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冒険者登録をしよう

 最初に受けた印象は『騒々しい』だった。様々な装備に身を包んだ冒険者達が、真っ昼間から酒を浴びるように飲み、馬鹿騒ぎをしていた。


 冒険者ギルドは二階建てで、入ればそこには酒場が姿を見せ、そのカウンターで冒険者ギルドの受付がある。

 奥には二階に上がる為の階段があった。

 その脇には更に奥へと向かう扉がある。


 冒険者ギルドに入ると、騒がしかったのが瞬く間に静かになり、冒険者達の視線がスケアとメリーナに集まった。


 そんな様子に小さく息を吐き、不快な眼差しを無視して受付へと向かった。


 その道を数人の男達が阻んだ。その顔は赤らんでおり、足取りも悪いことから明らかに出来上がっていた。

 ギルド内だからか、軽装の男達は粘着質な眼差しをスケアの身体中に這わせる。それを遮るように、メリーナがスケアの前に躍り出た。


「何か御用でしょうか?」

「テメーに用はねぇ。俺らに用があるのはそいつだ」

「主様は矮小なあなた方の御相手はなさいません。代わりにわたくしがお伺いいたしましょう」

「亜人風情が、黙ってろ! おい、ねえちゃ……っ!?」


 唐突に室内に充満する濃密な殺気。濁流の如く押し寄せるそれを受け、命の危機には敏感な彼等冒険者はその酔いを一気に覚めさせ、だがそれまでに感じたことのない程のおぞましい気配に誰一人動けなかった。


 そんな中、殺気の主(スケア)はいつの間にか自らと対峙していた男達の背後に何をするでもなく立っており、彼女がいったいいつ動いたのか、その挙動すらも気付かせずに彼等を追い抜いたのかを誰一人として認識できなかった。

