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3. 平穏な日々は続かない


ーーーーーーーー

ーーーーー



早いもので、この世界に転生されてから二月ふたつきが過ぎた。



その間にわかったことはたくさんある。



まず、この国は日本ではなく、そもそもここが地球なのかも怪しいということ。



そりゃあファンタジーの世界への脳内耐性は十分にありますから、日本でなくとも地球でなくとも驚きはしませんが、なんと「国」という概念自体がないらしいのだ。



この辺りは「村」のような認識で、ダンデと呼ばれている。



この世界の人々は、生まれた土地でずっと生きていくことになる。つまり、この地の人々は農民として生まれ、農民として死んでいくのだ。



テレビもなければスマホもないし、目の前の現実以外に情報の仕入れ先がないため、他に選択肢がないのかもしれない。



不便に感じるどころか、それはそれで無駄に悩むことがなさそうでいいかもしれないなんて思っている。



また、階級制度ヒエラルキーのようなものは存在するらしい。



それは下から、農民と町民、武士、そして王族。



王族がいることを知った時はワクワクしたけど、我々農民が彼らのお目にかかることはまずないと知り、ガッカリしたのだった。



武士階級の人々は王族と農町民を繋ぐ役割も担っており、たまに現れるらしい。



だいたいが農民か町民の出身で、体格や運動能力に優れた者、志のある者が志願して、合格すれば武士になれるそうだ。ただそこまでの道のりが死ぬほど大変なのだという。



そして、ピラミッドの最下層を占める農民と町民は、それだけ絶対数も多い。



ダンテは農民の多いエリアだが、農民同士上手く協力し合い、土地や気候にも恵まれ、飢えることなく生活している。



ダンテの町民たちは農地を囲む森を少し下った所で商売をしているらしい。



農民も、着物や農具、薬などはそこで調達するそうだ。



各々に満足のいく生活を営んでいるため、階級制度について不満が生まれることもないのだという。



王族と呼ばれる人たちは、ここから遠く離れた土地で暮らしており、それぞれの村の均衡を保つ役割を果たしているらしい。



なかなか平和な世界だと思う。



ちなみに、ダンデ以外の村については、ジェマ婆ちゃんもよく知らないようだった。



「ふう。」



収穫したトマトを抱え、日陰に腰を降ろした。汗ばんだ肌が風に撫でられ気持ちがいい。



すっかり農民生活が板についてきたように感じる。



そしてもう一つ、わかったことがある。



それは ーーーーー・・・



「あ、ごめん、今お水持ってくるから!」



私には、植物の声が聞こえるという能力があるということ。



それはもちろん、農作物に対しても同じ。種の時点で植えてほしい場所、水加減、手入れの必要な箇所などを教えてくれるのだ。



とうもろこしに水をやりながら、他の声にも耳をすます。



茄子なすに呼ばれて近づくと、何やらカラフルな虫がくっついていて、つるんとした紫色の果実に今にも食いつこうとしていた。



ゲッ!虫はちょっと・・・と思いつつ、その辺にあった木の棒を手に取る。



ヒーヒー言いながら虫と格闘していると、背後から聞き慣れた声が聞こえた。



「やれやれ、記憶がなくなる前は、そんな虫、涼しい顔して潰していたのにねぇ。」



「ジェマ婆ちゃん!」



ジェマ婆ちゃんともすっかり仲良しになった。



毎日のように様子を見に来てくれるジェマ婆ちゃんには感謝しかない。



「そうやって細かい所にも気がつくから、アンタんとこの野菜は格別に美味しいのかねぇ。」



この能力に気がついた時、ジェマ婆ちゃんにそれとなく聞いてみたことがある。



『ねぇジェマ婆ちゃん。植物の声って聞こえたりする?』



「はぁ?!」という顔をされた後、否応なしに町医者の所に連れていかれそうになったので、すぐに冗談だと言っておいたけど・・・



どうやらこういった特殊能力は、一般的ではないみたい。



ジェマ婆ちゃんには、私のつくる野菜は不思議と記憶がなくなってからの方が美味しいと言われたので、どうやら転生後に身についた能力のようだ。



「アンタのせいでアンタん所の野菜以外は食べられなくなっちまったよ。」



なんてジェマ婆ちゃんが言ってくれるから、野菜づくりにも精が出る。



「そうそう、今日はアンタに話があって来たんだよ。」



ジェマ婆ちゃんちょっと神妙な顔で話し出した。



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