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笑いながらナフトは答えた。
「私たちくらいじゃない? こんなに不屈の、決死の、撃滅のやる気があるのは」
「なぁんだ。相手してくれない人だったんだ。本当にがっかり。じゃあ、一〇倍量にするから、死んでね!」
ナフトに襲いかかる瘴気のオーラ。襲いかかってくるは、正気ではない量の毒やウィルスの霧。対抗するも虚しく、それらに対抗する手持ちがないように見えるナフト。いみじくも、ソードマスターの丁寧な忠告通りに動いていたら?甚だしくも、戦術を変えていたらこうにはならなかっただろう。ナフトの肉が、ボトッっと地面に落ちる。比類ない激しい痛みに美顔までも歪んだ。
「……くっ、これは、ちょっとだけ、やばいかもね」
「ああ、もしかして『人類が』とか考えちゃってるでしょ」
「…………なんで……わかったの?」
「目の前のこと考えればいいのに。でもさ、人間って脆いってことがわかったよ」
「…………あぁ…………そう……」
腕の肉のほとんどと足の肉のほとんど。頬の筋肉にまでもやられている。あれほど美しかった髪の毛も。見るも無残。その瞬間、喉の肉がカビて落ちた。
「……あ…ん…た………、お…めで…たぃ……ゃつ……だね……」
「まぁ、事実めでたいからね。こうやって侵略の一歩を踏み出せたのだから。そろそろ、この中ではゆっくり効くタイプの出血熱が襲うはず。肉片ごと飛び散るけど、もう痛みもないでしょ?」
バシュッ、ボシュッと破裂する背中や首回りの肉。
「……ぃ……ぅ……?」
「ほらね? もう声帯がやばいんじゃない? 減らず口もここまででしょ?」
戦場で拷問を受けた死体のように。ボロ雑巾のように。横たわるナフト。覚悟を決めたような笑顔になったのは、一〇発目の破裂が起きた時だった。激しく損傷したナフトの体は。噴霧器のように血を大気へと送った。
「なーんちゃって!」
「は!!? なんで声が出るの? ……『会話』の魔法を使った? 誰かから奪った?」
ソードマスターを後ろから拘束し、大剣のエッジを喉元に突きつける女剣士。
「いつの間に!?」
剣をアホのように使う『ソードマスター』に嫌気がさしたのかもしれない。
「んふふ、あっはっはっは」
カラカラと笑いながら言う。
「……そんなことできる訳ないじゃない」
言い終えて、すっかりと笑顔が消えるナフト。その心から興味がすっかり消え失せた証拠。




