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接近戦闘の開始には大きく分けて3種類ある。 一、正面からの接近。メリットは通常はない。もっとも敵の警戒度が上がるパターン。お相手の目が後ろについているならば話は別だが。二、背後や意識外からの接近。メリット大あり。もっとも敵の警戒度が下がるパターン。だが、特殊な警戒をしている場合はトラップが施されている場合も。奇襲戦法や少数犠牲戦術――マイノリティアタックなどがこれに分類されるのかもしれない。が、マイノリティアタックとは少数を犠牲にする方法。二人に犠牲の二文字はない。三、高速接近。敵の意表を突ける。大胆かつ、機能美や整った戦闘感覚がなくては成立しないテクニック。二人の選択はもちろん一。理由、愉しいから――以上。
「モナ、距離をとろう。相手もきっとノッてくれる」
「へぇ、なんでそう思うのぉ? 敵はコンビで戦いたいと思ってくれるかもよぉ。お互いの苦手な部分を補うように戦う賢いやつっているじゃん~。ってかほとんどの軍隊ってハイロー合わせて、困難ばっかだよね」
ハイローミックス――低コストな戦力と高性能な戦力を混ぜる戦術。ハイとハイで構成されたならば、何ができるだろう。
「よし、モナ、これから言うことは精度九〇%くらいで断言できる」
「それって断言になってないけどぉ……。いつものように、『断言』になっちゃうんだろうなぁ」
「分かってるじゃん?」
「例の匂いがするってやつでしょ」
「ご明察、さっ、突っ込むよっ。降りようか。そうだな……一〇〇mまで一気に近づこう」
刹那、数十m距離をとる両名。相手と同じように仲間同士の距離をも開ける。独立させて、共闘せずに、共闘させない予定。突如、何か大きな存在感が二人の間に出現した。あまりに早く、あまりに希薄なため、存在を察知することだけでも難しい。向かって左の男か雄らしき存在が汚い笑みを浮かべる。次いで、この大気の凶々しさを。より濃くした瘴気のようなもの。それがナフトとモナの距離をさらに開く。敵は高速接近をしてくることを予見していたようだ。または、めちゃくちゃな反応速度がないならば、この対応は不可能。ナフトは脳内興奮物質――アドレナリン。快楽物質――セロトニン。が、同時に脳みそから溢れんばかりに滲み出ているのを感じた。期待はできそうだ。接遇が良いワイナリーのようなもの。分断される刹那、そのわずかな時の中。――二人はお互いにウィンクし、余裕を魅せる。――敵戦力はそれを見逃さず、意味を探っているかのように見える。敵味方は、まだたっぷりと手札を持っていること。明らかに複雑な戦闘になりそうだ。半分が水分で構成される敵は、モナの前でニヤけ面を晒している。マントのような黒い特殊な形状の外套を纏っている。かすかな風やほんの少しの動作で、ヒラヒラと揺れる。顔はどす黒く、濁って見える。たっぷりと遊ぶ服は『切り札』を隠している可能性大。と、ここまで外観を確かめた上で。
「えーっと、お前ぇ!」