 それは対峙していた男達も例外ではなく、少しメリーナに意識を移しただけで視界から消え失せ、殺気の起点を探れずにいることに戦いていた。


 そんな中、男達は目の前に立つメリーナの様子に違和感を感じた。そして、それはすぐに気付いた。

 彼女はこの殺気の中でも平然としているのだ。

 その身に今尚感じられる殺気で酔いが完全に覚めていた男達は、思わず頬が引き攣る。


 この殺気を受けて平然としていられるのは気付いていない間抜けか、または、その人物にとって取るに足りない、または同程度の実力者であると言うことだ。


 出来ればそれは信じたくないことだった。

 獣人は確かに人間よりも力も強く、胆力もある。だが、それに耐えられるかは千差万別で、彼女は特に戦闘にも関わりがないだろうはずのメイド姿だ。


 だが、男達は気付いた。気付いてしまった。目の前の獣人には隙が無く、先程と若干呼吸が変わっていることに。


 この女は間違いなく自分よりも強い。そう確信すると同時に、背後から恐ろしく冷たい声が聞こえた。


「酔いが覚めるまで〇・六秒。状況理解に更に三秒。メリーナの変化に気付くのに更に十八秒。殺気の起点に最後まで気付けず。貴様────」


 背後に立つスケアはそこで一度口を閉ざし、トドメと言わんばかりに一番近場の男の首に、手刀の形を取って優しく当てた。


「都合、二百六十八。それだけの命を失ったと思え」


 絶対零度の如き声で言われ、スケアに邪な目的で近づいてきた男達は、直後に襲いかかってきたそれまでよりも更に濃い殺気を叩きつけられ、その場に倒れ伏した。

 その余波を受け、周囲の冒険者達もそこにいた三分の二ほどの数が恐怖で意識を手放してしまっていた。

 残った者は等しく顔を青ざめており、普段の冒険者ギルドでは考えられないほど静まりかえっていた。


 そんな中、ニコニコと現状とは不釣り合いな笑みを浮かべているメリーナが、口を開いた。


「主様? わたくしはもちろん何を言わんとしているかを理解しております。しかし、彼等には少しばかり理解に苦しんでおられます」

「む? そうか。儂は少し口下手なのでな。許せ」


 少し意外だとでも言うようにスケアは肩を竦める。


 スケアとしては、最後に叩きつけてやった殺気で伝わるだろうと思っていたのだ。


「まぁ……なんだ。儂はこう言いたかったのだ」


 そこで一呼吸置くと、


「儂の所有物(モノ)に手を出すのなら容赦はせんと言うことだ。わかったな? ……と言っても、その多くが気を失っておっては言い直した意味が無いではないか。のぅ、メリ────何故お主は泣いているのだ!?」

「うぅぅううぅぅっ!」

「えっ、儂がなにかしたかっ!? ……ハッ、まさか、貴様ら……言ったそばから……!」


 そんなことしてない! と言いたげに必死に首を横に振る気絶しなかった組。ようやく殺気が収まったのに、再び全身に浴びせられる重圧に、一人、二人と再びその多くが意識を手放していった。


「うぅ……そのように言ってくださって……メリーナは幸せ者でございますぅ!!」

「感極まっていただけか貴様ァッ! 俺の心配を返せ!」

「心配していただけたのですか! 真に、わたくしは幸せ者でございます……!」

「人の話を聞いてるか?」

「主様」

「あァ?」

「口調が戻っておりますよ?」

「うぐっ、ゲッホ、ゴホッゴホッ! いかんな。もうすぐアラフォーだと言うのにこれではな……」

「主様」

「……なんだ?」

「名残惜しいですが、そろそろ登録に参りましょう。無駄に時間が過ぎてしまいました」

「……誰のせいだと思っておる。ええい、わかった!」


 端から見ると茶番としか思えないやりとりではあるが、先程の威圧に曝された彼等は皆笑うことが出来ず、なんとか意識を保ち続けた者達はへたりとその場に座り込み、畏怖の目でスケア達を見ていた。


 意識を失い、人間の絨毯で覆われた地面を臆面も気にした様子も見せずに二人は受付へと向かう。


 受付につくと、傍目から見てもわかるほど引き攣った笑みの年若い女性が待ち構えていた。


 ギルドの職員には元冒険者の者とそうでない者がいる。目の前の彼女は一見線が細いが、若干筋肉がついていることからおそらくは元冒険者だったのだろう。


「よ、ようこそいらっしゃいました。本日は、どのような……ご用件でしょうか……?」

「冒険者登録をしたくてな。準備をしてもらいたい」

「か、かしこまりました。では、こちらの用紙にご記入ください」


 そう言って、カウンターの裏から二枚の紙を取り出し、スケアとメリーナの二人に差し出した。


 そこには冒険者になるにおいての規則が幾つか書かれており、名前と職業を記入する欄があった。


 この『ニールマーナ』では識字率はそれほど高くはない。寧ろ、書けない人物の方がほとんどだ。

 その為、もし字が書けないのなら代筆すると一言添えられる。


 しかし、職員はスケアが字が書けると確信していた。なぜなら、メイドを連れている人物となると、間違いなく貴族以上の人物であり、その所作からも気品を感じられることから、スケアが教育の受けた貴族であると判断したのだ。

 なにより、貴族が小遣い稼ぎとしてお供を連れて冒険者になることは多く、それ故に貴族を見慣れているからこそそのような判断を下したのだ。


 そんな考えを認めるように、スケアは代筆を断りサラサラと名前を書いていった。


 自分が生前よくいた世界での言語や文字ではないが、この世界で忙しい時期があったために滞在していた。だが、特に勉強することなくスケアはその文字を理解することが出来ていた。

