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4-29.誓い(1)

第4部の主な登場人物

『旅の仲間』

メグル(ウラナ)…主人公。元ボン76世(未)。旅行家志望。

オコ…メグルの婚約者。自称妻の元妖狐。弱者の味方で直情的。

コンコン…先先代妖狐。子狐と伎芸天女の童女に憑依できる。

ラン子…翼獅子。ラン(獅子)とヘレン(白虎)のライガー。

パーサ…元八娘2号。名古屋弁美少女。自称第二夫人。

『全編通じて登場する人(神)』

ヌナムニエル…本編クエストの依頼者。エルロンが不在の為引退出来ず、メグルに泣きつく。

エルロン…元はアッチラの主神だったが、ギルガメシュ(エノキド)に罪を問われ、冥界に投獄される。ところがアンゴルモア大王の孫イズがイザン朝の主神とした為、ヌナムニエルが引退出来ず、メグルが釈放のクエストを請け負う。

ニンニン…冥界に住むエルロンの妻。

ナント…エルロンの息子。月の神。

エノキド…ギルガメシュを名乗って人類の代表としてエルロンを冥界に投獄する。

現在は妻メラッサと共に、世界の果ての宿屋を経営。

マーリン…大魔法使い。人間の代表として、冥界のエルロンの牢獄の鍵を預かる。

メル…暴風の魔女メルハバ。多くの被害をもたらし、師匠のマーリンは困っている。

イマー…冥界の王。

オルフェ…元ヤクスチラン第二王子ヴァニル。婚約者のチョコラトルを冥界から救出に行く。

シバヤン…南レムリア最高神の一人。

パトゥニー…シバヤンの妻。

サンディ…シバヤンの第二の妻。

キャーリー…パトゥニーの娘。漆黒美少女神。

ダガムリアル…工匠の神。ドワーフ。

パトニカトル…ヤクスチランの主神。酒の神。

ベンガニー…元ジョウザ侍女で大ベストセラー作家。

五娘…ナンバーズの一人。快速の委員長。

聖子ちゃん…新しい聖狐天。

伎芸天…コンコンの友人。空間プロデューサー。

オーショー…ギョウザ歌劇団団長。

チャガム…チャガマン国太守。

転生したら転生してないの俺だけだった

〜レムリア大陸放浪記〜


4-29.誓い(1)


紅潮した観衆達が、口々に

「いやあ凄かった」

「本物だよな。絶対!」

「私もう聖狐教に入信しちゃう」

などと言いながら出て来る。

「ねえ、どこまで行くの?」

姿を隠したまま、観客を先導する形で歩いていたオコが尋ねる。

「バザールの広場で良いだろう」

バザールは夜はやっていないので、普段は真っ暗だが、今日は公演があるので、劇団が松明を立てている。

広場の真ん中に女が立っている。

つば広の帽子とマント。

暴風の魔女だ。腰に手を当て、一歩も退かぬ構えだ。

「そろそろかなあ?」

「もう呼んでよろしか?」

「待てもう一人役者が…」

「ちょっとどいてどいてぇ〜」

怖る怖る魔女を遠巻きにしている観衆を掻き分けて、女が割り込んで来た。

「はいはいサインは後ね。私これ見ないとなんの為にタリフに来たか分からない」

大切な広告代理店の方がやって来た。ベンガニーはさっきの一幕の間じゅう、一瞬も舞台から目を逸らさずにメモを取り続けていた。後で読めるんか?

「役者は揃たな。伎芸天はん頼むで」

木の葉隠れのままコンコンが呼ぶと、聖子ちゃんがあっと言う間に空中に攫われる。

人々には聖狐天が突然空中に現れた様に見えただろう。周りに大輪の花火が開いた様に、伎芸天一座の大曼荼羅が展開される。附属楽団が聖狐天のテーマを奏でる。ついでに俺も、劇団のより全然凄い花火をばんばん上げてやった。

