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4-14.祝言(2)

第4部の主な登場人物

『旅の仲間』

メグル(ウラナ)…主人公。元ボン76世(未)。旅行家志望。

オコ…メグルの婚約者。自称妻の元妖狐。弱者の味方で直情的。

コンコン…先先代妖狐。子狐と伎芸天女の童女に憑依できる。

ラン子…翼獅子。ラン(獅子)とヘレン(白虎)のライガー。

パーサ…元八娘2号。名古屋弁美少女。自称第二夫人。

『全編通じて登場する人(神)』

ヌナムニエル…本編クエストの依頼者。エルロンが不在の為引退出来ず、メグルに泣きつく。

エルロン…元はアッチラの主神だったが、ギルガメシュ(エノキド)に罪を問われ、冥界に投獄される。ところがアンゴルモア大王の孫イズがイザン朝の主神とした為、ヌナムニエルが引退出来ず、メグルが釈放のクエストを請け負う。

ニンニン…冥界に住むエルロンの妻。

ナント…エルロンの息子。月の神。

エノキド…ギルガメシュを名乗って人類の代表としてエルロンを冥界に投獄する。

現在は妻メラッサと共に、世界の果ての宿屋を経営。

マーリン…大魔法使い。人間の代表として、冥界のエルロンの牢獄の鍵を預かる。

メル…暴風の魔女メルハバ。多くの被害をもたらし、師匠のマーリンは困っている。

イマー…冥界の王。

オルフェ…元ヤクスチラン第二王子ヴァニル。婚約者のチョコラトルを冥界から救出に行く。

シバヤン…南レムリア最高神の一人。

パトゥニー…シバヤンの妻。

サンディ…シバヤンの第二の妻。

キャーリー…パトゥニーの娘。漆黒美少女神。

ダガムリアル…工匠の神。ドワーフ。

パトニカトル…ヤクスチランの主神。酒の神。

ベンガニー…元ジョウザ侍女で大ベストセラー作家。

五娘…ナンバーズの一人。快速の委員長。

妖狐の村の長老派…結界内の家を用意。

吐心…オコの父。

サリナ…オコの母。

リュナ…オコの上の妹。

(マナ)…オコの下の妹。

御供(ゴクウ)…オコの弟。

転生したら転生してないの俺だけだった

〜レムリア大陸放浪記〜


4-14.祝言(2)


どうなる事かと思ったが、キャーリーはパトゥニーに咎められて帰った。パーサはコンコンに色々説教されている。曰く『侍女とはどうあるべきか?』先先代ボンの妖狐、つまり側近の侍女として生涯仕えた彼女が、『主への心からの敬愛と男女の情愛は区別しなくてはならない』とかくどくど、いや懇々とか(コンコンだけに)説教していた。先先代は大東の陰謀により男としての機能を失った主と添い遂げただけに、w主が喪失感でたまらなくなって泣き叫ぶ時も、ずっと抱きしめて慰め続けたと言う。最初は嫌々聞いていたパーサも黙って聞いている。いつの間にかオコも加わってコンコンの言葉に頷いていた。

ラン子は俺に頭を撫でられながら眠っている。

この女性陣の覚悟に比べて、俺の頼りなさはどうだ。俺は改めてオコと家族を守っていく決意を新たにした。


夕方になって結婚式の準備が里人総出で行われる。ベンガニーが後で聞いたら悔しがるだろうな。と思ったので、パーサにこの式の次第を記録させ、写真並みに正確なスケッチも描かせた。

里の人々にはサリナの遠縁の娘として度々里を訪れていたオコが、ペンジクの商人ユーラ(ウラナと言う名もベンガニーに知られるのは危険なので偽名の偽名)と結婚する事になり、唯一の親族であるサリナの元で式を挙げる事を伝えた。


里の人々はお祭りが大好きで、(ユーラ)からも支度金がたんまり出たので、急な話だったが喜んで協力してくれた。

花嫁なのにオコは甲斐甲斐しく働き、収穫前のためまだ流石に普及していないダルジーン紅茶を振舞った。家族には特別にカルダモン茶を淹れていた。

「美味しいわね。だけど…」

リュナが呟く。

「口に合わなかった?うちでもラン子はあんまり好きじゃないから子供には」

「子供じゃないもん。そうじゃなくて、この香り、どっかで嗅いだ気が」

「どこで?お前そんなに鼻が利いたっけ?」

「いつもお父さんが畑仕事から帰ってくる時、この子が一番早く気付くのよ。お父さんの匂いって」


「あ!思い出した。袖沼だ。あそこの周りに同じ匂いの草が生えてるよ!」

俺は着替えに入っていたので、パーサにひとっ走り行ってきて貰った。パーサはあっという間に一束の草を積んで持ってきた。

「お帰り。パーサさん、すっごく足が速いねえ」

御供が感嘆して、後で走りのコツをパーサに聞いていた。御供が後に『韋駄天の』とふたつ名で呼ばれたのは…いや寄り道は止めよう。


「カルダモンだわ、めちゃんこ群生しとる」

まさかこんな冷涼な場所に!

