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「ああ、お姉ちゃんは、こっちの世界のウィルスを想定しちゃってる。それは大きな間違いだよ。第四帝国で採取されたウィルスなわけ。ええとね、まとめて言うと、お姉ちゃん達には未知のものなの。未知なるものと接した時の最善手って知ってる」
「……ええ……私みたいに……相手の様子を伺うこと。……それと――」
「「逃げること。距離を置くこと」 なぁんだ。知ってるんじゃんか。最大の損失を最小化しなくてはならないんだよ」
「先生が……言ってたってこと……?」
ナフトは上段の構えで冗談まじりに。
「そう。分からないものを誰かに聞く。大切じゃない?そんな小さなことより、少しでもいいから動いてみてよ」
「……じゃあ、お言葉に……甘えて。…………おしゃべりでも続けよう……かなっ」
「ああ、もうここで死ぬ人なのかな。じゃあ、合わせてあげる。その剣の名前は?」
「グングニル……あー、名前聞くと大剣が使えるってパティーン?」
「違う違う、そういうパティーンじゃないよ。相手の剣を見て、相手を殺すか死ぬ瞬間を見れれば僕の剣になる」
「……そう……だった……かしら?」
「あっそ。それはどういうこと?」
ナフトはとうとう大剣をも降ろした。やる気もないのだろうか?
「腕とか足とかは感じないの?」
敵だけを夢中で睨むナフトにゆっくりと諭すように教える。
一瞬の後、ナフトが驚くだろうと思っている。
「……!?」
一瞬の後、ナフトは驚いた。カビのようなものがナフトのタイトスーツを侵食している。酸をかけられたかのように。男性向け雑誌で好まれるような姿になるナフト。
「…まだまだ。…皮膚一枚残っていれば…感染はしない。感染しても、こっちで治療が……」
「だから、お姉ちゃんってば。未知なんだって。お姉ちゃんとしても、人類としても。あーあ、せっかく優秀な剣士って話聞いていたのになぁ」
ナフトは片膝を着く。剣を杖代わりに地面に立てる。
「あら? 優秀は…優秀だってば…。事実、……さっきから、ずーーっと狙ってるの……気がついた?」
「その剣で、でしょ?」
「そう。この剣で止めを刺す。必ず、ね」
「未知であることに、もっと恐怖を感じた方がいいよ。こっちの世界の人間ってみんなこんなに死にたがりなの?」




