冥界の旅2(コリナンクリン)
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
3-36.冥界の旅2(コリナンクリン)
※この物語は仮想世界を舞台にしたフィクションです。登場する人物、地名、神々は架空のものであり、現実世界・歴史・文化・宗教とは一切関係ありません※
すぐにでもチョコラトルの元に行きたがるオルフェをみんなで止める。
「やめときゃあ。今行っても勝ち目はにゃあて」
「変にこじれると、修復不可能になるのが男女の縁どすえ」
「パトニカトルと皇帝がもう、パトニカトルの手元にいた乙女達(以下パ女)を親元に返したか?そして魂がこっちに来てる娘達(以下頑女)の親たちがどう反応したか?それを見極めてからでも遅くない」
「かれをしりおのれをしればひゃくせんあやうからず。かあさまがおしえてくれた」
ラン子が難しい事を言う。孫子か。英才教育受けてたんだな。
「己はまあ決心が固いのだろうけど、彼の状況はどうなのよ?ここにいて『パ女親が頑女親が』って、詳細判らないでしょ?」
心情的にオルフェに共感しまくってるオコが言う。オコ的には当たって砕けろ路線だ。
それなんだよなあ…。いっぺんヤクスチランに戻るか?
俺たちがイーマ様の前を一旦辞し、控室で揉めていると
「うわー懐かしいなあ。何万年ぶりだろ」
と言う声。見れば17-8歳ぐらいの見目良き乙女にて、黒一色の旅衣。オルフェと同じつば広の帽子を冠りしが、にこやかに笑ってゐる(何故古文調なのかは不明)。小柄で元気!と言う感じ。これで何万歳か。神々ってバケモンだな。
「お師匠様!」
「オルフェ君、いい加減帰って来てくれんと仕事が進まなくて困るんだよ。なので私が来た」
なんかドヤ顔で『大丈夫だ』みたいに言うけど、足踏ん張って腰に手を当ててる姿は、
「SUGOI DEKAI」
のTシャツを着ている後輩ちゃんの様だ。
「オルフェ君のお師匠って、コリナンクリン様ですね?お初にお目にかかります。旅行家のウラナと申します」
「おっと初めまして。コリナンクリンだよ。クリンって呼んでね。実はイーマ君に頼まれてさ。ほらボク達の仕事って、基本ナビゲーターだから」
「お師匠様はイーマ様が初めて冥界に切り開いた時、道案内をしたワタリガラスなんですよ」
それは凄いキャリアだなぁ。俺は目の前の一見巨乳JDが、シバヤン達より歳上。と言う事実に付いて行けないでいた。
「オルフェ君は期待の新人なんだけど、最近は福利厚生悪いとブラック企業って言われちゃうからね。でも言うても新人だからさ。有給休暇はあと半年しかない。手伝ってあげるから、ちゃっちゃと終わらせちゃおうよ」
コリナンクリンは、ヤクスチランでの諜報活動を受け持ってくれる事になった。
ヤクスチランでも野生のワタリガラスは見かけるので、配下のワタリガラスがパ女達が戻った時の頑女親達の動向を知らせてくれるのだ。
「一応予備調査したんだけど、パトニカトルさんがパ女を返すのが明後日。それから一月くらい様子を見るのがベターだろうな」
イマー様もう俺たちに会う前に手を打ってたのか。流石だなあ。
皇帝は表向きノータッチだけど、神官に手を回して『この度の乙女達の帰還はパトニカトル様のご慈悲、今回残念ながら戻って来なかった乙女達も、パトニカトル様に必死に祈れば戻ってくるかも』と言う感じで浸透させる計画。との事。まあ生贄行為が間違っていた。とは公式には認められないので、皇帝としてはこれがギリギリだな。
「じゃ、ボクはイマーさんに挨拶してくるんで。オルフェ君、一月って短いぜ。しっかり彼女さんへの口説き文句、考えておきなよハッハッハ」
クリン社長は、"シュタッ!"と音がしそうな勢いでオルフェを連れて退室して行った。
新人連れて得意先周りしてる営業マンって感じだ。
「この件は、待つしかないか。その間にもう一つのエルロンの件だが」
面会は3日後に決まった。
鍵が開けば、エルロンは出てくるのだろうか?
もう一度エルロンが何故投獄されているのかを確認したい。
バクロンよりも北にある、当時は小国だったアッチラで、エルロンは主神だった。以下罪状↓
1.ある日美しい乙女ニンニンを見かけたエルロンは、ナンパと言う神としてはあるまじき(しかし各地の神話にこう言う軽い神は多い)行いをする。
2.ニンニンの挑発的な(耳年増だったらしい。ラン子もいるので詳細は省くが、かなりの下ネタ)答えにムラっとしたエルロンは、水車小屋の裏で彼女を強姦し
「ちょお。ラン子ちゃんいるのよ。もうちょっと」
「オコさまだいじょうぶ。うちもそんなかんじ。かあさまがとうさまおそった(きよし師匠逃げて!)」
妊娠したニンニンはやり逃げで認知しないエルロンに絶望して、親子心中した。
「やっぱり女性の敵だわ」
3.生まれた子供ナントが月の神である事を知ったエルロンは、冥界に赴き子供を取り返そうとするが、ニンニンは拒否。イマー様も認めなかった。
「当たり前田の傾奇者。やわ」
4.エルロンは様々な姿に変身し、ニンニンを誘惑して次々と子供を産ませ、その子を身がわりに、ナントを連れ戻る。
「あれあれ、ニンニンさも冥界では誘惑されやぁすか。生まれた子供らあも簡単に渡してまって」
確かにニンニンのイメージは被害者とだけは言えない複雑さがあるな。乙女時代も好奇心強かったみたいだし。冥界では"断れない人妻"と言う感じになってる。
「以上がエルロンの罪状なわけだが、冥界に行ってからは基本イマー様が裁くので、アッチラの町でギルガメシュ(実は現世界の果ての宿屋主人エノキドの偽装)が人間達の代表としてエルロンを断罪し、冥界に投獄した告発は1と2についてだろうな。
「ニンニン様については、余り責めないで欲しいの。彼女は情熱に生きる女性なんだわきっと」
オコ、ベンガニーの
「昼下がりの主婦」
シリーズ読みすぎだって。
「それで、この珍しい投獄された神は当然信者も居らず人々の記憶から消えていくはずが、バクロンを征服したアンゴルモア大王の孫、イズ・アンが、イザン朝の主神に据えてしまった」
「エルロンを選んだのはイズが好色だったから。と言う俗説も有るけど、真面目な人だったらしい。なんでエルロンなんかを?」
「ヌナムニエルはんは、『初代のイズは現実的な性格だったから、統治上主神を選ぶなら口出しして来ない"沈黙の神"を選んだんだろう』て言うてはったわ」
「だいたい考察は以上だな。俺はこの話、なんだか変だと思う。いやイズの気持ちじゃなくて、エルロンの方な。エノキドはエルロンと戦っていない。まあエノキドはギルガメシュのクローンだから、田舎の神のエルロンには負けはしないだろうが、その権威に『へへ〜っ』とひれ伏すほど両者に力の差はない。なんでエルロンは易々と投獄されたんだろう」
この辺の絡んだ糸をほぐさないと、エルロンの説得は難しいだろうな。
でも必ず説得してやる!
じっちゃん(故人:元米農家)の名にかけて。
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