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「さて、この剣『グングニル』とあんたに関してはこれまで。こっちが気になっているでしょ? 『注入さ(・)れる(デルー)悪夢』……これは盗み聞きしてた、よね? だからっ、説明は省くよ。いいでしょう?」
「ああ、特に……いや、全く問題ない」
「やっぱ、とっくに知ってたんじゃない」
ナフトからは満面の笑みが消えない。
「私は命に代えても国を不利にすることはしない」
「……兵隊冥利に尽きてるってことね。よっぽど冥帝って存在は――」
何かナフトが言いかけた時。
「が、同じ剣を扱うものとして、先の火球の侘びとして伝えよう。 何、いたってシンプルだ。君のような複合的な技は使わない。ただ、この長剣を使うのみ。高速と対洗脳魔法があるとだけは伝えておこう。
ああ、君たちから見えれば、高速移動は『超高速移動』になるな。それに注意だ。私はスタンス上、冥王様より魔術を借りている。その魔力は無尽蔵だ。それはそれで問題ないな?」
「ええ、問題ないねぇ」
私は、大剣の四パターンと『注入さ(・)れる(デルー)悪夢』の五枚のカードを使って私は戦うと思って良いわ。残念なことに五枚目が、ジョーカーなの。揃いの役はファイブカード。どっ? それでも勝てそう?」
「ああ、六枚以上カードがあるかもしれないと。こちらは先ほどから仄めかして伝えているはずだ。セブンカードならば、私の勝ちになるだろう。この予言は実現するな」
――魔法の力が無尽蔵。本当なら脅威中の脅威。本当でなくとも脅威。少なくとも『注入さ(・)れる(デルー)悪夢』もナフトの能力だと思われているようだ。それは嬉しい誤算。
「で・はっ」
先ほどの鎧の騎士の動きと同じくらい、いやそれ以上に身軽。どこにそんな力があったというのか?
(魔力でも捜索できない。目視と行こうか。幸いかな、あの電子女は単なる傍観ということか)
そんな思いが鎧の騎士の脳裏をよぎる。
【モナ、しばらく待ってて。すぐに終わらせるから】
<だ、そうだ>
【待ってるよーぅ!】
<そんなに待たされることはないだろう>
ナフトのタイトスーツの黒、対するは鎧の黒。硬い(タイト)口撃と、漆黒の舌撃。距離を空ける。剣闘の儀式。のようなもので。二人は。姿、音とともに。両者は闇の中にスッと溶け込んでいった。
ロレンツォと秘書。
不安がる司令官と、司令官が不安がることを心配する補佐官。ネフィリム、その内部はざわめいていた。
理由は一つ。――決戦。戦が決まるだけで止まるなら、これほどのざわめきは見せない。今朝の騒がしさとは、雰囲気の色が違う。モノクロで言ったとしても、まさに中間。




