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45-25.悪夢

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


45-25.悪夢


どんな巨大な残骸も片付ける事が出来るメルファの実力は土木業界で高く評価されて行ったが(※フリーレンとフェルンもそんなバイトをしていたな)、気の強さでも有名になり、メルファにコテンパンにやられた男達は

「触らぬ魔女に祟りなし」

とか酷い噂を振りまいた。


考えてみればこれだけの美女が一人で旅出来るほどレムリアは安全な世界ではないので、放っておけば絶対いやらしい誘いが向こうから寄って来てしまう。

ちょっと怖い女。

位でないとやっていけないのだ。


ギョウザ歌劇団も伎芸天事務所も、必ずその手の枕営業的勘違い野郎の被害を最初は受けたらしいが、一人の旅芸人などはもっと大変だと思う。


前世でも出雲阿国の歌舞伎踊りが、人形浄瑠璃の台本を使った演劇として再スタートした時、江戸幕府は

「劇団の女優が売春をしている」

と言って女性が舞台に上がる事を禁止した。

そこで女優の代わりに少年を使った

「若衆歌舞伎」

になったが、やはり売春疑惑が出る。


金持ちや権力者のファンにしたら、美しい舞台の花形と怪しい事をしてみたい。と言うけしからぬ奴らは当然いただろうし(※現在もその手の噂が尽きない。女子アナ上納とか…)、当時の役者は身分も最下層の被差別階級で、生活も決して楽ではなかったから、誘いに乗る者もいただろう。


若衆歌舞伎も禁止され、成人の男優が女役を演じる

「野郎歌舞伎」

が定着した。

結果日本が世界に誇る文化としての歌舞伎が完成した。


坂東玉三郎さんの様な私生活でも美しい役者さんもいるが、大方の女形歌舞伎役者は普段はおじさんで、それが衣装を着け化粧をすると、江戸中の女達が挙って化粧や仕草を真似た様な妖艶な美女になるのが、歌舞伎の凄い所だ。


歌舞伎ではないが旅芝居の座長である梅沢富美男さんも、素顔ではテレビで大活躍のキレ芸が面白いおじさんだが、本来は妖艶な女形で有名な方だ。

芸の力は本当に凄い。


江戸時代には女性達が男役の若い俳優に入れあげる、今で言う推し勢も現れ、江戸城大奥の重役が若い歌舞伎役者と密会して追放される

「江島生島事件」

も起こっており、もうすっかり現代と代わりがない。


降りかかるセクハラを暴力で解決して行ったメルファには友と呼べる存在もなく、宿屋の宿泊も断られ(設備・家具を壊すので)、廃墟やお化け屋敷に住んで力仕事をこなして転々と移動する。

そんな彼女はどんどん外見も気にしなくなり、心の友と言えるのは独鈷杵(残念ながらアレクサの様なインテリジェンス機能はないが)とそして…

酒だけになった。


大酒飲んで酒乱状態で色々やらかし、潤沢な稼ぎを殆ど損害賠償が食いつぶす状況で、一仕事終えるたびに

「はいはいご苦労様でした。今日は泊まらずそのまま街から出て行ってください」

みたいな危険物。

心臓病の特効薬だが、ちょっとの振動で爆発する危険極まりないニトログリセリンの様な扱いを受ける様になって行った。

だから工事が終わってもメルファを打ち上げに誘う。なんて事は決してなかった。


「それでここにいた期間は、本当に何事もなかったの?」

オコが保護司目線で聞く。

「特にお化けは出なかったですね。あ、一度」

あったんじゃん。


「酔っ払って寝ていたら、なんか胸に何か覆いかぶさって来て『まさか夜這い?』と跳ね飛ばしたら、建設途中の城が吹き飛んでいたと言う」

まあ噂の魔女を酔っ払っているうちにどうにかしよう、と言う向こう見ずな馬鹿が襲った、と言う可能性もなくはないが(一応美女だし)、

「そいつの顔が私が故郷で結婚させられそうになったおっさんだったのですよ」

と言うので、やっぱりマチアスの心理地雷にかかったのだろう。


だがそれ一回きりで、以後は何もなかったそうなので、メルファには精神操作は効きにくいのかも知れない。

「つまり今から入る館には、まだマチアスの仕掛けたトラップが山ほどあると予測出来る訳だな」

どうも街の噂や、メルファの体験からすると、この心理地雷は

「心中恐れている事が実現する」

の、いわゆる悪夢実現系らしい。


肝試しの若者達はより盛り上がる為に事前にマチアス処刑の物語を語ってから館に入ったろうし、メルファは故郷に待ち構えていた運命から逃げて来た娘だ。


J.R.R.トールキンの指輪物語と並んで二大ファンタジーと呼ばれるC.S.ルイス(二人は友人だった)の

「ナルニア国物語」

の中に、カスピアン王が旅立った七候を探して航海に出る

「朝びらき丸東の海へ」

と言う作品があるが、この中の一章に、


「難破した男を海で救助したらその男が

『すぐお逃げなさい、この船に迫っている霧に包まれると、夢が現実になってしまう』と言う。みんな『なんて素敵!』とかお気楽な事を言うとその男は『そんな夢じゃない。それぞれが見た悪夢が現実になるんだ!』と言い、みんな真顔になって必死に船を動かす」


と言う話があったが、マチアスの野郎、そう言う地雷を仕掛けているんじゃないか?

「嫌だなあ…。そんな所ミグルディアがいるはずがないよ」

「いやミグルディアへ心理地雷にはかからないんじゃないか?侵入した敵が心理地雷にやられる、安全な場所としてここを選び、ここでマチアスを待つつもりかも知れない」

「だが、もしミグルディアが心理地雷にかかっているとしたら?」


ミグルディアが見る悪夢、

学校での嫌な貴族の先輩か?いや

「恐らくゴーゴンに石にされて眠り続けるミグルディアの腕を掴んで『ふむ、食べるにはまだ痩せておるな』と言った魔女だろう」


つまりミグルディアによって実体化された破滅の魔女メハシェファにて出くわす可能性がある。

と言う事だ。


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