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(そうだった。機械製品はバグる可能性があるらしい。出来損ないの魔法が、空中で消えていくように、機械にも失敗作があるんだろう?)
「ヒャハッハッハ。お前、もしかしてバグったのか?」
水槍、飛ぶ。モナのお腹。穴が空く。幸か不幸か、そこにはナノマシンの残数はない。
「やっぱ、市民が死んだとかが戦いの理由じゃないじゃん。領土目的は本当なのだろうけど、殺人愛好家なんじゃない?」
「口だけで声が出るのか……ん!? まさかァァアアア!!」
アクエルオは慌てて空中を見える。何かを探すように。次いで注目する。はるか天にモナの小さな姿が見える。モナの推進加速剤は、水素か酸素。取り込める材料は目の前に豊富にある水、H2O――水素と酸素の合わさったもの。酸素プラズマの消失――それは即ち酸素そのもの。(空中給油できる個体なのか? いやいや、違う。水の中の不純物で核融合ってやつをやっているのだろうか? アレ、核融合には融合炉が必要だったかな? 何かしらの成分が影響を与えたのか。いや、そもそも18秒という時間が嘘なのかもしれない――が)
「ただ、誤算があったようだなぁ。ウヒヒヒヒ。そこまでなら追加で全方位攻撃ができるほどに、弾は確保できているんだよぉ」
ほぼ180度の半球状の。ハリネズミのような槍群。モナに最も近い一本に水が流れる。血管に流れる血のように。とくんとくんと集まっていくのが分かる。そして、再度圧縮。陽炎のように。揺らめくアクエルオの姿。今度は素早い。再び、全方位の水の槍がモナを襲う。
「残像とは古典的な作戦を使うな。クソクズゴミ女め……。ヒヤッヒャ。まあ、俺様の方が切れ者だったということだ」
正真正銘、空に浮かぶモナを貫く。逃げる場所がない。距離も隙間もない。いくらモナでも仕方がない。
はずだった。アクエルオの計算はある意味正しい。
「ブッブー! 一個、影武者ができるということはぁ、何個でもできるってこと。あなたの水槍のようにねぇ。案外、私たちの能力って似ていますよ。あなたがセコセコ水のストックを作ってる間に、私は私のストックを作っていたのあなたが水を圧縮した時。陽炎のようになっているから、こっちも見えなかったでしょ。あなたの敗因は『屈・折・率』ぅ」
アイグラスに目をやる。再確認。
【ロレンツォからモナへ。圧縮時の水の屈折を奴は察知していない。目が追えていないのを、こちらの分析で確認できた。君ならお好きなように】
【モナちゃんからセンターへぇ。サンキュッ♪ いっただきまーっす! ゴチ!!】
「どこだぁ! どこに逃げ隠れたクソチビビッチヤロウゥゥゥウゥウッゥゥゥゥゥ!」




