5-4.パーサが?
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
5-4.パーサが?
取り敢えず、一度妖狐の里まで帰る。
「さて、聖子ちゃんの所にどうやって行こうか?」
「あ、パーサのパリトネカビルがないと行けないわ」
「先先先代呼んでみまひょか?」
「こっちには呼べるけど、俺達は行けるのかな?」
「ぱーねえちゃんまだかえってこないの?」
「呼んだ?」
いきなりパーサが、いや誰だあんた?
「何を言ってるんですか、私はパーサですよ」
「「「うそだー」」」
目の前に居るのは確かにナンバーズの特徴を持った美女だった。
一娘さん?いや三娘さん?
「もう、ちょっと改良しただけで、私が判らないとは嘆かわしいわね」
ギギギギと音を立てて体が縮む。おおよそ10cm程小さくなって
「第二夫人に相応しい姿に改良して貰ったんだがね」
いつものパーサになった。
「びっくりしたなあ、もう。その改良のためにシバヤンの改修を受けてたのか」
「まあこれはオマケだで。シバヤンさがこれからメグル達と一緒に旅するなら、メグルやオコの成長に併せて成体も必要だろうて」
「オマケって他にもあるのかよ」
「前から走る速度で五娘に負けとったのが、我慢出来んかったんだて」
ナンバーズ一の快足娘の座は五娘のものだ。特に一度壊れてからは、主人キャーリーの願いもあり(娘のお願いにはシバヤンは弱い)、キャーリーのピンチにいつでも駆けつけられる様に魔改造が施され、他のナンバーズの倍ほど速く走る様になった。
これがパーサには気に入らなかったらしい。
ナンバーズの中で、五娘と八娘の片割れのパーサは特別な位置にある。それは二人だけが主人をサンディから移している事で、だから特別な親近感を持つのと同時にライバル心も強い。
ちなみに二娘は最近聖孤天の元にあり、心酔しているので、シバヤンに聖孤天の配下に入る願いを出したそうだが、これは叶えられないだろう。警護役として派遣するのはいいが、配下になると汎神としての聖孤天のバランスが崩れるからだ。
「で、もう一つの改良って?」
話の続きを聞いて欲しくてウズウズしている感じのパーサなので、聞いてあげた。
「聞きてゃあ?仕方にゃあなあ。足を速くして貰ったんだわ」
「そうかそうか」
俺たちの基準ではあり得ない程ナンバーズの足は速いので、その中で速いの遅いの言われても余り感慨はない。
「で、ナンバーズ最速になったのか?」
「ま、まあな。そう言ってもやぶさかじゃにゃあ」
なんか歯切れが悪いなあ。なんかあるのかよ。
「まあ、二本足では五娘に負けるでよ」
「二本足?つまり四本足ならと言う事?」
オコが聞く。
「二本足では、魔改造された五娘の速度にゃ追い着けーせん。シバヤンさに同じ魔改造してちょ。と頼んだけどが、断られてまった」
それは大勢のナンバーズを生み出して、それぞれに違った個性を与えたいと言うシバヤンの親心なのだろうか?
「それでも、そこをなんとか。と頼んだら、動物に変身出来る様にしてくれたんだわ」
「「「「なんの?」」」」
うちには子猫(翼獅子)、子狐と可愛い系のキャラが居る。被らないで欲しいのだが。後は犬か?犬なのか?
「もしかして豆芝とか?」
「なんだの、その美味しそうな名前。五娘に負けない足の速い動物だがね」
足が速いと言えば、チータか?ラン子と猫被るなあ。
「アヌビス、ちゅう動物らしいて」
アヌビスと言えば、古代エジプト文明の神。こちらではナイラスと言う古くから栄えてきた国の冥界の神で、ナイラスにはまだ行った事がない。アヌビスはシュリガーラと言う聖獣の化身で長い耳を持つジャッカルの頭を持つ神と思われていた。ところが最近の研究で、エジプトジャッカルと言われる獣は、普通のジャッカルよりはアフリカオオカミに近い。と言う研究が発表され、ネットで話題になっていた。俺がこっちへ来る数年前の事である。
ジャッカルと言うと、ラグビーワールドカップで有名になった技の名前だが
「狡猾に奪う」
と言う様な意味があり、多くの人はジャッカルに他の獣の狩りの獲物を横取りする様な、ちょっと良くないイメージを持っている。
アフリカオオカミは現在絶滅の危機にあるが、群れをなして狩りをするオオカミで、神の化身としてはこちらの方が相応しい。エジプトジャッカルは他のオオカミよりも耳が立っており、そのためにジャッカルの一族と思われた様だが。
「野干か。大東にはジャッカルは居らへんので、狐と思われてるんやけどな。とにかくパーサ、化身してみ?」
パーサがポワン!と姿を変える。
おお、確かにアヌビスだ。エジプトジャッカルとも、アフリカオオカミとも違うスリムな体。絵画に描かれたアヌビスの姿がエジプトジャッカルと余りにも異なる(フサフサの毛皮がない)ので、エジプト学者の中ではアヌビスは絶滅したイヌ属の獣だったのでは?と言う説もある。立った耳以外のフォルムは、ドッグレースに使われるグレイハウンドに近いが全身は真っ黒だ。
「あんまり可愛くないわねえ」
オコが直球の感想を述べる。
「愛玩動物じゃにゃあでよ。走るためだて」
彫像そのままの伏せの姿勢は、大型犬好きの俺には堪らなく可愛い。
「この格好だと速いのか?」
「五娘と競争して首差で勝つでよ」
パーサが自慢げに言う。
「だけどもが、この格好で人は乗せられん」
五娘はベンガニーを背負ってタリフまで走って来たもんな。この辺が個性の違いと言うものだろう。
「よーしよしよしよしよし」
デモンストレーションランをして来たパーサの頭を撫でてやり、本題に入る。
「パリトネカビルで聖孤天の神殿へ連れて行ってくれ、お前が居なくて困ってたんだ」
しゃあにゃあなあ。と嬉しげにパーサが呪文を唱えた。
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