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44-30.ディード神の正体

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


44-30.ディード神の正体


「ディード神様は魔族に遭われた事がお有りなんですか?」

俺は核心を突く質問をした。

ここまで魔界に詳しく、また巨人女を魔族と断定したのには、ディード神自身に魔族と遭遇、また戦った歴史があるのでは?

と思ったのだ。


「そなたはなかなかに厄介な男だな」

「光栄です」

「褒めてはおらん。そなたも正直にゴンドワナとやらの事を明かしてくれたから、妾も正直に話すとしよう。そなたの前世の世界は正しい。魔族にはほれ、確かにこの様な尾が生えている種族がおる」

一瞬緊張が走る。


「と、申しますと?」

「妾は魔界から来た」

「つつつ、つまり、まぞくのスパイ、って事ですかい?」

緊張の余りステルの言葉が変になっている。

「スパイではない。亡命者じゃ」

なんだか前世で難民とか不法移民とか言って入ってくる人に、故国のスパイがいる。と言う話を思い出した。

外国は大変だなあ…(※主人公がレムリアに来た当時は欧米の話だったが、今は日本でも深刻な問題だ)。


「亡命者と言われますと、魔界で迫害を受けたとか?」

こう言う話には敏感なオコが食いついてくる。

「まあ魔界の事情を余り話すのも気が進まぬが。妾は魔神会議の議長であったが、権力闘争に敗れて追放された。と言う説明が、レムリアのそなた達には判り易かろう」

「権力闘争…」

俺が唸ると

「簡単に言ってしまえば、妾は異世界に侵略する事には慎重派だったのじゃ」


魔界の存在意義、あちらの宇宙生命体の意図は異世界侵略だろうから、それに反する言動は取れない。

時期が悪い、とか我が軍の国力が、とかそう言う考えだったのだろう。

ところがレムリア世界の破滅の魔女が魔界との穴を開けてしまい、 侵略のチャンスとばかりに盛り上がる他の魔神に対し、議長は冷静だったのだろう。


「落ち着け」

と抑えようとした。という。

「魔女の開けた穴は脆弱で、とても全軍を率いて突入する事は出来なかった。そこで知恵の魔神の提案で、簡易魔界を体内に持つ巨人を送り込んだのじゃ」

あの巨人女は簡易魔界だったのか!


「小さく産んで大きく育てる」

と言う通常の簡易魔界とは異なり、いきなりフェンリルやヨルムンガンドの成獣を生んだのだ。

「巨人女はヨルムンガンドを産んだ時、毒で死んだらしいな。哀れな事じゃ」

ヨルムンガンド、つまり白蛇(パイニャン)さんの事は知っているだけに、余計に哀れを感じる。


「それから、それから?」

ステルが続きを急かす。

「面白いか?」

「きょうみぶかいです」

「そうか、では妾の悲劇を語ろう」

言いたくなければ言わなくてもいいですからね。

でも結構ディード神もノリノリだった。


「こうしてラグナロクは終了した。レムリアではこの戦いはレムリアの敗北、魔女の勝利とされているが、魔界側では魔族の戦略兵器である巨人女を失い、せっかく産ませた二頭の怪物を失ったのに、異世界征服が出来なかった事で、執行部への批判が高まっていた。


魔界の取り分を約束した魔女は、敵将に討たれたとかで雲隠れしてしまい、穴は何者かに塞がれ所謂『戦利品無き勝利』で、妾は責任を取らされ追放になった」


「どこに?」

「無の空間じゃ。奴らはこれで妾が永遠に魔界には戻れぬと思ったじゃろう。じゃが妾は巨人女の世話役として妾の執事を送り込んでいた」

「しつじは何もの?」

「魔族の中でも、最も人間に近い、魔人じゃ」

魔族の中に魔人はいるのか。


「それから、それから?」

ステルはノリノリだ。

主人公が知恵と工夫で難局を乗り切る話が大好きなのだ。

「その者は巨人女が死んだ時、姿を隠した。魔女はその世話係も、ヨルムンガンドの毒で死んだと思ったらしい」

弱い生き物だと、体がドロドロに溶ける猛毒と言う事なので無理もない。


「その者の種族は全員妾が追放される時に妾のポケットに隠した」

マジックポーチみたいなものか。

「妾は無の空間に彷徨ったが、レムリアに残ったその執事が、妾をレムリアに呼んでくれた」

「どうやって?」

「レムリアでは神はどうやって生まれる?」

「信者が信じる事で」

そう言う訳か。


ラグナロクでほとんどの神は死に絶えた人間も文明が崩壊し、原始生活に戻った。

そんな中で一人でも強烈な信仰を発すれば、ディード神が無の空間からレムリアに再生したのは頷ける。


「ほかのかみさまはディードさまをかんげいした?」

「いや」

「拒んだのですか?」

感情移入の激しいオコが訊く。

例え敵将であっても、亡命者であれば親切にすべきだ。

と言うのがオコの信念だ。


「いや、拒むも歓迎も、神など一人も居らんかったよ。ただボロボロの老人が『ようこそ、むさ苦しい所ですが、良かったら安住してください』と」

マーリンだな。

しぶとい爺さんだ。


「でも、今の文明を始めたスメル人を導いた、ヌナムニエルと言う神が」

「ヌナムニエルなあ。そなた達はスメル人を見た事があるか?」

「血を引く末裔には会った事があります」

俺はギョウザ歌劇団の座付き絵師のアンジェロ・三毛とその娘ジェライスを思い出す。


「その者達に尻尾はあったかい?」

※44部の主な登場人物

◯旅の仲間(ビッグセブン+α)

