4-7.創造
第4部の主な登場人物
『旅の仲間』
メグル(ウラナ)…主人公。元ボン76世(未)。旅行家志望。
オコ…メグルの婚約者。自称妻の元妖狐。弱者の味方で直情的。
コンコン…先先代妖狐。子狐と伎芸天女の童女に憑依できる。
ラン子…翼獅子。ラン(獅子)とヘレン(白虎)のライガー。
パーサ…元八娘2号。名古屋弁美少女。自称第二夫人。
『全編通じて登場する人(神)』
ヌナムニエル…本編クエストの依頼者。エルロンが不在の為引退出来ず、メグルに泣きつく。
エルロン…元はアッチラの主神だったが、ギルガメシュ(エノキド)に罪を問われ、冥界に投獄される。ところがアンゴルモア大王の孫イズがイザン朝の主神とした為、ヌナムニエルが引退出来ず、メグルが釈放のクエストを請け負う。
ニンニン…冥界に住むエルロンの妻。
ナント…エルロンの息子。月の神。
エノキド…ギルガメシュを名乗って人類の代表としてエルロンを冥界に投獄する。
現在は妻メラッサと共に、世界の果ての宿屋を経営。
マーリン…大魔法使い。人間の代表として、冥界のエルロンの牢獄の鍵を預かる。
メル…暴風の魔女メルハバ。多くの被害をもたらし、師匠のマーリンは困っている。
イマー…冥界の王。
オルフェ…元ヤクスチラン第二王子ヴァニル。婚約者のチョコラトルを冥界から救出に行く。
シバヤン…南レムリア最高神の一人。
パトゥニー…シバヤンの妻。
サンディ…シバヤンの第二の妻。
キャーリー…パトゥニーの娘。漆黒美少女神。
ダガムリアル…工匠の神。ドワーフ。
パトニカトル…ヤクスチランの主神。酒の神。
ベンガニー…元ジョウザ侍女で大ベストセラー作家。
五娘…ナンバーズの一人。快速の委員長。
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
4-7.創造
「作る?ってどう言う事だよ。神なんて勝手に作れないだろ?」
「メグルとオコが初めてシバヤン様に会わはった時、パトゥニー様が早速神様のギルドに勧誘してましたやん。どうなったら神様になる言う基準なんて、誰も決められへんのやで」
「そりゃそうだけど、俺たちは信者に祭り上げられて神様になっちゃったんだろ?今回は信者もいない神をいきなり作るって話だ。無理だろ」
神々というのは親から生まれない場合もある。
例えばサンディは大魔王アスラに対抗して、南レムリアの神々が作り上げた。製作の中心はシバヤンである。破壊の神から創造の神へ。これがシバヤンの転機となった。
キャーリーはパトゥニーの肌が黄金色になる時に取り去られた老廃物から出来た。
どちらも元々は信者がいなかった。
しかし、ある程度名前が売れて来て
『おっ?この神さん、いいんじゃないか?祠作るか』
となって、信者が増えていく。レムリアの神々は信者次第なところがある。
「確かにこれは初めてな試みだが。ただ真っさらな神さを作るのに比べれば、今度は楽だがね。モデルがおるでね」
「オコをモデルに聖狐天を作るって事か?」
オコの個性を移すって事か。八娘みたいにクローン分裂させるのか?それは許せないな。
「そんな事してオコのオリジナルな個性が少しでも損なわれたら、俺はシバヤンでも許さないぞ」
「うーん…。どうやろなぁ。その辺はパトゥニー様の領域になるやろな。わてがやったオコの個性の移植は単純に移すだけど、オコにはそのまま個性を残す。しかも株分けみたいに新しい聖孤天にオコの個性を移すって、どうやるのか見当も付かへんわ」
一番問題なのはこの誰もやった事のない画期的な神の創造をやりたいのは”シバヤンたちペンジクの神々”ではなく、”俺たちの都合”なところだ。レムリアには色々な神々がおり、特に大東の天帝。醍醐教の教祖醍醐とは、決して良好な関係を築いているとは言い難い面がある。
