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4-23.神の製造(4)

転生したら転生してないの俺だけだった

〜レムリア大陸放浪記〜


4-23.神の製造(4)


「では施術を開始します。準備。

筐体:シバヤン作ウル・オートマタ。

霊体:パトゥニー作依代依存型無属性。

依代:ダー、いやウラナ作聖狐天フィギュア。

コア:殺生石よりダガムリアルが精製せし、完全無属性クリスタル。

魔素供給:サンディ。

執刀医:キャーリー」

総力戦だな。やっぱり筐体は余っている二体のうち、ウル・オートマタ(元シュニア)を使うのか。パナ(パー子、八娘)の物だと元々完全な感情を備えていた筐体だし、パーサとの親和性も高すぎるので、使いづらいのかも知れない。


敬称略でキャーリーは一気に言い切ったが、なんか俺の事、ダーなんだって?(難聴主人公モード)

「では一気に施術を遂行します。お父様はウル・オートマタの最終動作確認を。お母様は霊体に不純な属性が紛れ込んでいないかの最終チェックを、お願い致します」

「心得た」

「判ったわ」

「ではお父様。オコさんの魂からクローン分離をお願いします」

オコは白い術着を着て、寝台に横たわっていた。絶対に危険はないと言われていたが、心配だ。もしオコの人格に障害が出て、キャーリーの恋に有利になる様に…。いや変な想像は止めよう。キャーリーがそんな汚い手を使う子ではない事は、全レムリア100万の信者と、全神界780人のファンクラブ員が知っている。


「うっ!」

オコが呻く。オコの体からぼんやりと霊体が浮き上がり、それが2つに分裂し、一つがオコの体に戻っていく。

「これで同じものが出来るかと言えば、別の人格になるのは八娘の時に立証済みだ。案ずるな。間違いなくオリジナルをオコに戻したから」

「お父様施術中に私語は」

「すまん。メグル殿が心配すると思ってな」


「ここまでは成功です。では、オコさんから分離した第二人格と、全レムリア1000人の聖狐天信者から抽出したサンプルデータ。そして聖狐天フィギュアに込められたメグルさんのオコさんへの想いを取捨選択して、クリスタルに組み込んで行きます」


「この作業は15時間程かかると思いますので、適宜休憩なさって下さい」

じゅ15時間?

しかしキャーリーの仕事が始まると、それは誇張ではない事が判った。

ゲゲゲの鬼太郎に妖怪に色々な質問をして、回答を紙に点の形で記して行き、最後にそれを線で繋いで妖怪の姿を紙に封じ込める術を鬼太郎が使ったのを思い出した。

「好きな色は?」

いっぺんに多くの声が上がる。そしてオコの答え。俺の答え。


後でなぜ俺の答えを参考にするのか?と聞いたら、キャーリーはちょっと悔しそうに

『メグルさんと共に育ち、メグルさんに仕え、メグルさんを愛したオコさんの感情を盛り込まないと、メルさんは違和感を持ってしまうから』

と言った。

これを何万通りも繰り返し、多数決ではない最適解をクリスタルにはめ込んで聖狐天の神格を作り上げる。これしか100%オコ、100%聖狐天の存在にはならないとキャーリーは考えたのだ。


15時間後、途中で何回か母の手によって強制的に休憩させられた様だが、キャーリーはやり遂げた。

「貴女の望みは?」

オコのでも俺のでもなく、

「信者と共に」

を選択して、キャーリーは術式を閉じた。

「ふぅ85点」

「優秀優秀」

父の賛辞にも微笑まず、

「メルに見破られる可能性が15%も有るって事よ。失敗だわ」


「これ以上の結果は誰も望めない。もし失敗したら、この姉に任せなさい」

普通の魔術師の千年分位の魔力を供給したサンディが、疲れも見せずに妹を励ます。

でもサンディがなんとかする。と言うのはメルを滅する。と言う事。その戦いで、恐らくレムリアの半分は破壊されるだろう。それでは困る。

「まあ、時間牢に入れておけば多少は、そうさな100年位は時が稼げるじゃろう」

時間停止型マジックバッグの製作者が呟く。


「15%を私達で埋めましょう」

オコが提案してお茶会が始まった。

最高級のカルダモンティを淹れ、シナモンクッキーを出して、何を始めたかというと、俺とオコの思い出話である。

子供の頃の話。ジョウザでの生活。

これはタンジンが旅の途上で毎晩夕食の際にメルに語って聞かせた事だ。俺たちも大抵は、木の葉隠れで姿を消しながら同席していたので、タンジンの語りをかなり正確に再現出来た。

それから旅の途中で見聞きしたメルの言動、仕草。食べる時メルはこうする。酒を飲むとこうなる。

『ああ、あの子を殺したくないな』

俺とオコの強い気持ちも、キャーリーは感じ取っていた様だ。時々ハッとした様に メモを取る。


「少し一人にして頂戴」

キャーリーは手術室に籠った。

30分ほどして、キャーリーは出てきた。

「失敗率を4%まで下げられた。お二人のお陰よ。お父様、すぐにコアを筐体の心臓部に。お母様、霊体に依代を取り込んで、筐体に被せて下さい」

「「判った」」

娘を誇る様に、元気に夫婦が動き出す。

シバヤンがクリスタルをウル・オートマタの心臓の位置にはめ込む。

パトゥニーが依代を霊体に取り入れる。霊体の形が、俺の作ったフィギュアを拡大した物になっていく。

「今よ!」

パトゥニーが霊体を筐体に被せる。

「お姉様!」

サンディの持つフルパワーが注ぎ込まれる。


光り輝く眩い体がゆっくりと起き上がり、

見よ!

切れ長の眼がゆっくりと開く。

「私は………誰?」

キャーリーが答える。

「貴女は聖狐天」

「私は…聖狐天」

「摩訶南無妙新生聖狐天…」

コンコンが真言を唱える。

初代妖狐とは違う、神としての新たな誕生である。との宣言だ。


「夢を…見ていました」

聖狐天がゆっくりと話出す。

「黒いお母さんが私に『貴女は多くの人々に愛されるために生まれて来るのよ。多くの人を愛しなさい』と言った。お母さん。貴女が」

「そうよ、私はお母さんじゃないけどね。私がそう言って送り出したの」

「そこにいるお姉さん。貴女は私のお姉さん?」

「違うけど、一番最初の友達よ」

「隣のお兄さんは、とても好ましい。私の彼氏?」

「駄目よ。この人は私の夫。でも貴女の親友よ」

「判った」


最初の会話次第では、誰かの属性が付かないかヒヤヒヤしたが、無属性のクリスタルに植え付けられた個性はそんなにヤワでは無かった。

「独立した、そして悲しいほど孤高の個性じゃ」

ダガムリアルが呟く。

「でも愛に満ちてはる」

コンコンは愛しい孫を見る様に言う。


「もう一人、貴女を心から必要としている人がいるの」

「何処に?」

「これから会いに行きましょう」

「会いたい」

読んでいただきありがとうございます。

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