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【上を見てみて!】
【救援か? まだ来ていないぞ!】
【じゃあホールを見てて。隙あらば撃って、その燃料気化爆弾を】
リックに少しだけ足りなかったもの、それは一か八かの精神。そんな理由で散っていった『鷹』がいたので。その一言をリックに言えなかった私には、度胸が足りなかった。その時、私たちのアイグラスに予定されたいた文言が飛んできた。
【これより、戦術核ミサイルを打ち込む。現場が位置を誘導せよ。繰り返す、これより、戦術核ミサイルを打ち込む】
アイグラスでも分かる、冷淡な響き。すでに、負けを見込んでいる。ホールごと壊すという悪手。次にここに魔術的特異点を出されたら? 打つ手が狭められるというのに。上層部の頭の中を覗いて見たかった。『鷹』の自爆特攻は、無残にも時間を稼いだに過ぎなかった。この状況下で、時間を稼げる存在に未だ出会ったことはないんだけど、ね。
【割り込み入電〜。第三帝国のジークムント・エフェクトを放った駒より作戦本部へぇ。一〇秒後に、ジークムント・エフェクト再発動可能。少しだけ待てないのぉ?】
そうそう、上空には早漏野郎達が待機してたんだ。
【その成果の根拠が薄い。繰り返す、これより戦術核ミサイルを】
【では、メジャー・シーキングしちゃいまぁーっす。悪く思・わ・な・い・で・ね♪】
「お、おいっ!」
リックが声に出して驚くの無理はないこと。あの大編隊が、踵を返していく。加えて、核は使わなくて良いのかという疑問が冷気となって現場を包み込む。
【それではそれではぁ、おぉ待たせいたしましたぁ〜。ジーーク・ムントォ・エフェクト~、展開・展開ぃっ!】
どこにその余力があるのか。また、先の装置なしでもこれが展開できるのか? 狂人ルーベック。天才ゲーベル。ゲーベル博士はこの展開を予測できていたのか? いや、単なる保険なのかもしれない。むしろ、予測できていると思われたのは、ルーベック教授の。この話の結論は、言わぬが華というヤツ。いつか、自分の中で結論を出そうか。ジークムント・エフェクトは、周囲の骸骨を消し去っていった。それもそのはず、魔術的特異点は小さくなっていった。踵を返し、モナの能力の限界まで引き返したはずの大編隊。
彼らは戻ってくることはなかった。バタリとその場に倒れるリック。ついで、私。
「終わった……のか? ナフト。これは現実だろうか?……いろいろと目まぐるしくてな」
「……終わっていてくれなきゃ、それこそお終いだろうね」
私は煮え切らなかったリックに皮肉を込めて、そういったんだっけ。後に被験体となるリックに向かって。
「終わったぁ、終わったのだぁ~!」




