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アンタ、あの子のなんなのさ(2)

転生したら転生してないの俺だけだった

〜レムリア大陸放浪記〜


1-10.アンタ、あの子のなんなのさ(2)


「お食事です」

「なんか侍女どもが五月蝿いので、結界を厳重に、って…ヨウコさん?」

「なによ、なんか変?」

盆を持って入ってきたヨウコは、めちゃくちゃ気合の入った正装をしていた。珍しく薄っすら化粧もしている。

「いやすごい綺麗だなと思って」

「蹴るわよ!」


今日は正装でスカート姿なので足を上げたり出来ずプンスカ怒っている。

「あの子たちが勝手に衣装をきめて、

”頑張って”とか、

”ご武運を”とか、

”今日は大丈夫な日ですか?”とか、

よくわからんことを言いながら無理やり衣装替えさせられた」

ヨウコの権威からも戦闘力からも、断るのは容易いはずだが、化粧までさせるとは満更でもないのか?


「それに、後からお呼びする方々が目上の方なので、一応礼儀上…」

呼ぶのは一人ではないのか?

「では夕餉の後に呼んで頂こう。その方々は結界を通れるのか?」

「問題ありません」

決まりきった夕餉よりは、今日はちょっと豪華で水牛の肉を乳で煮た羹の他、精がつくギョウジャニンニクの和え物などがある。侍女たちが典膳部に何か余計なことを言ったのか?


さて食後の茶で椀をすすいで飲むと、俺はヨウコを座らせた。ヨウコはいつもの様に隣に座ろうとせず、脇に正座している。

「ではお呼びします」

目の前が淡い光に包まれて、二人の女性が現れた。

目を見張っている俺の前で二人は正式な跪礼をする。


一人はかなりの高齢、もう一人は中年の女性で、よく似ていた。親娘か?高齢の女が口を開く。

「今代にはお初にお目にかかります。妾は初代の妖狐にございます」

凄いな。

前世の記憶と語らうだけでなく、こうして姿を顕現させる事も出来るのか!

俺の思いを察したのか、初代妖狐は微笑む。


「簡単に出来ることではございません。今代のボン様にお会いできるのは、これで最後となります。時間がございません。後はこれなる者に任せますので。今代は稀代の人物とお見かけいたします。不束者ではございますが、どうか今代のこのヨウコを、末永くよろしくお願い申し上げあげます」

これだけ一気に言うと、初代妖狐は消えてしまった。


「ええっ?初代様そりゃあきまへんがな!」

もう一人の女が声をあげる。

「完全にボケてますね」

ヨウコが呆れた様に呟く。

諦めた様に中年の女が口をひらく。


「初代様が顕現しはるには大層な霊力を使いますので、この後百年は眠らはると思います。また今の事態にご理解が付いてきておりはらしまへんので、おかしな事を言わはりましたが、お許しください。わては先先代の妖狐でおます」

なぜか関西弁の女が挨拶する。美人だが、逆らったら怖そうな旅館の女将みたいな迫力がある。


「先先代は私が一番良く相談する方なの。悩みとかも聞いて下さって」

「まあわても若い時分には恋もしましたさかい」

「こ、恋の悩みだけじゃないです!政治の事とかも、教えて頂いてますっ!」

「ふふふ」


この先先代は、史上初めてボンと双子で生まれたのだそうで、俺たちも年子で似た様なものなので、気持ちを解って下さったそうだ。ちなみに今朝まで固く口止めされていたそうだが、チョッキンの事は、先先代から聞かされたとか。


「とにかくえらい難儀なことになってますわなあ…」


京女登場!


読んでいただきありがとうございます。

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