同じく微妙な関係を保っていたバクロンの主神エルロンの沈黙の理由。つまりエルロンが獄に繋がれているためヌナムニエルとの合一が出来ず、ずっと代理神を務めていたヌナムニエルの悲鳴。依頼を受けて冥界まで旅した俺たちの苦労。
「まあ、ペンジクの神々はんからしてみれば、
『知った事じゃない』やわなぁ」
「なんかさ、もっと口先が上手くなって嘘も平気で吐けるような魔法とか、ないのかな?」
いや、そんなオコ見たくないぞ。昔話に良くある
「悪い魔女がヒロインに化けて主人公を誘惑する」
って筋書きも、ほとんど主人公に看破される。
世界で一番オコを愛してるのが俺。
多分メルがその次だろうし、長い事会わない内に、理想のオコ像にどんどん昇華しているだろう。偽物じゃあ絶対にバレる。
バレてメルが幻滅して、聖孤天から離れてそれで終わり。ならそれでいいけど、一回言葉を交わしただけで(正確にはもう一回オコが声をかけたけど)恋に落ちてしまう様な思い入れの激しい子だ。自暴自棄になって何をやらかすか、考えるだけでも恐ろしい。しかも酒乱だ。
「知ったこっちゃない言っても、やっぱシバヤン様にも責任がある事だでよ。独鈷杵投げつけんかったら、メルはちょっとおそぎゃあ魔女程度だったで」
「あれが両側にビュンと刃を伸ばすと、生きた心地がしまへんわ」
しかも今後三鈷杵に進化する可能性があり、そうなるとレムリアどころかこの星を破壊する事も容易いらしい。一世を風靡した漫画・アニメに、一撃で地球を割ってしまう無邪気な女の子がいたが、メルは性格が色々屈折しており、おまけに酒乱。こんな恐ろしい娘に、最強の武具を持たせてしまった元凶はやはりシバヤンの癇癪。という事になるだろう。
「ほんだでこの話のケツは、シバヤン様に持って行くのがスジなんだわ」
独鈷杵は、ローランド川の網を破り、地底の滝壺に落ち、何故かジョウザに届けられた。この話は一つの小説に出来そうだが、まだ道筋は解明されていない。神界のローランド川から地底の滝壺に。そこから誰が、どうやって現世に持ち出し、なおかつジョウザの宮殿への供物を備える祭壇に捧げたか?或いは商人がジョウザに売ったのか?
とにかく一見普通の魔法具にしか見えないこの独鈷杵が暴風の魔女メルハバの手に入ったのは、決して偶然ではない気がする。
「やっぱりシバヤン様に任せるしかないのかしらね」
「あのね、ラン子ちょっとじめんにおりたいの」
「どうした?おしっこか?」
「もうメグルったら、どうしてそんなに無神経なの?ラン子ちゃんだって女の子なのよ!」
「あ、悪りい。俺がしばらく暮らしてた関西という所では、女の子同士でもちょっとでも長く席外すと『どうしたん?うんこしてたん』って聞くところだったんで」
「そんな奴はおらんやろ、チッチキチー」
とコンコンが突っ込む。
「おしっこはいいの。とびながらできるから」
『白虎が飛ぶと虹を生ず』
という伝説の真相を知ってしまったのだろうか、俺。
ラン子は地上に降りた。標高3000mくらいだろうか?高原だ。
「ラン子がかあさまのところをはなれて、あるじのところにいくとき、てんていさまからいわれたことがあるの。
『メグル殿にしっかりお仕えしなさい。でもメグル殿が新しい神を作ろうとしたら、メグル殿をパクッと食べちゃっていいよ』って。ラン子はあるじをたべるのはいやだよう」
子猫姿のラン子はシクシク泣き始めた。
あかん、これは神々のパワーバランスの問題や。
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