4-6.パーサの提案
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
4-6.パーサの提案
「最初にごめんしとくわ。あの場では三元さやウルスラさがおったで、あんまはっきり言えんかったでな。まずは話を聞いてちょ。乗るかどうかはそれからでいいで」
なるほどなあ。だからさっきパー子との通信でシバヤンの名を出さなかったのか。
「相変わらずあんたは藪から棒やなあ。まあ記憶装置はメグルはんが一番優秀やけど、演算装置はあんたが一番速いよって、心配はしとらんけどな」
ちょっと悔しいがコンコンの言う通りだ。
「じゃあ聞こうか」
俺たちはラン子に乗って、真っ直ぐ南下していた。この辺からだと大山脈を超えて直接ナランダーの上空に行ける。
最近のラン子は旅客機の飛ぶ、高度1万mくらいは楽に飛べる。空気も薄く、マイナス50度位になるので、介護椅子の中でオコが気密の結界を張っている。コンコンも膝の上だ。
パーサはいつもの様にラン子の首の所に座り、念話で話しかける。
「オコ姉さんはでら正直でいい人だけども、暴風の魔女を騙し通して、おとなしさせて、マーリンさを安堵させる演技力があるとは思えんのだわ」
「それは自分が一番良く分かってるわよ」
「メルはオコを慕ってるから、姿を現しても大丈夫かな?と思ったのだけど…。だって女同士だろ?」
「あきまへん。あんさん、道ならぬ恋の恐ろしさを判ってないな。例えばや。アルディンはんがパナはんに惚れた結果どないなった?」
「一生連れ添う事になった」
「せやろ?じゃあもし。もしやで、アルディンはんがメグルに懸想したとしたら、どうや?」
「なになに?」
パーサ、メモしない。
「気持ち悪いから俺は逃げるぞ」
「追われるやろな」
「パー子は相思相愛だったから、周りも応援したわね。だから上手く行った」
「アルディンはんは誰にも相談できへん。まあバクロンの上流階級なら衆道に理解あるお人もおられましょう。だけど皇太子はあかん。恋を貫こう思たら、全てを捨てんとあきまへん」
「アルディンはそうした訳だが」
「それで、相手が気持ち悪いて受け入れんかったら?」
「まあ、つきまとい(ストーカー)だろうな」
「甘いでっせ。うちなら無理心中や」
「オコはどう思っとりゃあすの、メルと一生添い遂げるとか?」
「魔術の暴走さえ無ければ可愛い子で真っ直ぐでいいなと思うけど、添い遂げるとかあり得ないな。妖狐族の基本原則は、子孫繁栄。子作りだから」
「お前俺が大東にチョッキンされても、添い遂げるとか言ってたじゃん」
「ねえ、ちょっきんってなに?」
「お金を貯める事だがね。ラン子ちゃん、よそ見すると山にぶつかるが!」
「まああん時はそう思ってたわよ。それがボン様に仕える妖狐だから。でも逃げる事が何とか出来て、メグルにちゃんと付いてるなら」
付いてる言うな!
「アタシはメグルと恋に生きる。そうだよね?」
「はい、その通り」
「メグルもアタシと恋に生きる」
「御意」
「そして沢山子供を作る」
「はい、いつか必ず」
「ばんばんばかすか作る!」
「頑張りやす」
「そんなアタシに、メルに少しでも心を割いてやる余裕はない!」
「と言う訳でメルの失恋は決定な訳や。そしたらメルは?」
「無理心中?」
「世界とな」
いかん、戦慄が足元から足の付け根に這い上がり、色々伴って縮み上がった。
メルが時々暴走するのは、亡きオコを想って深酒するからだ。一瞬観客席に投げ出される俺とオコを見てしまっただけに、諦めきれない思いだろう。
「メグルにとってのタンジンはんと同じやな」
「そうだな。タンジンはまさか俺に懸想はして無かっただろうが」
「その発想は無かったがね。孫の様に可愛がってきた思いがショタ愛に。このカプリングはありかもしれんがね」
だからパーサ、メモは。
「確かに、俺を文殊菩薩。いや阿弥陀如来に仕立てようというタンジンの情熱は、ほとんど恋愛だよな」
「せやな。信心とは、神々と恋愛する事やさかいな。メグルが、タンジンはんから逃げる様に、オコはメルはんから逃げる。同性を愛する心を持ってない者の宿命や」
「オコ姉さんはメルにとっては死人じゃにゃあとだちかん。だけどもが、メルをおとなしさせるには、聖狐天の導きが要る」
「だから、降霊された事にして、オコが聖狐天として姿を顕す。と言うのが俺が描いた絵だ」
「だーかーらー。話を振り出しに戻すわ。この走る正直者は、メルを騙す名演技なんか絶対出来せん」
「断言されると傷つくけど。でもその通りだわ」
「まあ他ならぬナンバーズの所見やしなあ」
番号付き自動侍女人形とは、シバヤンの命を受け、各地に潜入して色々調べるプロだ。人格認定は間違う事がない。
「だとしても、何でナランダーに向かうんだよ」
「そりゃオコ姉さんに出来せんなら、代役立てるしかあらすか」
「そんな名女優がいたっけ?」
パトゥニー、サンディ、キャーリー。
キャラが違う。
五娘。
真面目過ぎる。しかも五娘に頼むのに、わざわざペンジクまで行かなくてもいい。
ナンバーズの一娘、二娘、三娘、四娘、六娘、七娘。
顔しか知らんけど、そもそも嘘がつけないナンバーズにこの役は無理だ。
「そんな女優はシバヤンファミリーには居ないだろ?」
「そんなもん、居らなければ作りゃいいがね」
読んでいただきありがとうございます。
気に入られましたら、
ブックマーク登録、★評価頂けるとありがたいです。




