45-16.ミグルディアの消息
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
45-16.ミグルディアの消息
どうしたものかな?
などと悠長な事を言っている場合じゃない事は分かっているのだが、結果が怖いのでなかなかそう言う気にならないのだ。
領収書とかお知らせ系をポイポイ引き出しに放り込んいで
「さて始めるか確定申告」
ってなる時に、全部書類が揃ってるか不安で、引き出しを開ける気がしないままで2月が過ぎる。
と言う感じだ(※リアル著者)。
「そう言えばミグルディアちゃん、今どうしてるのかしら?」
オコが物語の起点のセリフを吐く。
ああ、それを言っちゃあおしめえよ。
こうして久々のミグルディアストーリーが始まる。
「おか…、二娘様はミグルディアさが聖狐天神界で子供らぁを教えてござる、とよ」
パーサは二娘の娘である事を隠さなくなって来ているが、こう言う会議の席でお母さん呼ばわりは、まだ照れがある様だ。
「子供さん、てレムリアくんとか?」
オコが聞く。
マーリンとナイラスの女神、ハトホルとの間に生まれた赤子は順調に育っている。
ハトホルは毎年違う男と恋愛し、出産と同時に死ぬ。
これはハトホルがナイラスの地母神でもあるので、一年の農業暦を暗示しているのだが、男の方は最愛の妻を失い、シングルファザーとして赤子を養育する事になる。
やっかいなのは生まれ変わったハトホルは、初めて見た男と恋に落ちてしまうので、相手が既婚者であろうが一向に気にしないところだ。
ハトホルと視線が合ってしまうと男は絶対にその魅力から逃れられないので、チラッとでもハトホルを見つけると全力で逃げねばならない。
ナイラスの神アヌビスはハトホルから逃げ、裂け谷の狼に匿われた時に地元の雌狼サラと情を通じて、狼神ウプウアウトを産む。この辺の
「ダイエットの為に散歩を始めたが、つい途中コンビニでなんか食べちゃう(※俺だよ)」
感じのユルさが、アヌビスの馬鹿助たる所以である。
ハトホルは自由奔放に毎年男を取り替え、時には男の家庭を破壊する(1年も行方不明で、ひょっこり赤子を抱いて帰ってくる夫を許す妻は少ない)悪女の代表とされるが、子供を迎えた家には地上の富がもたらされるし、ハトホルは深夜に素に戻り、我が子の夢に現れて何かと相談に乗ったりするので、ハトホルの子らはターラン島の女神モリガン(人名はマヤ・ティティ)の様に半端なくグレていても、ちゃんと更生して女神様になったりする。
マーリンがハトホルと一年の結婚生活を迎えたのは、偶然の事故ではないだろう。
マーリンの前世はアダムで、ハトホルはおそらくイブそのものだから。
レムリア人の精神構造は
「アダム因子、イブ因子、リリス因子」
の三因子のバランスで構成されている。
と信じられている。
アダム因子は外向きの向上心、攻撃、変革など。
イブ因子は家庭的、母性、守備、保守。
リリス因子は反抗、疑惑、不信、自己中などを代表する。
とされる。
性別に関係なくそれらの因子の配合で心理が構成され、前世の前時代的表現だと
「男らしい、女らしい」
と表現されるところレムリアだと
「わあリリス味60、アダム味30の困った君主だ!」
とか3因子で語るらしい(俺の場合は翻訳機能が勝手に意訳する)。
なのでマーリンとハトホルの子は、ある意味レムリアの3因子のうち2因子
「のみを持って生まれる」
子であり、リリス因子を全く持たない為
「対 破滅の魔女メハシェファ(リリスの化身と思われる)」
の切り札、と思われる。
マーリンは、その為にあえてハトホルに近づいた。
と言う疑惑がある。新生ハトホルの誕生地に待ち伏せし、
毎年殆ど生まれてすぐ天を仰ぐので、太陽神ラーと恋に落ちる確率80%以上と言われるハトホルの気を引いて、マーリンはその一万年以上に及ぶ生涯&霊魂時代で初めて結婚して子を得たのだろう。
狡猾で冷酷な因業爺のマーリンは、対ラグナロクの最終兵器として、この子を得ようとしたのかも知れない。
だが生まれて来た赤子は一向に形態が定まらず、魚からヒトへの進化過程を繰り返す赤子をマーリンは献身的に育児するが、ついに
「名付けの聖女ミグルディア」
がこの赤子を
「レムリア」
と名付けた事で運命が定まり、男児の姿をとっている。
俺はこの名付けでこの子が単なる
「最終兵器赤ちゃん」
から、レムリア全体の運命を変える存在になったのではないか?
と思っている。
「名付け親やさかい、教育してはるのやろか?」
とコンコン。
彼女も聖狐天四天王の一人
「鼎尾銀狐 サンコン」
の義娘であるので(オコにとっては義曽祖母)、聖狐天神界界隈の情報には詳しいのだ。
「いんや、まだ赤さはちさいでよ、教えるどこだにゃあみたいなんだて」
「じゃあ誰を?」
「パピーズに魔法を教えてござるらしいて」
パピーズの師と言えば、フィジカル面は3メタルの振り付け担当の
「フォクシー神酒子」
先生が受け持ち、弓矢はイグルー、剣技は時々聖狐天四天王のメルファが見てやっていたが、魔法は最初から一貫してマーリンが教えていたはずだ。
子供たちはマーリンを
「せんせー」
と呼び、マーリンh子供たちを
「ガキども」
と呼んで師弟愛が結ばれていた。
だがマーリンはハトホルとの結婚生活で一年不在であり、その後は赤子の世話でイブ因子全開の生活だったので、聖狐天神界に寓居しているミグルディアが、魔法教師をかってでたのだろう。




