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眼下に見えるは。雲で霞がかった陸地。森が多く。一二時の方向には。S字を描く川が見える。ベースカラーは緑。森のグリーン。ライトからダークまで。その川の下流。小さな灰色のつぶつぶが見えてくる。あれが水の都と呼ばれていた時の謳歌の結果。第三帝国領土内部でも、僻地となってしまった。古代の帝都は、今の廃墟。どの帝国にも言える、盛者必衰の温故。鳴り響くのは。半ば鬱蒼としたジャングル。そこから聞こえる鳥の声のロンド。こういう事案にも、意外な楽しみがある。空飛ぶ電子の天使は。そんな風に思っていて。(もっと拡大しちゃおうかなぁ……って。間もないかぁ)
【ナフトちゃん、ナフトちゃんってばぁ! あと五分だよぉ】
ナフトはいつの間にか眠りに落ちていた。あと五分で、なんなのだろう? 起きるのかな? ……ん……まぁ? ……いい……けど……。――――霞みがかった意識――――。
【あとぉっ、五分だよぉっ】
(……何が……五分……な……ん………だ……?)
【ナフトちゃんの大好きなぁ、戦闘ポイントのラズリーまで、後5分なのでぇ~っす!】
(オーケイ、うん……オーケイ)
「あまりにも快適すぎたからさ、少し落ちてたかもね。今度からはさらに重力二倍にしてかっ飛ばして。そうすればこんな睡眠が少なくなるから」
「あんれれぇ~、今の2倍じゃ効果ないでしょぉ~? それに、睡眠をラグって言ったんでしょ? その表現って、どぉうぅ」
「機械の体と違って、生身には睡眠が貴重なんだよ。そうそう、美容にも睡眠とプロテインが重要なようにね」
体が、顔が、オーラが、説得力を持たせる。
「ふぅ~ん、そういうことにしておいてあげようかなぁ」
「納得出来るできるだろ、普通? さ、そろそろ少しは真面目にいこうか。戦闘開始まではどれくらいって予定してる?」
「ろ……六分五二秒変動値は小。どう?」
「――――」
約七分。腕を組んで目を下に向けるナフト。敵はザザムクレン。通称第四帝国。その名を冠する通り。三大帝国の隙間を狙っては。魔術的特異点を出して侵攻してくる。本格的な侵攻? いや、軽い索敵や様子見のようなものが多かった。こちらの物理学は相手には通らない。相手は何らかの方法で、こちらの世界でも魔法のようなことを行う。
「この距離はぜっつみょー。五分あれば、あなたなら索敵できるよね。もし、そうしないならば、土壇場のバトルが愉しめる。やっぱ最高の空の旅だったようね。なんかこう……メインディシュが待ってる、か・ん・じっ」
「空の旅って、いつ経験しても、聞くだけでも心を癒しますよねぇ~。てかぁ、ときめきがあるって言うかぁ~」
「なっ、モナはどこに行きたい? ニュージニア? カドキア砂丘? モーサーン諸島? それともセレブの島のナスル・カマカーン?」
突如尋ね出すナフト。行きたい場所。生きたい場所。逝きたい場所。イキたい場所。
「鎮の極地、ルコ大寺院に行きたいです」
「何? 人間らしい可愛さを得たい? それとも解脱したかったりするワケ?」