「「「「「おおおおーっ!」」」」」

観衆が文字通りひれ伏す。

駆けつけた団長達も目が点になっている。


「問おう。あなたは聖狐天か」

「然り」

聖子ちゃん厳かに答える。

「その威厳、その霊力。確かにあなたは聖狐天かもしれない。だが私の知るヨウコ様ではない」

「なぜ?」

「あの方の髪は銀色では無かった」

「神になってしまいましたからねえ。あなただって、頰はコケ顔色も蒼白で」

「あああ、最近余り御飯食べてなくて…」

正直な暴風の魔女は、逃亡中も人の食べ物を奪ったりしなかったのだ。

「髪の色ももっと艶やかな金髪だったのに、今は藁の様」

「お風呂にも入れなくて」

群衆はシンと静まり返っている。ベンガニーがペンを走らせる音だけが聞こえる。

「可哀そう。うちにおいでよ」

「聖狐天様がメルハバをお招きになった」

囁き声が聞こえる。あの大罪人でさえ救われるのか?なら俺たちも。と、街の愚連隊が感極まっている。

「あなたは聖狐天かもしれない。でもあなたが、ジョウザに居られたヨウコ様だと信じる事は、私にはまだ出来ない」

聖子ちゃんが手を振ると、伎芸天の曼荼羅は消え、メルの前に銀髪の少女が立っていた。

「声が違いますか?」

「いえ同じです。でもお姿が」

「そうね。私はあなたの知っているヨウコではないかもしれない」

何を言うんだ聖子ちゃん。

「あの日、主人を救う為に、私は人間である事を止めました。だから私は厳密にはあなたが知っているヨウコではない」

なるほど。聖子ちゃんはもうオートマタではないから、嘘がつけないと言う縛りはない。ただ見え透いた嘘はバレる。だから聖子ちゃんは慎重に言葉を選びながら、メルに話しかけた。

「あなたはどうしたら信じますか?私はあなたと、友達になりたい」

「ともだち…」

メルはその魔力の大きさと不安定さから、小さい時から友達が居なかった。友達になろう。と言ってくれる人がいても、うっかり怪我をさせてしまったりする。

この人が、一回会ったきりのヨウコ様と同じかどうかなんて、本当はどうでも良いのではないか?いやむしろ一回会っただけで、あれ程心が揺さぶられたのだから、今もこの人を見て動揺してるなら、やはりこの人がヨウコ様なのか?

「ああ、もう何がなんだか分からない」

聖子ちゃんの中のオコの記憶は、一生懸命思い出そうとしていた。

メルがダラへの馬車の旅の途中、毎晩私の事をタンジンに話していた。と言っても語るのは主にタンジンで、メルはオコと会った時の事を繰り返すばかりだが。

「あの時メルが語ったのは、泉の掃除をしていたら、ヨウコ様が声をかけてくれて。泉の水を飲む話をしていたのだった。これはタンジンも聞いてるし、商団の人たちも聞いてるから、秘密ではない。何か二人しか知らない事…。

「マグ」

「え?」

メルが腰に下げた独鈷杵に手をやる。

途端にパーサが間に割って入り、ラン子の背中が総毛立つ。

「大丈夫よ。なんでもないわ。私が言いたいのは魔具じゃなくて、お水を飲むマグ」

「あ!」

「あなたの銅のマグは私のと同じ形だった。私のはちょっと凹んでたなあ。まだ持ってる?」

「もちろん」

メルはカバンからマグを取り出す。

「懐かしいなあ」

聖子ちゃんは手に取って見つめる。

「私のはスジャちゃんが形見分けに持ってっちゃった。スジャちゃんは今でも水汲みしてるかなあ…」

メルは崩れ落ちた。

「大丈夫?」

「アイタカッタ」

「え?」

「アイタカッタアイタカッタアイタカッタアイタカッタあいたかったあいたかった会いたかった会いたかった逢いたかった逢いたかった逢いたかった!ヨウコ様ぁ〜」

メルが飛び込んでくる。

万一メルに見破られてはまずいので、オコはコンコンが木の葉隠れで共に身を隠していたが、鋭く

「ムタボール!」

と叫ぶ。

聖子ちゃんとメルの間に、翼獅子化したラン子ちゃんが割って入り、メルはラン子の毛皮にフワッと止められた。

群衆は腰を抜かして驚いている。

ベンガニーは物凄い勢いでペンを走らせている。世紀の特ダネ!と言う感じ。


さて、俺は考える。パトゥニー伝来の特殊メイクで、中年の夫婦に見える様に偽装している俺とオコだが、オコが表に出るのはまずい。メルが見破ったら、今までの聖子ちゃんの苦労が水の泡だからだ。ベンガニーも要注意だ。彼女の観察眼は半端じゃない。この特殊メイクでも、見破られる危険性はある。そこで俺はパーサに念話する。

「パーサにいつもシバヤンとかが乗り移る奴なあ。あれ俺でも出来る?」

読んでいただきありがとうございます。

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