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七秒。そう、槍の本数は時間があるほど増える。突き刺す場所が同じでも、水は噴出している。動作が魔法の起点。
「……ああ、ああ、お前、まさか俺の水槍に射程があると思ったのか? あっはっは、俺の水は無尽蔵。魔力で作り出しているのだからな。そこを考慮に入れなかったお前の負けだ。まぁ、俺様のトラップでもあるんだよぉ、それ」
(まぁくつーちゃん、撃ち、まくって、…時間を、…稼いで……)
三秒。直後、数百は余裕にあるであろう水槍が飛翔するモナに向かった。直後、酸素プラズマ弾がアクエルオに向かう。次いで二発目、留めの三発目。――も、すべて水で相殺。ナイトボアは浮かんでいるのがやっと。ナイトボアも大気中から酸素を取り込む。しかし、相手は文字どおり時間制限がなくて無限なのかもしれない。大気中の酸素からプラズマ弾を作るには、どうしても一定時間が必要だ。
「こういうのはどうだ?」
……0(ゼロ)。モナの躯体は虚しくも、自由落下し始めた。
「ヒヒヒヒヒヒ、ヒャーーッハッハッハッハ!! アホだろ、お前! 俺はお人好しじゃないぞ、案の定な!」
アクエルオの体に水流が集まるや否や。
「全方位攻撃だ。落下しつつあるお前とそのおもちゃ。貫いてやるよぉお! ヒーッヒッヒッヒッヒ!!」
球体になった水は、背景の見え方が違う。アクエルオを中心に圧縮されているように見える。陽炎の球体。不思議な光景。そして、発射される先より速い水の槍。ハリネズミのように、全ての角度を狙っている。モナの高度は二〇〇mほど。ナイトボアも含めて串刺しにしようという魂胆。
「快感だぜ。お前みたいなこまっちゃくれたクソガキをぶっ殺せるのはなぁ」
下品なアクエルオの顔に笑みが灯る。
「やっぱ、市民が死んだとかが戦いの理由じゃないじゃん。領土目的は本当なのだろうけど、殺人愛好家なんじゃない?」
「お、イタチの最後っ屁か? 口だけでお前は何もできないんだろう? ヒャッッヒャッッヒャッッ!」
一撃がモナにぶつかる。寸前で起動がズレる。幸か不幸か、ナイトボアまぁくつーは無傷。外装の違いがある。モナはと言うと、空中でナノマシンを具現化・高質化して、傾斜でほこ先だけを変えた。
「器用なやつだな。ヒヒヒッ。だが、水なら俺も器用に扱えるんだよぉ」
勝利の笑みを絶やさないアクエルオ。愉悦の表情がそこにある。
「やっぱ、市民が死んだとかが戦いの理由じゃないじゃん。領土目的は本当なのだろうけど、殺人愛好家なんじゃない?」
「……は?」
空を自由落下しているはずのモナが、場違いな発言をする。呆気にとられるも、この世界のことを思い出す。




