラムで、生命の創造と進化を担当。
ワダツミ大神…蓬莱の海神。ムーの主神でカナロアと呼ばれたが、本当はオケアノスと言う古代の海神。正体は宇宙生命体天御中神の組んだプログラムで、生命の環境を整える役目を負う。
朱雀王…朱雀神界の主神。メグルの主筋。
高御産巣日神…天御中主神、神産巣日神とともにレムリアを訪れた神。天御中主神の作ったプログラムか?別の宇宙生命体か?
日見呼主命…蓬莱の主神。正体は不明。
スクナヒコナ…ヒーナル。波乗りする小さな神。ワダツミの子として、ワイハ人をムー島嶼に導いた。正体はワダツミ大神の創造した上位エージェント。
伎芸天…所属神界のない芸能神。芸能事務所社長。実は醍醐如来の娘にあたる。
フォクシー御酒子…3メタルの振付を担当する世界的振付師。
三元道士…マーリンの弟子の一人でコリナンクリン社長の同級生の親友。
ドスル…名前を奪われた元古代神ロキ。放浪しながら魔女を追う。現在は軍師。
パトニカトル…現レムリア神界最古の神。酒神。ヤクスチランの主神。オオモノヌシとも言われる。
ハトホル…ナイラスの女神。マヤ・ティティの母。前世はイブ。
ハマチャーン…ペンジク神界の猿面の神。
斉天大聖…上警の上級捜査官。水簾洞の主人でハマチャーンのクローン兄弟だった。
クロノス神…運命の神。レムリア人・神々が、漠然と思う時間の神。実際には時間局を統括する四次元神。
醍醐如来…醍醐教の主神。
大日如来…醍醐教密教の主神。
不動明王…大日如来を護る五大明王の一人。だけでなく、大日如来の意を伝えるCOO役でもある。
薬師如来…醍醐神界の医療・薬学の総帥。
観世音菩薩…醍醐神界のお助けヒーロー。33の変化体を持つ。
シンダル王…エルフの祖先神。
制咜迦童子…不動明王の眷属八大童子の八男。
孔雀明王…密教守護神で、ペンジク由来の強力な女神。
西老猴、北武猴、南温猴、東徹猴…水蓮洞の四大猴。
魔光仙女…斉天大聖の娘で売れっ子漫画家。水簾洞の金糸猴。通称マコちゃん。
ディード…ポエミの神。幼名エリッサ。亡命魔神。
○敵
合理キー(仮)…パーサの首を捻じ切った謎の怪力マン。正体は天使のプロトタイプ。
ヨルムンガンド級…オケアノスが警告するラグナロクでの強敵。精神操作系の術者だと思われる。
カペラ…スミティと同等の宇宙生命体の部下。
ケイオス…アドミンと同等の宇宙生命体。
天使兵…宇宙空間でスサ大神を拘束していたフェンリル級怪力天使。生物ではない様だ。兵団単位。
怪僧…黒衣の修道僧の姿の魔女の新しい部下。天使を操る力を持つ。正体は蓬莱東国の銅居。
虚無の女神…宇宙生命体でも制御出来ない、天体を飲み込んでしまう負の存在。ブラックホール的なもの。
マチアス・ナビル…バクロン魔法省に処刑された、当時12歳の少年。しかし心理地雷で脱出し、魔女の陣営に加わる?ヨルムンガンド級と思われる。別名魔智吾主。
◯第45部の登場人物・神
オベロン…超小型魔族リリパットの団長。
ラズリ…リリパット族の娘。オコの神聖魔法を用いた治癒魔法師。




