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45-3.卵の結末

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


45-3.卵の結末


ウナギと言えば、俺がこっちに来る10年程前から、鰻の値段は年々高くなって行った。

これは稚魚であるシラスウナギの乱獲で、生産量が激減したからだと言われる。


ウナギの成魚は川で暮らしているが、産卵期になると海に出て、シラスウナギが生まれるのはフィリピンの沖合付近と言われる。

そして孵化した稚魚は日本海流に乗って日本に向かい、川に入ると言う大旅行をする魚だ。

親である天然ウナギ自体も減少しているが、シラスウナギを取りすぎたため価格が高騰し、それが養殖ウナギの値段を押し上げている。


毎年

「ウナギの孵化に成功!」

「孵化した卵をシラスウナギから成魚に生育成功!」

などウナギの完全養殖に向けたニュースが飛び交っていたが、今頃は完全養殖ウナギが食卓に並んでいるのだろうか?(※完全養殖には成功したが、まだ歩留まりは良くなく、シラスウナギの生育には24時間監視の温度・水質管理が必要なので、完全養殖ウナギが市場に出るまでには至っていない。出ても一般の養殖ウナギの数倍の価格になると言う)


「大体の個数はわかる?」

『200〜300といったところでしょうか?』

多いな。

それが全部大型魔物に育ったら、ちょっと厄介だ。


『このまま焼却した方がいいと思いますが』

スミティの提案は現実的だ。

オコの性格から言ってこう言う時は

「殺すのは可哀想」

とか言いそう。

と思うかも知れないが、オコは狩人だ。

しかも今回は自分の神聖魔法のせいで魔物を復活させたとなれば、責任を感じる性格でもある。


「スミティ?」

『はい』

「君は神聖魔法を浴びて、邪悪な魔物が生きて居られると思うか?」

『私はまだ魔法の本質を完全には理解しておりませんが、魔法とはレムリアローカルの共通認識による事象への干渉。と一応定義しています』


「つまり『そう言う事にしておく』という事だね?」

『そうですね。いわば貨幣などと同義のものです』

確かに貨幣一枚で何が買えるか?は社会の中で共通認識として決められ、需要と供給によって物価が高くなったとか安くなったとか言っているが、一定量の貴金属にどれほどの価値があるかは、国により異なる。


幕末の数年間で横浜に来た西洋人によって、大量の金が国外に流出した。

これは鎖国により金と銀の交換比価が違っており、日本は欧米に比べ銀の価値が高かったので、西洋人は両替屋に普通に持ち込んだ銀を金に両替するだけで、莫大な利益が得られたのだ。


幕府はこの事に気付き、金銀比価を欧米並みに改定したが時すでに遅く、江戸時代には一万円札を使う感覚で一分金を庶民が使っていた程の金の所蔵量はかなり減少してしまい、明治政府は苦しい財政でスタートせざるを得なかった。


魔法の場合は魔法使い以外の人間が

「俺は魔法なんか認めん!」

とか言っても通ぜず、魔法は魔法使い同士の共通認識(コンセンサス)で成り立っているので、地域によって効き方が違うとかはない。


オコの神聖魔法については、治癒魔法の限度(傷は治るが欠損した部位は元どおりにならない)を越えて、神への信仰の域に達した魔法であり、聖狐天が神界にありがちなドロドロした神々の確執から無縁な神であるために例外的に生じた魔法なので

「悪の浄化」

と言う事にも効果があるのでは?

と思った訳だ。


『まだ断言出来る定義ではありませんが、レムリア世界で聖狐天神が最も悪から遠い存在である。と考えれば、悪事を働く存在は神聖魔法は抵抗出来ない。と考えるのが妥当ではないかと』

「つまりオコの神聖魔法によって再現された物質に、悪意は生じない。と言えるのかな?」

『聖狐天神の神聖魔法であれば、確率は83%ですね』

スミティにしては異例に高い。


「私だったら?」

『60%』

まあこれもスミティとしては高い方で、俺たちはこれ位の数字だと

「大丈夫だ。スミティのお墨付き」

と突っ込んでしまう。


「開けてみるか」

「危険だよ」

「わても反対やな」

「いっけー!」

「大丈夫じゃない?ウラナくんラッキーボーイだから」

「なんかどえらげにゃあもんが出てこやしたら、ウラナさが責任取りゃあよ」

と言う訳で賛否両論の中、結局どうなったか?

と言うと、卵はアッと言う間にヒビが入り、勝手に割れてしまった。


「避難しろ!」

全員が蜘蛛の子を散らす様に四方八方に散る。

こんなに逃げ足の速いのは、前世で中学校の理科の時間、カエルの解剖をしていて、胃の中から大きなコオロギが出てきた時以来だ(教師も逃げた)。

恐る恐る戻ってみると、床に落ちた卵の殻から、それこそ虫くらいの大きさの何かがうようよひしめいている。

「なんだこりゃ?」


口々に何か叫んでいるのは、レムリア語に近い言葉だった(俺は翻訳されるので分からなかったが、他のメンバーがそう言っていた)。

「巨人だ!各自配置につけ」

「怖いです怖いですぅ〜」

「くそっ!こんな時に馬があれば」

などと叫んでいる。


「司令官は誰だ?」

師匠が呼びかけると、彼らはしんと静まり中から一人の者が進み出た。

「私だ。お前達は獄界の者か?」

「獄界が何かはわからんが、ここはレムリア。俺は調整役の人類の代表、ウラナ・ストロと言う」

「ふん。獄界の巨人は頭が回る様だな。私たちは召喚に応えてこの獄界に魔界からやって来た、リリパット軍団。私は団長のオベロンである」

なんか小さいのに威厳のある団長さんだった。


召喚に応えてと言ったな?

魔女の召喚と言う事か?


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