 本人に自覚はないが、恐らくこれが『言語理解(EX)』の力なのだろう。これは生前から存在するスキルなのだ。


 名前を書き、注意事項に目を通していたスケアだが、職業の欄で一瞬動きを止める。


 未来ではそんな表記はなかった。おそらく、この先の未来にて表記されなくなってしまうものなのだろう。


「この職業というのは?」

「そちらはご自分の職業を書く欄です。例えば、戦士であれば戦士。魔術師であれば魔術師とお書きください」

「あぁ、なるほど。前衛職か後衛職かの確認ということか」

「その通りです」


 

 そうなると、スケアはどうすれば良いだろう。自分の戦闘スタイルは多種多様で、剣や刀を使うこともあれば、槍も使い、弓や魔術も扱う。

 初めは魔術のみで悪魔王の軍勢を治めていたが、それだけでは駄目だと判断して体術や武器術を身につけた身だ。簡単に言えば、動ける魔術師と言ったところだ。


 この世界の魔術師は後方で動かず、前衛に援護の魔術を行使したり、または派手な大魔術を行って戦闘を終わらせるのが普通だ。即ち、スケアのように魔術だけでなく体術等をも行使する魔術師など存在しない。


 それでも魔術が使えるという事実があるために、魔術師と記載すれば良いのだろうが、それは少し憚られた。


 なぜなら、スケアは師の教えから戦士についての心構えを持っていたからだ。

 数多の師匠がいるスケアだが、特に厳しい修行を受けたスカアハの教えが多く心に残っており、そのスカアハ自身が女王であり、戦士でもあったため、似た境遇の自分も引っ張られるように戦士としての心構えを身につけていった。


 実際、スケア自身剣術や槍術、体術を主に行い、本当に厳しいと考える相手にのみ魔術を行使するスタイルなのだ。


 その為、この世界での基本の考えからすると、スケアは魔術師とはとても言いにくい。なにより、本人自身も微妙な違和感を感じてしまっていた。


 チラリと横目でメリーナを見ると、『スケア様直轄メイド』と書いていた。無言で頭にチョップする。

 その表記を見ていたらしい職員も苦笑いしていた。


「何をなさるのですか!」

「お主はなにを書いておるのだ、たわけ者め」

「わたくしは間違いは何も書いておりません!」

「そうだな。お主は何も間違いは書いていない。それは儂も認めよう。だが、その欄はその事実を書く場所ではない。お主の戦闘スタイルを書くのだ」

「……わかりました」


 メリーナは少し頬を膨らませ、納得いかなさそうにその欄を書き換えた。『スケア様のみ守護する肉壁』と。

 無言で頭に拳骨を落とした。

 

 メリーナは涙目で頭を押さえ、スケアを上目づかいに見た。彼女の耳と尻尾も垂れ下がっており、不安そうにしていた。


「なにか間違いを犯しましたか!?」

「そればかりは間違いでしかないわ! 貴様、まさかわざとではなかろうな!?」

「なにを仰いますか! わたくしは御身をお守りする為だけに存在するのです!」

「儂の身の回りの世話であって、盾にするためにいるのではない! 書き直せ!」


 何故か職員や気を失っていなかった冒険者達から生暖かい視線が寄せられている気がする。


 メリーナは不貞腐れ気味に、『メイド』と書いた。

 物凄く反応に困る表記である。またおかしな事を書くと思って準備していたのだが、その手を思わず止めてしまった。


「……ネタ切れか?」

「……」

「戦いに身を置かせていた弊害か……」

「面目次第もありません」

「別にそんなものは求めていない。だが、敢えて言わせてもらおう。そこに書くのは戦闘スタイルであって、自分の職を書くのではない」

「戦闘スタイルですか。……敢えて言うなら体術、でしょうか」

「ならば武闘家とでも書いておけ。あながち間違いでもなかろう」


 寧ろ、彼女のスタイルではそれしかない。魔術も彼女は扱えるが、それでもその多くは強化系の魔術であり、それ以外はほとんど実戦向きではない。

 それは獣人という種族的には仕方のないことである。


 獣人は産まれながらにして、魔力操作が苦手であり、どうしても魔力が収束せずに霧散されてしまう。これは獣人という種族の更にその中での細かい種族での違いはなく、『獣人』という大きな枠組みで言えることだった。その為、魔術を扱える獣人でもいいとこ中級魔術が関の山なのだ。


