4-3.イタコ
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
4-3.イタコ
「いやいや、マーリンは大昔に死んでるでしょ?それで転生した人を次々に弟子にして、その人を使って人類を教え導いているという」
「まあ世間ではそう言われてます。ただこっちは死者をを扱う商売なんで、呼び出そうとしても出て来なければ、あぁこの人生きてるんだな。って事になるんですよ」
「呼び出すって、そんなに百発百中なんですか?」
「プロですから。例えばね、マーリンの弟子に三元と言う人がいます。5回め位の転生体でしたかね。この人は大東人だったんですが、ちゃんと降霊した事あるんですよ」
「じゃあその人呼んで頂けますか?」
「分かりました。銅貨500枚ですが良いですか?バクロンのフィル銅貨?結構です。ではイタコを呼びますので、しばらくお待ちください」
イタコはイタコって言うのか。ちょっとびっくり。
「ウルスラ。ウルスラ!」
「居るわよ!なに?」
「お客さんだよ。バクロン銅貨500枚の」
「ひゅ〜それは景気がいい。でも面倒なのは嫌よ。こないだも先代の金庫の鍵のありかとかで先代呼んだら、あんな息子にはやらん。あんたにやるって言われて、断ったのにあたしがこっそり聞いた事になってて命狙われたんだから」
簡単な天幕で仕切られてるだけなので、まる聞こえである。
え?イタコって死者が憑依するんじゃないの?レムリアのイタコは死者と会話出来るのか?
なんか思っていたのと大分違う。
奥の天幕が開いてイタコが出てきた。
痛いオコ痛いって、俺まだ何も言ってないじゃないか。
お察しの通り、出て来たのは凄い美人。
ちょっとメルを思い出させるブロンド美人だが、歳はもうちょっと上。20代の真ん中あたりか?
スタイルは凄くいい。いわゆるボンキュッボンである。
オコとパーサが唇を噛み締めている。
張り合わんでも良いのに。
「そちらの坊やがお客さん?」
「はい、ウラナと言います」
「でさ、500枚も出して誰を呼びたいんだよ」
「本当はマーリンを呼びたいんだけど」
「帰ってくれ」
「いやそれはさっきやった。で、五代目だかの転生者で弟子の三元とかいう人に色々マーリンの事を聞きたいと思ってね」
「そいつなら一回呼んだ事がある。大東の聖者とか言うちょっとメンドクサイ奴だ。あんた、銅貨500ってべらぼうだと思ってるかも知れないけどさ。うちの店長はぼったくってないよ。三元は1000年ほど前の人だからね」
イタコの能力にもよるが、普通は呼び出せるのは300年位前の死者までで、1000年も前の霊を呼び出せるのはこのウルスラくらいらしい。
だから技能手当と指名料込みでこの値段になるという事なのだ。
「ところで、あんたは大東語話せるのかい?通訳付きだと、あと250要るよ」
「大丈夫です。話せますよ」
オコは宮殿で大東の来客もあるので、一応話せる様になっている。出自が大東の妖狐のコンコンはもちろんだし、パーサも各国語はプログラムされている。ラン子が育った天帝の庭の公用語は大東語だ。俺はもちろん外国人だと気取られない程度には話せる。
「ふーん…。じゃあ呼んでみようかね。ちょっと癖のある難しい人だから、怒らせない様にね」
「あの…その前に、一つ聞きたい事があるんですけど。死んだ人の霊を呼び出すって、ウルスラさんに憑依するって事じゃないんですか?」
「違うよ。そう言うおろし方もあるけど、ここでは誰もやらない。ここでは霊がそのまま現れる。霊感が弱い人だと声だけが聞こえたり、ぼんやりした煙みたいに見えるけど。強い人にははっきり…って、なんだいそこの狐は現世に留まってる霊じゃないか!銀貨1枚で、あたしが祓ってやろうか?」
つまり日本の恐山のイタコと言うより、欧米の降霊術に近いわけだな。コンコンの除霊はお断りして、いよいよ霊を呼んで頂く事になった。
特に呪文もなく、俺たちの前に煙の様なものが立ち上り、だんだん輪郭がはっきりしてきた。
小柄だ。そして髷?を頭上に高く一本盛り上げている。そして顔は
少女?いや結構年齢は行っているのかもしれないが、シワなどはない。顔の輪郭。目鼻。これは?
ミーじゃないか!いやUFO!の人じゃなく、某有名外国原作アニメのキャラ。ミムラ姉さんの妹のガミガミキャラにそっくりだ。
「要件」
「はい?」
「要件を述べよと申しておる。神仙の朋輩と骨牌を楽しみ、まさに四暗刻単騎が天牌しおる折に呼び出されたのじゃ。つまらぬ要件だと許さぬぞ!」
「それは申し訳ないことでした」
俺は丁重に詫びた。俺自身はほとんど麻雀はしなかったが、この満貫の名前くらいは知っている。
ウルスラがすかさずお供えの御神酒とスルメを差し出す。機嫌を直した三元は
「まあ良い。待ち牌はすでに河に2枚出ておったでな。それで何を聞きたい?」
と俺たちの目の奥まで覗き込む様に聞く。
「2つあります。まずマーリン様にお会いする方法があれば」
「ないな。そちらも既に知っておろうが、師は既に亡くなっているが、霊魂は冥界にはない。生前妾はタオ教の行者だったのじゃが、その教えでいえば、既に仙化されておられる」
仙人になったという事か。
「ましてや師の属性は本来隠者。そう言う方が仙化されたのだから、人間などと話すことは適わぬ」
二重に引きこもった存在になっているわけか?
「でも、そう言う人ってどこかでひっそり暮らしてて、弟子をとったり、人間界を導いたりしないんじゃないですか?」
始球式で140km/h出しちゃったアイドルみたいな、相変わらずのオコの直球。しかし三元は特に怒らず、却ってオコに興味を持った様だった。
「そこなんじゃな。妾が師の元で修行していた折にも、そこは謎じゃった。まあマーリン師の出自を考えれば、黙って静観できなくなる熱いものがそうさせるのじゃろうが」
英雄神イーオンの事だな。オコはさらに畳み込む。
「ならば、私たちの窮状をお救い頂けないものでしょうか?」
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