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4-5.完璧な作戦

転生したら転生してないの俺だけだった

〜レムリア大陸放浪記〜


4-5.完璧な作戦


歴代の弟子達を全部降霊する訳にはいかないので、集会場の様な所を紹介して貰った。老師を祀った廟は大東の各地にあるのだが、ここで集会をすると、師に気取られてしまう。

そこで、弟子達を祀った場所で集まる事にしているのだが、師が隠遁しておられる場所に余り近いのも、バレる可能性がある。そこで、一番遠くで、弟子の廟がある場所。と言う事になると、第五の弟子三元の廟になるらしい。大体年に一度師の誕生日の前に集まって祝賀会の相談をするのだそうだ。

今年はもう終わっており、臨時の召集である。


「でどこなんです?三元さんの廟は?」

「ここだよ」

三元が地図を指差す。ジョウザの北東。まあ覚悟はしていたが、やっぱりそこは大東の領内だ。

「ここは妾が命を落とした場所。この地を大東の兵が都犬の奴らから奪還した後、ここに廟を建てられたのじゃ」

何だか重い場所だな。

「気にせずともよい。今は大東からの植民も進み、小さいながら栄えておる」

都犬とは北方系の騎馬遊牧民で、三元さんが現役の頃は度々大東を脅かしたが、後にアンゴルモア大王の大東征服に抵抗したため滅亡している。

ここなら首都の中京からはかなり遠い辺境の地なので、皇帝の目も余り届かないのではないか?


「で、その後の段取りは?」

「今までこの集会に現役の弟子を呼んだことはない。まず呼んでいいかを皆に聞く。了承が得られれば、そのメルハバなる者を呼ぶ」

メル来るかなあ?

「聖狐天殿が顕れたというフェイク情報を流す。さすれば誘蛾灯に虫が集う様にやってくるであろうよ」

メル虫扱い哀れ。

「そこで情報は一部間違いがあり、実は高名なる降霊師の術で呼んだ神仙の霊であったとメルに告げる」

「神仙の霊?」

「現世では既に寿命が尽きた者は冥界に行くのが定めであるが、人々の尊崇を集めたり、修行を積み徳の高い者は、神仙に挙げられる。そこにいる妖狐の始祖殿がその類じゃ。聖狐天も今巷では大きな信仰を集めていると聞く。残念ながら既に命を落としておられたとしても、神仙に上がるのは当然であろう」


「神仙なんて呼べませんよ」

ウルスラが口を挟む。

「だからこれは偽降霊術じゃ」

「ウルスラ?そう言うのはプロのプライドが許さない?」

俺は心配した。ここがこの作戦の中心だから。

「いーや。あたしはプロだもの。たんまりお金貰えるなら狂言でも何でもやるよ」

「では問題ないな。後は聖狐天に任せればよい」


三元さんは、直球でものを言うオコを気に入っていた。そしてその後の自己紹介で、オコが一部で聖狐天と言われているのを知り、ちょっと感動していた。三元さんは、流行の聖狐天に興味を持ち、調べるうちその正直で真っ直ぐな行状の逸話エピソードに感心し(殆どはオコとは無関係の創作だが)、部下に命じて似姿ブロマイド三社札スッテカーを買わせたほどのガチファンだった。


「絵師に命じて、もっと精巧な似姿を書かせよう。本当の聖狐天殿は格段に見目麗しい」

という提案は謹んでお断りさせていただいた。そんなモノが出回っては、旅行がしずらくて堪らない。その代り俺がバクロンで学んだ土魔法の彫刻術で(ノヅリ師はこんな技術まで習得していた)三元さん限定の聖狐天の偶像フィギュアを作ってやった。たった一人のファン限定サービスである。三元さんは大いに喜び、家宝にすると感涙していた。


「それで、まあメルがのこのこやって来て、予定通り偽降霊のオコと再会したとしよう。そこでどうする?」

「今後絶対に師の教えに逆らわないと約束させる。これは命令と言うより呪で縛るという強いものでないと駄目だろうな」

「それが上手く行ったら?」

「老師の住処を訪れ、事の次第を申し上げる。師はさぞや安堵されるであろう。そこでそちらが望むエルロンの牢獄の鍵を解錠してもらう」


「完璧だな!」

「何が完璧よ。私がそんな大層な神仙様の役を出来るわけないじゃない」

そうだよな。踊りの名手のオコだが、芝居をするのは決して上手くはない。あ、これは演劇で女優をやる。と言う意味ではなく、日常生活での小芝居をやるのが致命的に下手なのだ。かつてジョウザの侍女達に妊娠を疑われた時(疑う様に仕向けたのだが)弁解するオコの芝居が余りにも棒読みで、却って妙なリアリティを生んだのは結果的には成功だったのだが、今回はそうは行かない。


「それについては、アシがちょと考えとる事があるんだわ。ちょっと待っとりゃあて」

パーサが精神感応で手空きのナンバーズを呼ぶ。幸い俺たちも顔見知りの五娘が応答した。

「パーサ、お久しぶり」

「久しぶり。うーにゃん実は頼みが、え?パー子?元気に旅立ったよ。もう熱々だでかんわ。いやそんな話より、頼みがあるんだわ」

「ちょっとはこっちに顔出しなさいよ。今どこ?」

「大分遠いんだわ。で、込み入った話だもんで、ご主人様たち連れて行ってお願ゃあしてゃあ事があるんだけど大四神様は今ご在宅ぜゃあたくかなぁ」

四大神とはおなじみのシバヤン、パトゥニー、サンディ、キャーリーである(第2部参照)。

「大丈夫だと思うよ。さっきも主人様が『ああ暇だ。なんかクリエイティブしないと脳が腐りそうだ』とか言っておられた。クリエイティブって何だかしらないけど」

「じゃあ丁度いい。主人様にそのクリエイティブたらをお願いせんとかんもんで」


パーサなんの事だ?全然話が見えないんだけど。

パーサは優秀な自動式侍女人形なんだけど、優秀過ぎて独断で動く事がある。もちろん良かれと思っての行動だし、その読みはまず外れる事がないので結果オーライになるんだけど。バクロンでも場内の調査を依頼されて、俺たちが知らないアルディンというキーパーソンと連絡を取っている。説明一切なしで動くので、ちょっと心臓に悪いのだ。サッカーの事は余り良く知らないが、ひと昔前に”リベロ”と言う言葉が盛んに用いられた事がある。本来は守備側だが、一瞬にして自分の判断で攻撃に参加する選手の事らしい。そう言う意味ではパーサは我がチームの皇帝ベッケンバウアーなのだが、臣下はちょっと大変。


三元さんとは廟で再会する約束をした。ナンバーズ同士の様な密な連絡は取れないが、今後三元さんには、コンコンから白虎を通じて廟に置手紙を届けて貰う方法で連絡する。

三元さんもこれからまず歴代の弟子たちに説明して了承を貰わねばならない。先回の誕生会で、老師が弟子たちの贈り物に一向に関心を持たなかったことに、全員かなり落ち込んでいた様なので、多分皆賛同してくれるだろうとの事だった。

ウルスラには、一旦待って居て欲しい。必ず迎えに行くので。と告げ、ウルスラは降霊を解き、三元さんは消えた。


「さて、俺たちはシバヤンの所に向かうのかな?どういう事か、パーサ、説明してくれるよね?」

「道道話すで」

読んでいただきありがとうございます。

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