 メリーナもそれは例外ではなく、彼女の魔力操作スキルはCである。それは決して低いというものではない。『ニールマーナ』における魔術師の中でも一流に足を突っ込んでいるほど。

 そこに至るまでがメリーナにとっての苦悩の連続だったのだ。


 メリーナはスケアに言われたとおりに『武闘家』と記入し、スケアはその相性という面から考えて、結局『魔術師』と記入した。


 それを受付に渡し、目を通すと次にステータスプレートを発行する際に目にしたのと同じような水晶玉を取り出した。


「それでは、こちらに手を当ててください。お二方の得意属性を確認いたします」


 得意属性。響きからして、恐らくは魔術を扱うにおいて、その人物との相性の良い属性の確認と言うことなのだろう。


「それは、儂らの相性のよい魔術の属性であるということだな?」

「然様です」

「それは、魔力量もわかる、なんてことはありませんか?」


 メリーナが気になったことを職員に問いかける。


 そう。その問題があった。

 メリーナの魔力は八万代。総量で言えば、実はこれは魔術を得意とする魔族でもここまで高い者は滅多におらず、それほどの魔力量があればそれは竜と比較されがちだ。

 メリーナの魔力量だけでもそんな状況だというのに、それよりも多い文字化け魔力量持ちのスケアが試せば大騒ぎになることは間違いない。


 果たして、職員はこくりと頷いた。


「それはございます。このアーティファクトに触れていただくと、その方と特に相性の良い属性の色に輝きます。弊害として、その光の強さによって、大雑把な魔力量が判別可能なようになってしまいます」

「場所を移す。別部屋を用意してもらいたい」

「……はい? あの、それはどういった……」

「魔力量はひとつのステータスだ。それを赤裸々に公開したくないのだ。わかってくれるな?」

「は、はぁ……? わかりました。少々お待ちください」


 納得していない様子ではあるが、職員は承知の意を示し、カウンターから離れていった。


 冒険者はたった一人で行動するのは危険なため、パーティ、と呼ばれるひとつのチームを組むことが多い。それは二人から六人までの人数の中でそれぞれの役割を定めた構成になっている。


