65
「いや、もうとっくにガチガチなんだろ? 誘ってるんだよ。ナンパされちゃったねぇ? 考えた通りには行かないもんだわ」
「何で? 敵が来てもぉ……。あー、やっぱり」
「あの『ソードマスター』とか大仰な名前の敵。私の手にあるグングニルを見据えてる。私相手にカッコつけてくれるじゃない」
「げ! モナちゃんは水はあまり得意じゃないですぅ……」
「私は大剣が相手だと武者震いが止まらないけどねぇ。ああ、鳥肌も…、乳首も…んふふっ、たっちゃうね……」
うっとりとした目でナフト。銃剣となった射撃モードのグングニル。それを下に下ろし、左手で胸を押さえる。期待感からか、それとも――。流し目で敵を見る姿も美しかった。
【今度こそ、絶対にシャットアウトされないからな。ロレンツォより両名へ。それではこれより『オペレーション人馬座』を実行する! ブリーフィングが戦闘直前になったのは、突如魔術的特異点が出現したため。現地の状況は……こちらでは確認できず、だ。モナが止めているのだろうが、どうせ言うことは聞くまい。つまりは、だ。二人が索敵、作戦立案の根幹、戦闘及び確保をしてもらうことになる】
【ロレンツォ、それって『作戦無し作戦』って言うんじゃない?】
【そもそも特殊な任務をこなすエージェントはこれらを容易にできるはずだ。君たちなら尚、だろ? それに得られたデータからはアドバイスができるはずだ。ロックを外してくれるならば、な。量子暗号とかやめろよ】
【ふぅん……でさっ、レンマーツォってあのレンマーツォってこと?】
人馬座、第三帝国の古語である。半人半獣のキメラが、愛する王女のために、弓で王を射る。転じて、絶対に刺さる矢、確実に成功を収めることを意味する。
【そうだ。想像の通り。つまりは作戦に失敗は許されない】
最後、王を射たことで地の獄へと堕とされた人馬。この決戦はどうなる?
【そんな任務に強いのは誰でしょぉ~う】
愛する王女は、その後幸せを手にした。逸話や伝承、伝説、神話ではそうなっている。
【君たちだ。………いや、言葉を正そうか。君たち二人しかいない。私の先の心配は杞憂だったようだ。
【ナフト、戦闘行為を開始する】
【モナちゃんも出ま~っすぅ】
【『オペレーション人馬座』を開始する】
【ロレンツォ殿、面目が保ててよかったですね!】
【カブラギ少佐、君ってそんなキャラだったっけ?】
アイグラスには当面、E-DENからの連絡は来ない。戦闘開始のシグナル。現地で見たものをベースに、ロレンツォは指示を送るのだろう。事実、それが可能だとロレンツォは思っている。しかし、それは全く無意味なことになるかもしれない。さぁ、この戦いは伝説となるだろうか、神話となるだろうか?――それとも。