メグル(ウラナ)…主人公。元ボン76世(未)。旅行家志望。生真面目なまもなく18歳(僕)と結構浮気症な66歳(俺)が同居している。"国民的英雄"に加え、"改革者(イノベーター)"の称号を獲得。更にマーリンから"人類の代表(略して人代)"を押し付けられる。

聖狐天の父となる。朱雀国ガルーダ元帥となる。

オコ…メグルの妻の元妖狐。メグルとの子作りを夢見ている。弓の達人。弱者の味方で直情的。聖狐天の母となる。大聖母。

コンコン…先先代妖狐。通常は子狐に憑依しているが、最近は仙桃の力で元の姿も長くとれる。

ステル(ラン子)…鳥ジャガー神。ラン(獅子)とヘレン(白虎)の娘。メグルをあるじと慕う優しい少女。第6章で進化を遂げ成体、幼体(子猫)以外に猫耳娘の形態をとる。第26部でさらなる進化を遂げ、龍神ケツァルコアトルにも化身。

パーサ…元八娘2号。シバヤンから譲渡され、メグルの侍女となった名古屋弁美少女。諜報活動に大活躍。自称第二夫人。大型肉食獣アヌビスと美しい牝馬に変身出来る。

今後は小説家になるらしい。

ノヅリ…バクロン第3王子。魔法省長官を辞し魔法修行の旅に出る。メグルの師匠。コリナンクリンの夫。

コリナンクリン…ワタリガラスの鳥神。運送業ワタリガラス商会の女社長。ノヅリの妻。

"僕"…"俺"の中に共存する肉体の本来の持ち主。スミティと共にウラナに様々な助言をする。

八咫…ノヅリ師匠とコリナンクリン社長の息子。寄宿舎学校に通っている。

トトム…師匠と社長が駆る飛竜(ワイバーン)。知性が芽生えつつある。

○聖狐天神界

聖狐天…オコを崇める人々の信仰が造り出した神をオコの分魂とメグルの造った依代(フィギュア)で具現化した新しい神。ウラナ夫妻の娘。

シャミラム…聖狐天四天王の一人。元北風の巫女。

サンコン…聖狐天四天王の一人。オコの先々先代の鼎尾妖狐。

二娘…聖狐天四天王の一人。ナンバーズ一の武人。

メルファ…聖狐天四天王の一人。元暴風の魔女メル=ハバ。

ドルマ…ゴルモア大草原の元霊犬。聖狐天を守護する魔喰い。よつばを産む。

○ナンバーズ

一娘…ナンバーズの統括。シバヤンの宮宰。

五〜七娘の母。

二娘…武人。聖狐天に仕える。八娘の母。

三娘…シバヤン宮廷の家事一般を取り仕切る。完全なお掃除をする侍女人形。

四娘…隠密活動に特化。上警で働く侍女人形。

五娘…キャーリーの親友。足が速い。

六娘…唯一人間と同じ消化器官を持つ。記録の神殿で修行中。

七娘…背が高い。宇宙での活動に特化。

八娘…パーサ。クローン分裂したもう一人の八娘のパー子は、人間のパナとなりバクロン元第5王子にして元国王アルディンの妻。

○その他の神・人

アドミン…管理者。スミティを派遣する。

スミティ…アドミンに派遣されたエージェント。メグルの脳内で、メグルの宿主意識の少年と暮らし、メグルに助言する。

マーリン…古代の魔術師。元人類の代表。因業爺。超古代の英雄神イーオンの転生。太古の名はアダムらしい。ゴンドワナでは白いフクロウを依代とする。

ベンガニー…元ジョウザの侍女。大ベストセラー作家。今回はコンサートツアーギョウザ公演のプロデュースと新しい"3メタル物語"の脚本を担当。

小孫妹…ベンガニーが飼っている金糸猴の小猿。

パピーズ…レムリアとゴンドワナを行き来出来る4人の犬人の子(ウラナ、オコ、ノヅリ、セイコのαと4匹の橇犬の仔犬(同β)。

3メタル…初代妖狐の娘白銀丸、初代妖狐の義妹の黄金丸、赤銅丸。

レナルド・ダンチビ…妖狐の里の天才発明家兼工房長。

イグルー…大氷原の族長の娘。ヤクスチランワイン貯蔵庫責任者。ベンガニー本のヤクスチラン語翻訳者を目指している。自著名"威愚瑠烏"

