日付が変わるまで、貴方を憎む言葉をバケツに吐く。
お久しぶりです、寝れませんでした。
酷い一日だった、ものすごく酷い一日だった。
心臓を握り潰されたような、気持ちになった。彼が切り出した別れのようなそれに、私は目の前が見えなくなった。どうしてだろうか、どうしていいのか、どうしたいのか。そのすべてがわからなくなった。
恋は盲目、というだろう。盲目でいてはいけないだろうか。
彼の為に死にたいのだ。どうしても、この情けない人生の終焉を彼のためだと言い訳させてほしいのだ。
「すきだよ、それでも仕方ないんだ。とっても、素敵な日々だったよ」
酷い、酷いことをよくも言ってくれたものだ。彼の為にやめていたお菓子を買いにコンビニに逃げ込んだ。
彼の強がりに、正直その時はまったく気づけやしなかった。それはもう溢れてくるものすごい量の止まらない雨で、その先が一切見えなかった。もちろん後ろも見えなかった。
恐ろしいほどに、道路の車に誘惑された。今死ねば彼にとって私はきらきらと輝く女のままでいられるだろうか。今死ねば、今死ねば。
今死ねば私は彼の心に残るだろうか。彼の為に死にたい。彼の為に死んでしまいたい。
私は馬鹿ではなかった。コンビニに着く頃には、それは自分の為であることに気が付いていた。それでも冷たい体温と、止まった心臓は存在を否定し続けた。
帰路についた私はどうしても、彼を恨むことしかできなかった。恐ろしいだろう。情けないだろう。汚らしい、彼を恨むことでしか息ができなかった。
死にたいよ、助けてよ。貴方の未来の為に、捨てられるほどの私だったの。
怒鳴り散らしてしまいたいのに、喉から漏れるのは嗚咽だけだった。
恋は盲目ではダメだろうか。彼を盲目にしてしまってはいけないだろうか。恋は、先が見えなければならないものだろうか。人生に支障をきたすものだと思っていた。我慢できるならセーブできるなら、それはきっと恋ではない。恋で無いのだ私にとって。
「嫌いになったわけじゃない」
彼はそれを口に出す。彼は、私への思いを声色で出す。
私に彼の為に身を引けと言っているようだ。何が我儘の一つが聞きたかった、だ。そうして、脅しのように私の気持ちを試す癖に。
聞き分けのいい女じゃ不満だろうか。
好きだ、仕方ない。彼のよい通りにしてやりたいのだ。エゴでもなんでも構わない。彼がよければ私がいい。それが私の恋愛だ。
それを知っての行いか。それを知っての発言か。
問うてしまいたかった。泣いて、叫んで、問うてしまいたかった。
何度言っただろう、貴方の為に死にたいと。何度私は言っただろうか。私は貴方に尽くしたい、それほどに焦がれているのだと。
彼の人生の為に死ねるなら、今ここで死ぬのに。馬鹿ではない私はそこで酌んでしまうのだ、彼の埋めた本心を。
結局、彼の本心を優しくそっと吐き出させた私は彼が寝た後死にたくなった。
苦しかった。あぁ、とても苦しかった。どうしてそんなことをするのか。本当にお前は私と同い年なのかと問うて、問うて、首を絞めて安らかなその眠りの中の顔を苦痛でひねりつぶしてやりたくなった。
恋は盲目だ。そんな悲しみも見えなくする。それでも、今日である今だけは恨ませてほしい。今度その口からそんな情けない弱音や逃げをしようものなら殺してやる。
そんなこと、本当はできやしない。彼が遠のくのがただただ怖いだけの私はバケツに吐露した。
「好きなら二度と離れるな」