80
目の前には一振りの剣が登場した。見せつけるように、魅了するように。ドクロの細工と人の筋肉をミイラ化させて作ったような柄。刀身は脆そうで、細い。
(剣を第一手で投擲に使うような奴、楽しめないね。こっちも同じくしてやろうか)
グングニルは、銃剣モードになっている。この条件で。ギィィィンッッ!! 手に体にズシンと来る一振り。
「うーん、伊達にソードマスターを名乗ってはいないね。その軽い刀身でこの圧力……、すごいもんがあるね。どう? お姉ちゃんと一緒に剣を集めない? もっと大人の女性についても教えて、あ・げ・るっ」
「……ほら、この剣は脆いから。お姉ちゃんの長くて大きい剣では勝てないよ」
どうやら、この子には意味が通じないようだ。
「さっさと倒されてよ。集めるなら、僕一人でできるから、いいよ」
魚たちに続いて、鳥たちも逃げる。もはや、この湖や池の群れ周辺には。生物らしい生物はいない。ただただ、滅んだ国の歴史が。ここの一部になれと語りかけてくるようだ。確かに相手の言う通り。このままでは分が悪い。グングニルは可変の体験。E-DENが知る限り、近距離・白兵戦・対銃撃用の大剣モード。中距離・投擲に使える槍モード。それ自体が数種類の弾を撃ち出せる銃剣モード。そして、物をレールガン式に放射するカタパルトやマッス・ドライバーモード。ナフトの選択は?
「選択できるのは、あなただけかしら?」
また、ソードマスターの豪快な一振り。間一髪で避ける。髪の毛の先が切れたらしい。チリっとカールがかかり。間一髪、ならず。おまけに、頬にも切れ目。
(こいつ、存外、素早い!)
「ん? どういうこと?」
「こういうことよ、子供は大人の言うことを聞くもの」
ナフトは大地に豪快にグングニルを叩きつけるように突き刺す。アクチュエーターの音が少し聞こえたかと思う頃には、すでに変化を終えていた。
「ああ、お姉ちゃんも剣モードを使うんだ。よかった。なんでそんな銃剣みたいな、
攻撃範囲が定まらない武器で戦うのと思ってたよ」
グングニルは銃剣モードから、大剣モードとなり。そして、ナフト。剣と腕をひねり、上段に構える。ソードマスターから見える面積を一番少なくし、太刀捌きを見せない予定。
「お姉ちゃん、お姉ちゃんも長いっていうか、もっとシンプルなやつにした方がいいよ。もっと小回りきくのないの? じゃないと、あっさり倒れちゃって、僕、虚しいんだ」
「これで十分に立ち回れると思うけど? 槍がお好み? それならもっと長いよ?」
「そう思うなら、それでもいいけど、僕と遊ぶ時間だけは作ってね」
「ええ、同意見だわ。ってか遊んであげるわよん」
「あ、僕を馬鹿にしてるでしょ? そういうのはいけないんだぞ」