「吐心さん、お宝です!」

カルダモンの末端価格を聞いて驚いた吐心は興奮していた。この自生の種苗を栽培して、吐心は薬草農園を作り、この事でやがて来るペンジクの茶商団と話を有利に進めて、この地域での"聖狐天茶店"の独占経営権(フランチャイズ)を得たのは、なんと少女のリュナだった。彼女の成り上がり人生の始まりである。


閑話休題。

日が落ちてきて提灯に灯が入り、式が始まる。

その時、雲ひとつない夕焼けのソロから細かい雨が降ってきた。やばい中止か?

「大丈夫ですじゃ。10分程で止みます。里の者はこれを"狐の嫁入り"と呼んどります」

俺はなんだか感動して涙ぐんでしまった。

「吉兆だな」

「へえ。妖狐達からの贈り物ですわ」


里の外れから高提灯がゆらゆら列をなしてやってくる。花嫁行列だ。里人は古式に倣って、全員狐の面を着けている。

笙の様な単純な音階が鳴っている。あと鼓そっくりの太鼓の音。

列が到着すると、輿からオコが降りてくる。

ちょっと服のデザインが違うが、これは白無垢と言って差し支えあるまい。そして頭には角隠しそっくりの白い布を巻いている。

「美しい」

「ありがとう。頑張ってみた」


これは妖魔の里の伝統花嫁衣装ではなくて、コンコンが俺の為にイナリさんから一生懸命聞き出した日本の花嫁装束なのだった。この後今夜の花嫁行列と衣裳は、悔しがったベンガニーの求めで再現され(パーサの記録が大変役立った)、里の娘達も結婚の時はこの形式で式を挙げるのが一般化した。挙式される時は近隣からも多くの見物人が集まり、妖魔の里の観光資源となった。

さらにここで式を挙げるのは、近隣のみならず東レムリアの娘達の憧れ(当然ベンガニーの妖魔の里の結婚を題材にした小説に刺激されている)となり、リュナは後に立派な宿泊設備も備えた

「総合結婚式リゾート。妖狐殿」を作り上げた。


「では、神官の前で結婚の誓いを」

神官は長老が兼務していたが、この夜は違った。

里人が見た事もない臈たけた婦人が進み出る。

コンコンが無理をして本来の姿になってくれたのである。長老が厳かに告げる。

「先先代妖狐様であらせられる」

里人は驚嘆して平伏した。無理もない

「妖狐を生むのがこの里の使命」

と小さい時から言い聞かされている。


「では誓いの言葉を」

先先代(コンコン)が告げる。妖狐の里に伝わる結婚の誓いの祝詞。

ではなかった。オコはニヤッと笑うと

「末永く我が夫と添い遂げます!」

火渡り(ゲヘナ)の儀式の時のオコの言葉だ。主上の部分は言い換えてはいるが。

俺は胸が一杯になり、ちょっと声が裏返ってしまったが、

「末永く我が妻と添い遂げようぞ!」

と返した。これも定番となったそうだ。

「ご主人、ちょっと声が裏返る感じで」

とか式場の係が指導しているそうで、これは恥ずかしい。


この言葉を合図に、俺は里人への感謝の意を伝える為に、花火の魔法を使った。パナに教えたよりは単純な、火柱が何本も上がるものだが、金屏風の様に新郎新婦が映えて美しい演出だ。里人は大喜びだった。魔術の才能が一番あったサリナに、この魔法を教えたので、式のクライマックスはいつもこれになった。


わっ!と言う大歓声と共に、拍手が巻き起こった。記録係を務めていたパーサも拍手している。泣いてるなあ、自動式侍女人形(オートマタ)

一番後ろの空に、巨大な四柱の神々。

シバヤン、また新しい魔術具を作ったな。

もし誰かが振り返ったら、パニックになりそうだが、シバヤンの事だ。どうせ我々にしか見えない様な仕掛けなのだろう。

神々も拍手している。キャーリーは悔しそうなのかと思ったが、やはり乙女だ。素晴らしい式に心を奪われている様子だ。


「この日の事は予言されていたのだ。何となれば、メグル殿。今日そなたが結婚式を挙げられるのは、この地だけだからな」

シバヤンが俺たちだけに聞こえる声で言う。

何の事か判らなかったが、ハッと気がついた。

レムリアの成人は15歳である。

そして成人していないと結婚は認められない。

だが、妖狐の里では、妖狐様自身が12歳で成人するので、里人も12歳を成人としている。

さっきリュナが

「もう子供じゃないもん」

と言ったのは、背伸びして言ったのではなかったのだ。オコはもう15歳だが、俺が15歳になるのにはまだ数ヶ月ある。

「妖狐の里の法に於いて、二人の結婚は正式に認められた」

先先代(コンコン)が厳かに宣言し、式は終わった。


新婚初夜?そんなもんなかったよ。

式の後の宴で、オコは一晩中踊ってるし、俺はサリナさんにさっきの花火の魔法をずっと教えてたからね。おかげで失敗の花火が変な方向に上がるたびに、みんな大笑いさ。


––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––


いや良い最終回だった(違う!)

切り札の結婚式を使っちまいました。

あとは出産だけですが、その間に

ダガムリアルを捜索

マーリンを説得

エルロンを救出

オルフェの説得

その他山の様なエピソードが挟まりますので、

よろしくお付き合い下さい。

読んでいただきありがとうございます。

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