トマレ…大氷原の少女。

ウメダ…元チャガマン公国の王子、現在はアマランタインの夫。ハーフエルフ同士の子。

アマランタイン…千年の眠りから覚めたエルフ女王。

ハツホ…ウメダとアマランタインの息子。

○オコの家族

吐心…父。蓬莱系移民。

サリナ…母、妖狐の里一の踊り子だった。

御供…オコの弟。二娘とメルファに師事。請われて女神モリガンのタイラン軍に入隊。

リュナ…オコの上の妹。商才に長ける。

(マナ)…オコの下妹。魔性の妹で今はローカルアイドル。

○神々

ダガムリアル…古代神の一人。滅亡したドワーフの祖先神で工芸の神。キャーリーと結婚。

シバヤン…ペンジクの有力神。破壊と創生神。

パトゥニー…シバヤンの妻。慈母の女神。

キャーリー…シバヤンとパトゥニーの娘。ダガムリアルの妻。漆黒の女神。太古の女神スバーハと習合している。

アヌビス…ナイラスのミイラ作りの神。パーサの義兄。馬鹿助。

マァト…太陽神ラーの娘、冥界審査官、冥王補佐、アヌビスの恋人(アヌビスからだけ)

記録の神殿の神官…本名は漆黒大陸の神オニャンコポン。

アンゴルモア大王…ゴルモア人の大草原冥界で暮らす先祖神。

モリガン…タイラン島の女神。実体はナイラスのマヤ・ティティ。マヤ・ティティはモリガンの頭の中で夫のイグナスIII世と共存している。

ターワン・ラメン…古代ナイラスの元帥で御供の守護霊。タイラン島の猿人を指揮するため御供を左腕にして復活する。

レムリア神…ついに明らかになったレムリア最高神は宇宙生命体天御中神だった。レムリア神は天御中神の作ったプログラムで、生命の創造と進化を担当。

ワダツミ大神…蓬莱の海神。ムーの主神でカナロアと呼ばれたが、本当はオケアノスと言う古代の海神。正体は宇宙生命体天御中神の組んだプログラムで、生命の環境を整える役目を負う。

朱雀王…朱雀神界の主神。メグルの主筋。

高御産巣日神…天御中主神、神産巣日神とともにレムリアを訪れた神。天御中主神の作ったプログラムか?別の宇宙生命体か?

日見呼主命…蓬莱の主神。正体は不明。

スクナヒコナ…ヒーナル。波乗りする小さな神。ワダツミの子として、ワイハ人をムー島嶼に導いた。正体はワダツミ大神の創造した上位エージェント。

伎芸天…所属神界のない芸能神。芸能事務所社長。実は醍醐如来の娘にあたる。

フォクシー御酒子…3メタルの振付を担当する世界的振付師。

三元道士…マーリンの弟子の一人でコリナンクリン社長の同級生の親友。

ドスル…名前を奪われた元古代神ロキ。放浪しながら魔女を追う。現在は軍師。

パトニカトル…現レムリア神界最古の神。酒神。ヤクスチランの主神。オオモノヌシとも言われる。

ハトホル…ナイラスの女神。マヤ・ティティの母。前世はイブ。

ハマチャーン…ペンジク神界の猿面の神。

斉天大聖…上警の上級捜査官。水簾洞の主人でハマチャーンのクローン兄弟だった。

クロノス神…運命の神。レムリア人・神々が、漠然と思う時間の神。実際には時間局を統括する四次元神。

醍醐如来…醍醐教の主神。

大日如来…醍醐教密教の主神。

不動明王…大日如来を護る五大明王の一人。だけでなく、大日如来の意を伝えるCOO役でもある。

薬師如来…醍醐神界の医療・薬学の総帥。

観世音菩薩…醍醐神界のお助けヒーロー。33の変化体を持つ。

シンダル王…エルフの祖先神。

○敵

合理キー(仮)…パーサの首を捻じ切った謎の怪力マン。正体は天使のプロトタイプ。

ヨルムンガンド級…オケアノスが警告するラグナロクでの強敵。精神操作系の術者だと思われる。

カペラ…スミティと同等の宇宙生命体の部下。

ケイオス…アドミンと同等の宇宙生命体。

天使兵(アンジョ)…宇宙空間でスサ大神を拘束していたフェンリル級怪力天使。生物ではない様だ。兵団単位。

怪僧…黒衣の修道僧の姿の魔女の新しい部下。天使を操る力を持つ。正体は蓬莱東国の銅居。

虚無の女神…宇宙生命体でも制御出来ない、天体を飲み込んでしまう負の存在。ブラックホール的なもの。

マチアス・ナビル…バクロン魔法省に処刑された、当時12歳の少年。しかし心理地雷で脱出し、魔女の陣営に加わる?ヨルムンガンド級と思われる。別名魔智吾主。

◯第44部の登場人物・神

制咜迦童子…不動明王の眷属八大童子の八男。

孔雀明王…密教守護神で、ペンジク由来の強力な女神。

西老猴、北武猴、南温猴、東徹猴…水蓮洞の四大猴。

魔光仙女…斉天大聖の娘で売れっ子漫画家。水簾洞の金糸猴。通称マコちゃん。

エリッサ…ヴェスパ火山近くの漁村の外れに住む孤児。有尾人。

ディード…ポエミの神。幼名エリッサ。記録の神殿で修行を始める。


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