アンタ、あの子のなんなのさ(1)
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
1-9.アンタ、あの子のなんなのさ(1)
その日は一日中考え込んでいた。まあこれからの人生がかかってるからね。
それよりなんだか侍女たちがそわそわしているのが気になる。よもやヨウコが秘密をバラしたりは?しないだろう。信頼できる相談相手がこの娘たち。という事もないだろう。
侍女たちは特に修行中の身ではなく、近在の娘さんである。もちろん信者の家庭の子たちで、花嫁修業を兼ねて住み込みで働いている。
かつてはボンや重臣に見初められて妾に。と言う事もあったらしいが、宗教改革以来クリーンな職場になり、ジョウザで年季奉公を勤め上げるのは結構縁談に有利らしい。
実家も地主とか商家とか、まず裕福な家の出であるので、地元ではお嬢様なのだろうが、まあこれがキャピキャピしている。控えめに言って頭の中お花畑だ。
まあ16歳まで勤めて、お宿下りしてすぐ結婚だから、異性にはめちゃくちゃ興味深々なのである。
で、その妄想の対象は宮殿唯一の若い男である俺と、その専属侍従であるヨウコ。という事になるのだ。
「付き合ってるんだよねえ」
「あれだけ一日中一緒にいれば、情も移るわよ」
「ヨウコ様、主上の身支度の時めちゃくちゃ顔近いもの」
彼女たちの休憩時間の娯楽は、行商の貸本屋が持って来る三文恋愛小説で、ほとんど身分違いの恋がテーマ。ハッピーエンドと悲恋小説、どちらも人気があるらしい。
中でも一人は自分で小説を書き始め、仲間内で回し読みしているらしい。もちろん主役は俺とヨウコだ。
今日は余りに浮わついて仕事にならないので、タンジンが皆を廊下に正座させて説教している。なんか修学旅行の夜を思い出して、悪いけどちょっとなごんだ。
侍女の一人が泣きべそをかきながら茶を持ってきたので、どうしたのだと聞いた。
「ヨウコ様が」
「ヨウコがどうした?」
「ヨウコ様が、今夜の主上の夕餉は一人でお世話するので、早めに休んで良い。と」
「そうか、だが今までもそう言う日はあったろう」
「はい、その度に私たち、いよいよかと…」
「何がいよいよだ」
「主上も間もなく即位されるので、今のうちにヨウコ様との契りを、キャッ!」
なんも反省しとらんなこいつら。
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