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「では、別の部隊に任せてみては如何でしょうか? 例えば陸戦隊などは? 単体での成績は……」
部下の言葉を遮って、ロレンツォは。
「スニーキングミッションの方が好ましいのに、なぜ小隊以上を出さなくてはならない」
メガネの位置を直しながら言う。複数回メガネを触った。
「では、彼女らにもっと丁寧に戦うようにお願いしてみますか?」
「ふむ……、まぁ、無駄だろうな、こう言う連中は……。全く、頭が痛いよ」
そう言うロレンツォの頭脳は澄み切っていた。今目の前に一つの戦が待ち構えているからだ。キッとさらに目つきを尖らせると、ロレンツォは司令室のオートドアを開けた。静かな開閉音。空気だけは妙に軽く感じた。それは船が小型から大型に変わったからであろうか、低酸素の小型艇の中から出たために脳が動き出したか、それとも――。司令室は塗装を丁寧な施していない鈍色をしていた。操作パネルなどを見えやすくするためでもある。下を向いている兵士、ざわつく下士官たちが見守る中、オリーブ色の軍服を着たカブラギ少佐が入室した。E-DENの特務部門の責任者でもある。
「カブラギ少佐、例の二人組は?」
ロレンツォは瞬き一つせず。落ち着いた表情を見せて、そう尋ねた。新しく赴任した委員長としての風格や威厳も示すためでもある。やり過ぎないように、警戒され過ぎないように。ロレンツォのことならば、あるいは、どこに諜報員がいるか分からないためなのかもしれない。
「ロレンツォ新委員長、もうしばらくお待ちいただけませんか?」
「カブラギ君。作戦開始まで2時間を切っている。事後報告の時間はあっても自己紹介の時間が無くなってしまいそうだな」
軽い冗談でカブラギを威圧した。他の委員もロレンツォ同様に苦い顔をしている。皆、長い間待たされているからだけではない、喧嘩などが起こらないか不安でいるのだった。
「あれっ、ここって化粧室じゃなかった? 何この勢ぞろいは? 今日は誰かの誕生日だっけ?」
と言いながら、長髪の美女、ナフトが入室した。ふわりと髪がなびいている。タイトなエナメルの黒は、見るものの心まで吸い込んでしまいそうな光沢を帯びていて特に乾いていて無機質なこの空間では。
「も~う~、ナフトちゃーん、覚えなくっちゃぁ~!」
と電子干渉乙女、モナもホワッと入室した。機械化されたとは思えない肉感と、ほんわかオーラと話し方が空間の温度を上げた。
「ナフト・アーベンフロート、Sクラスの特殊工作員。過去の戦績は個人でトップ。所属する兵団の死者数も極めて低い。素晴らしい兵士だと聞いていだのだが?」
「ええ、素晴らしい兵士だと思ってくれて問題ないわ」
ナフトは軽くウィンクをして見せた。これには二つ以上の意味がある。一つは好みの男性へのパッシング。もう一つは、相手の動体視力を図るためだ。過去の経験がナフトにそうさせている。加えて、もう一つの意味が込められている、結果トリプル。ロレンツォは反論もせず、表情も変えず。




