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5-11.聖狐天と言う神

(更新が1時間程遅れました。申し訳ございませんでした)

転生したら転生してないの俺だけだった

〜レムリア大陸放浪記〜


5-11.聖狐天と言う神


「「聖子ちゃん!」」

俺たちの叫びを聞いて、コンコン達が飛び込んで来た。やはり俺たちの話の内容が気になっていたのだろう。一応結界は張っていたのだが、扉の外で待機していた様だ。

「何があったんや?」

俺たちは聖子ちゃんが気を失った経緯を話した。

「そんなに国教が嫌やったんやな」

「聖子ちゃんの性格ならたりみゃあかもしれん」

「せいこおねえちゃん、そういうのきらいだよ」

ラン子と聖子ちゃんはすぐ仲良くなって、結構独り言の様に子猫のラン子に語りかけていたそうだ。沢山の人と一度に話すのは苦手とか。信者の一人一人とじっくりお話したいとか。


「性格、と言うよりオコのジョウザでの日常の姿から生まれた聖子ちゃんの持つ、属性みたいなものやろな」

毎朝水汲みに来て、街の人々と笑顔で挨拶して、孤児院の子供を心配して。

そんなに人々の暮らしまで降りて来てくれる神様なんて、今まで居なかったのだ。

だから人々は、尊い事だ。ありがたい事だと自然にオコを拝む様になった。

国民の上に君臨して、国の中心となる様な主神には、なれるはずはなかった。そんな事になったら、聖狐天の存在理由(アイデンティティ)が無くなってしまう。


「チャガム太守の申し出は断ろう」

「それが良いわね」

聖子ちゃんは高熱にうなされていた。

「まずいがね。このままだとキャーリーさの術が剥がれてしまう」

俺の作った依代(フィギュア)をウル・オートマタの筐体に融合させ、ダガムリアルの作り出した無属性のクリスタルに、オコからクローン分離させた魂を植え付けたのが聖狐天。聖子ちゃんだ。

時が経ち、徐々に個性が芽生えては来ているが、今回の様な事があると、キャーリーが結びつけたつなぎ目が剥がれてしまうかもしれない。

俺たちは聖子ちゃんの看病をしながら、今後の事を話し合った。


「今になってこんな事を話しているのは、親として大変恥ずかしい事だな」

「本当に。あの子の事は分かっていたはずなのに」

「しっかりして来たで、ここまで拒否反応が出るて思わんかったで。迂闊だったがね」

「まあ、済んでしまった事はしゃあない。メグル、聖子ちゃんが倒れてからどれくらいや?」


「30分位かな?」

「なら5〜6回戻れば良いか?ちょっと痛いやろけど」

なるほどな。やった事は無いけど、やってみるか。俺はミリグラムを抜く。

「すまんが、頼めるか?」

『良いわよ。この娘、私も好きだし。腕?』

「指先で」

「「「ビビリだなあ」」」

俺の第二の恩寵(チート)であるが、敵の襲撃等で危険が迫ると、数分間だけ時間を巻き戻し、危険に備える事が出来る。自らの意思で動ける魔剣グラムから造られたミリグラムなら、巻き戻った瞬間にまたメグルに危害を与え、さらに数分間。これを繰り返せば、何十分でも何時間でも、何日でも原理的には戻れるが、俺の体力と魔素が尽きる。30分(多分6回分)はかなり危険なゾーンだ。


口が利けなくなるほど疲弊する事を考慮して、簡単なメモを書き、左手に握る。オコとさっきまで聖子ちゃんといた部屋に戻る。聖子ちゃんもオコがお姫様だっこで連れてきている。

コンコン達は外に出る。

『じゃあ、行くわよ』

ミリグラムが鞘から飛び出し、俺の右中指を正確に突く。血が滲む。

見るとまだ聖子ちゃんは倒れている。

「もう一度!」

結局7回かかった、思いの他時間が経っていたんだな。

聖子ちゃんが座っている。

『実は…』

の後、俺はゆっくりと床に倒れ込む。

「メグル!」

叫ぶオコに、息絶え絶えの俺はメモを渡す。

『訳は後で話す。聖子ちゃんが取り乱さない様に頼む。俺をベッドに寝かせて介抱してくれ』

成功した。

聖子ちゃんは俺の横に付きっ切りで、癒しの霊波を送り続けてくれた。


俺は一時間程で何とか起きる事が出来る様になった。危なかった。もうこれはやりたく無いな。

まずオコに念話で話す。

聖子ちゃんは神だから、やろうと思えば俺たちの念話など傍聴するのは訳ないのだが、勿論そんな事はしないのが聖狐天だ。

俺たちは聖子ちゃんを部屋に残し、外にいる3人に首尾を話す。

「わてから、聖子ちゃんに話して聞かせるわ」

流石伊達に歳経ていないな。

コンコンは聖子ちゃんのいる部屋に入って行き、聖子ちゃんがパニックにならない様に宥めながら、事情を話した様だ。


二人が出てくる。

「パパ!」

聖子ちゃんが跳び付いて来る。

「ごめんね、ごめんね。私が弱いばっかりに、パパをこんなにボロボロにして」

包帯を巻いた俺の右手の指全部と左指二本を見つめながら、ポロポロと涙を流し続ける。

「聖子のためなら、こんな事なんでも無いさ」


狐面を付けて側近達を呼ぶ。

二娘は俺の様子と聖子ちゃんが泣いているのを見て、腰を落とし周りを警戒し始める。もういつ敵襲が有っても構わない構えだ。

先先先代は、じっと俺を見つめ、

「うん、良くやってくれた」

と頷く。

シャミラムは

「まあまあまあまあ。メグル様大丈夫ですか?今回復薬(ポーション)をお持ちしますね」

と消えてしまった。そしてすぐレムリアではまず見た事は無いが、RPGゲームとかで散々お世話になった、青い液の入った首長の瓶を持って来た。スメルの薬学か…。面白そうだな。


一番情緒不安定なのがメルで、さっきから顔を真っ赤にしてグラムを抜こうとしている。終いには

『落ち着け主。この男はお前の妄想している様な奴ではない』

どうも、俺が聖子ちゃんに襲いかかって返り討ちにあって負傷。と言う様な筋書きを思い描いていた様だ。失礼な奴!

「聖狐天から、皆に話がある」


1.常に民と共にあって、励まし支えになる。

2.信頼はされたいが、崇拝はされたくない。

3.お布施も神殿で働く人々の生活が立ちゆく以上のものは受け取らない。

4.権力者のために働かず、どんな派閥にも与しない。

5.民を愛し、民に愛される神になる様、精進を続ける。


この五箇条の誓いは、聖狐天のどの祠にも掲げられ、信者の生きる目標ともなった。

「以上、わたくし聖狐天は、ここに誓う」

さっきの失神してしまう様な気弱な少女が、驚くほどはっきりと決意表明した。

俺の苦労が報われた気がした。


「然り。我が主上よ(イエス ユアハイネス)」

4人の側近は跪き、首を垂れた。


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