 新人の教育のためにとメンバーに空きのある心優しい中級者パーティから誘われることもあれば、新人でも腕の立つ者なら引き入れるということもある。

 昨今の新人冒険者はそれを求めることが多く、何より魔力量の多さは特に重要視される事柄だ。それが、スケアが書いたような魔術師には尚更だ。

 だからこそ、それを求めていないのか、と職員は不思議に思ったのだ。


 魔力量がわかれば二人とも必ずといって良いほど高確率で引き入れようと迫られることだろう。

 片や竜と比較されるほどの魔力量を持ち、片やそれを大きく超える文字化け状態。引き入れられないわけがない。


 しかし、二人にはそんなつもりはなく、無能共に群がられるのを嫌うためにそれは避けたかったのだ。


「お待たせしました。別室へとご案内します」


 数分ほど待ち、先程の職員がスケア達に声をかける。


 二人は二階に上り、一番手前にある部屋に連れられた。

 そこは会議室らしく、広い室内にその大部分を占領する大きな円卓。そこに先程見せられた水晶玉が鎮座していた。


「それでは、どちらからお確かめになられますか?」

「わたくしから」


 言って、メリーナが前に進み出る。


 メリーナが水晶に触れる。直後、眩いばかりの透明な輝きが放たれ、室内を照らした。


 職員はその光に目を瞠ってはいたが、属性に関しては可哀想なものを見る目になっている。


 属性には数多の種類があるが、最も多く、代表的なものをあげるとするならそれは七種類になる。

 最も基本的且つ最も多様性のある四大元素、地水火風。その色は、順に黄、青、赤、緑。

 次に金の輝きとなれば、それは聖属性、もとい光属性。そして、その対となる黒の輝き、魔属性、もとい闇属性。


 そして、最後の無色透明。それが────


「……無属性、ですか。これ程の魔力量を持ちながら……」


 無属性。別名、無能。そんな呼び名をスケアは何年ぶりに聞いたことだろう。

 その判別の方法は古い考え方のそれであり、スケアの生前生活していた時代では改められた考え方なのだ。


 何故無能と呼ばれるのかと言うと、その考え方が行われていた当時、無色透明な輝きを持つ者はその他の属性の魔術を行使できないと考えられていたから。

 しかし、その考えは間違いであり、確かに不得手とはしているが他の属性の魔術を行使することも可能としているのだ。


 その事を知っている身としては、この色で輝いても、何ら気にするようなことではない。スケアとメリーナは気にした様子もなく、あっけらかんとした調子で普段通りの会話に身を委ねていた。


「無能でございました」

「しょげ返るよりはマシだが、笑って言うことではないわたわけ。無属性にも無属性のやり方はある。それをよく教えてやったろう?」

「はい。身体強化系統の魔術ですね」

「そうだ。そして、お主はそれを自他共に認めるほど巧みに扱えておる。故に、胸を張るがいい。儂が赦す」


 職員は思った。何故この二人は気にした様子じゃないのか、と。職員がこれまで見てきた中で、自分が無属性だとわかった瞬間、ショックのあまり崩れ落ちるか、現実逃避するか、泣きじゃくるか、放心状態になるか……とにかく悪い状態になるのが常だった。

 しかし、目の前の二人は違った。寧ろ率先してそれを伝え、双方柔らかな笑みを浮かべているなど、初めての経験だった。


 寧ろ、スケア達にとっては魔力量にあまり触れられないことに不思議に思っていた。どうやら、その辺りは大雑把な認識にしかならなかったからだろう。ステータスプレートを見せれば卒倒すること間違いない。


「……コホンッ。では、次はスケアさんの属性を確認しましょうか」

「うむ」


 咳払いをひとつ、気を取り直すような職員の声に、素直に頷いて応える。


 水晶の前に立ち、触れようとして……ピタリ、とその手を止めた。


「……どうされました?」

「いや、先に伝えておこうと思ってな。気を強く持て。そして、絶叫はしてくれるなよ。これよりお主が目にするものは、全て現実だ」

「は、はぁ……?」


 職員にとっては意味のわからない言葉だ。だが、真剣なスケアの眼差しに気圧されるように頷いた。


「……では、触れるぞ」


 宣言し、水晶に優しく触れる。


 次の瞬間、会議室内を暗黒が支配した。


「……え?」


 一面の黒。一寸先は闇……どころではない。右も左も深い闇。自分の手も、体も、何もかもが見えなくなっていた。


 深いその闇の中で、どこからかスケアの笑い声が聞こえてくる。


「はははっ、外に光が漏れぬよう結界を張っておいたが……」

「結界が放つ薄い光すら全く見えませんね」

「うむ。これは滑稽よ。笑うしかないな、ハハハッ」

「ふふ、主様。もうひとつ面白いことが」

「む?」

「職員殿が……意識を手放しております」

「今日だけで意識を手放す輩は二人目か。真に軟弱な者共よ」

「静かになったからどうしたのかと思えば……だから主様が気を強く持てと仰ったのに」

「この暗闇の中で匂いだけで相手がどのような状態かをわかるのは流石だな」

「何を仰いますか。主様は音で周囲を認知していらっしゃるではありませんか」

「それもそうか」


 職員が完全に意識を手放し、周りが暗闇に包まれる中、二人の笑い声が不気味に反響するのだった。

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