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数十本の水の槍がモナを執拗に追った。モナは植物型ナノマシンを飛翔モードにして必死に逃げつつかわしていく。
「取りつく島がないです! 夜の蛇ちゃん、酸素プラズマ連打ぁ~!!」
ナイトボアの目が光る。酸素プラズマ弾がアクエルオ目掛けて飛んで行って。しかし、アクエルオは剣で三日月型を地面に深く刻む。さらに大量の水が酸素プラズマ弾に向かう。
「酸素プラズマ弾は良い武器かもな。着実に水を砕ける力がある。それに、俺様に直接当てられれば文字どおり雲散霧消かもな。だが、質量に反応してしまう酸素プラズマ弾は大量の水で回避される。水の量は有限か無限か? それを考えないお前が悪いなぁ。ヒヒヒ。水の中から集めているんだろう? なら水自体の方が常に多いわけじゃねえかぁ! 俺には、ヒッヒッヒィ、無駄で無意味な武器だったなぁー!」
また一八秒の猶予の中、逃げるモナに叫んできた。
(ああ、こいつわかってないなぁ……。こういう奴って好き。不確定性がないからぁ)
そして、モナ。考える。地から水が出るならば、空中戦の方が良いだろう。そして、水の槍は蛇のように蛇行するが、一定期間で新しいものを作っている。ということは空からの攻撃には弱いはず、水の槍には飛距離がないから。飛距離がないから、次々に作る。これまでの全ては長くて三〇〇m前後。五〇〇mあればおそらく避け切れる。――気になるのものは、そして最大限に恐れなくてはならないのは、あの三日月紋から出た水。大量に水を出したからには、そこには策がある。
(どうぞ、策に溺れてね)
モナはそんな思考をしていた。
「トォォォーーーーウッッッ!」
再び飛翔。滞空時間、残り一七秒。これまたどこかのアニメか映画のデータでも見たのだろう、真似ている。声と共に、腕を伸ばす。そして、ナノマシンも具現化して広げられる。またブースターに火がともる。地面を蹴る。なるべく強く。できるだけ遠くに跳べるように。愛くるしい電子の天使は可憐に飛翔。一五秒。遠くから見たならば、白鳥が天に舞ったような像が見れたかもしれない。ナノマシンの粒子がそこかしこに飛び散り、はなはだ花火のようにも見えた。
「ああ、そこで花火として、水で内部から破裂させられたいのか? ヒヒ。最後なら高いところが良いのか? シリコンヘブンに近いからかぁ?」
加速の世界でモナは思った。
(ロボットのっ、天国っ、シリコンヘブンなんてっ、ありませんっ!)
モナは思考すら途切れとぎれだった。追いかけてくるは水の槍。蛇のように神話の七つ頭の蛇のように。
回路が速度に耐えられないのだろうか? 九秒。空を飛んでいるからだろうか、モナは安心できた。いや、ロレンツォのアドバイスのおかげだろう。この作戦は、厳しい。リアルタイムで全ての槍の軌道を読む必要がある。
「数百本は挿入してやるよぉ~、穴という穴になぁ。ヒッヒッヒッヒィ、ヒャッヒャッヒャッヒャッ!」




