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「使っても使わなくても、私はすでにこの剣を使うって宣誓してるつもり。こんなに大胆に晒しておいて使わないだなんて……。ファックの時だとしたらもったいない、でしょ? それとも、単にぶら下げてる童貞君なワケ? そんな柄でもあるまい……」

 跳躍。激突。距離を置き。そんな言葉が可憐な躯体を見せる女から出る。公約。霹靂(へきれき)。ウィットに富み。下品に上品な大気。ムード。アトモスフィア。

「……見た目に反して、下品なことを言う女だ。遊んでるのか? それは後悔しか生まないだろうな」

 鎧の剣士は堂々とその言葉を斬り捨てる。

「ふんっ、そう捉える方こそ下品なんじゃないっ?」

 流し目のナフト、中段の構えに入る。合わせてるように、冗談への構えを見せる騎士。完全に足を止める両者。視線だけは相手から逸らさない。

「戦う前に聞いていい? あんたは騎士(ナイト)? 剣闘(ウォー)(リア)? それとも単なる兵士? またはコマ? あいつらみたいな。職業、ってか得意な戦術を聞きたいわけ。さ、あんたは何?」

「……私は、言うならば、剣士(けんし)に相当するだろう。この世界ならば、な。それに、あんな下劣な奴らとは比較して欲しくないものだ」

「剣士……、そうだと思って・た・よっ……」

 女は言葉に任せて。目をうっとりと細める。精悍な眉の下には。恍惚にやや及ばない表情を見せて。

「さすが……」

「それが何だと言うのだ? 何がさすがなのかな? まだ実力の微塵も見せていないつもりだが」

「うーんと、ほらさっ、みんな銃やボウガンや魔法ばっかじゃん? 要は、やっ(チー)すい(プな)飛び(アイ)道具(テム)なんかを使うでしょ? 異界とは言え、このクラスの剣士とマジで交えるのはご無沙汰だからさぁ。特にこんな上玉ときたもんだからねぇ。その長物(ながもの)、上手に捌いてあ・げ・るっ」

 剣士と名乗る漆黒の騎士は。背中から剣を抜きはじめる。挑発に応じたのだろうか。

「あら、やっぱりその長剣を使ってくれるの? もっと舐めてくれるかと思ってたんだけど……」

「ああ、使うさ。時間が惜しいからな。ただ、お前の推測していた長剣などではなくっ!」

 力んだ両の手で剣を抜ききる。そして割るような仕草。長剣は見事に割れ、二つの片手剣となって。

「双剣としてな。()(ザム)(クレ)()の剣技、とくと味わってくれ」

「ってことは、あの『啜り泣く竜』よりかは上って見てくれたんだね。サンキュッ。まぁ、それにしてもペラペラしゃべるね、あなた。……大丈夫?」

 ゆっくりとたっぷりと時間を込めてナフトは言った。

「大丈夫か心配しなくてはならないのは、あるいはお前の方だろうな」

 鎧の剣士のズシッと音なる、重い一足が動く。その体裁にしては、やはりしなやか。先のドラゴニアの件は確かに鮮やか。――近くの枯れ木に、少量残った葉。風、または気迫に流され落ちる。両者の視界にまぎれもなく、入り込む。相手に隙が出やすいチャンスであった。人には、目の端にあるものを追ったり、気にしてしまう傾向がる。いってしまえば女も同じ、両者に隙は出やすい。つまり、この瞬間が戦局(ターニン)分岐(グポイ)(ント)となるわけだ。第一撃目で決まると言ってもいい。柔らかなシルエットを持った影。太刀のような影をも構えているのだろうか。跳躍。からの急襲。()(ザム)(クレ)()からの使者は、さすがに容易(たやす)くそれを見切っていたようだった。すでに、体勢を変えている。

「今、やってみって見せているようなそんな直線的な軌道では、私に攻撃できまい」

「――ッ!」

 想像していた通り、この敵は思考を読む。

【どのレベルまで思考を読んでいる? まさか、ね】

<ああ、その憶測(まさか)の通り、女剣士よ>

 そんなセンテンスが意図せずアイグラスに反映される。もうそんなもの使う局面でもないにもかかわらず。つまり彼女は無言で。そしてニィッと頬を釣り上げた笑顔で応対した。呼応して構えを変える剣士。よりいっそう張り詰め始めた空気。地面で足を蹴り。より距離をとる両刀の騎士。驚くことになる。黒の鎧には――傷。太刀を受けた記憶はない。傷がつくようなヤワな鎧でないことは騎士が一番よく知っていた。「ああ、先の音が銃器の音なのか。サイレンサーという道具を使っただろう? まるで魔法のようなことを、お前たちもするのだな。その武器は、なるほど機械仕込みというわけだったな。おそらくは、その可変性で相手を翻弄(ほんろう)するために創られたものだろう。それに、私に見せないように姿勢を変えた瞬間だったのだろうな。銃剣にスタイルチェンジして、去り際に撃つセンスもいい。あの高速では、正直、見きれなかったよ」

「……嘘つき」

 鎧の騎士は咄嗟に体勢を変えていた。確かに斜めに銃弾をそらしていた。

「どっちのことを言っているんだ? 貴様の方こそ」

 女の頬が緩み。再び持ち上がる。愛憎を込めて。

「この鎧はそんな()道具(もちゃ)では壊せやしないからな。ただ、一度喰らって試しておきたかったのだよ。事前の事情説明だけでは分からないことがあるだろう?確かに、私はこの世界に不慣れ、お前は私たちに不慣れだ」 

【ノーマルなこと言うね】

「フッ。さっきまで確かに剣だけであったはずの相手の武器が。なるほど銃剣となっていたワケか。ここまでで6枚のカードを見せているな。いや、その嘘を吐く口を含めると七枚か?確かに、これなら多彩な戦術が採れるというものだな。女剣士よ」

「ただ、可変なだけじゃないよ。もっと手札を公開しようか?」

「ほう……! 更なる自信があるとはなぁ! よほど素敵な武器を使うんだろう」

 感嘆の息と共に、両刀の騎士は言った。両者は阿吽の呼吸で、さらに距離を取る、ジリジリと。

「あらっ、それを言うなら使い手が素敵だと言ってよ?」


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