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「科学ととととと魔法ののののの融合でででななな名ぁぁああああああ!!」
人間とは到底思えない表情で、そう言っていた。ルーベック教授――だったものは3体の骸骨に囲まれている。彼はあたかも人間のように具体化していた。特務八〇――第(N)一(I)帝国(C)と第三帝国の今回の約束、それは。
「とある魔術的特異点の解除法の一部の公開」
つまり、第三帝国には、ジークムント・エフェクトが存在するということの示唆。その代わりに第三帝国の人物を、重要な物から順に助けなくてはならないということ。それには最高の部隊である、特務八〇を出すこと。後に明らかとなったが、くだらない口約束なのだろうと、今でも思っている。私は空になっていたサブマシンガンのマガジンを即座に変えると
【ルーベック教授にとどめを刺す!】
そんなメッセージをアイグラスに残した。部隊専用のアイグラスなので、意見は全員に供給されるはずだった。何人に届いていようがいまいが関係ない、そんな感情だったはずだ。異様な臭気。瘴気。邪気。禍々(まがまが)しいそれらを殲滅。殲滅、撃滅、殲滅、撃滅、殲滅、撃滅……。殲滅しなければ! 三体の内の骸骨の頭をエイミングし、射殺した。その時、骸骨に腕を押さえられているにもかかわらず、ルーベック教授がより生前の肉体の具体性を帯びて前に出てきた。今更不思議がることはなかった。特異点では、どんな物理現象も起こりうる。……死者の再生さえも。『これだだだ、この本んんんだだ。こののの本が世界のの未来をを予言してててている。私はわわははは創造主ののの子ここにぃー!! ななれれるるるのだぁぁあああああっはっはっはっはっはぁぁあああ!!!』 叫ぶなってば、足掻くなってば、当時はそう思った。
実は私の想像は違っていたらしい。この話はもう少し後にじっくりと思い出そうとしようか。後に推敲しよう。骸骨はルーベック教授を押さえ、今にも噛みつきそうであった。なぜ、味方を? いや、味方と認識していない? 何か特殊な作戦? 噂だけがある魔法?? 未知という要素は、様々な道を想像させ。
こんがらがっては、混乱を産む。
『いんくるどぅーるどぅ。なぁーいずでぃるがみしゃ。へんどまるがさらららむむむむ。ひゅーどひぃーるくーひゅるひゅー。ららでら、ららでら、らんらでらぁああああ!! どぅーりぃ・びんがしゃぁ、ひびがしゃぁぁぁあああぁぁぁるなぱぱしゃぁる! 定点は帝展となり、捩れるアカーシャの縫い人は生まれ生まれに死に果ててぇ!! 竜種に柳枝に流羽に流雨。こんがしゃあがたに、欺瞞たれぇ!!』
ルーベック教授の表情には。野望の光と完全なる無への影。いや、闇か。同時にあるように見えた。少なくとも、私はそんな印象を受けた。もっと形容しがたい何かがあったに違いない。すると骸骨はルーベック教授の体を蝕み始めた。
「ルーベックッ。これが狙いかっ、くそっ!!」
ララデラは、乳と蜜の豊富な土地である。遥かなる、被血と危地を遠ざけた土地である。この土地に入るに、創造主との約束を果たしていないものが居た。それは、ヘンドマル川に入る手前のことである。 「大いなる巨人が、ネフィリムが、私の戦場を遮るのです」その光りが少なくなった使徒は言った。世の流布に欺かれた結果である。しかし、大いなる雷の後に、残った巨なる(フィリ)者はいない。創造主は怒りに震えて命じた。「三人のソナラの油で清められたものに、清められよ」そこに、堕天使ハハバムンは、生きることを新しくされた。光の柱とも金銀とも言えない、美しさに込められた愛となった。こうして、慈天使カーヌー・ルーンはこの世界に足を立てた。確か、『創聖の(ヴァ)書』のスサ記バンハイト月にある聖句。現代語訳すると。『約束された土地に入れない堕天使がいた。その堕天使は、三人の清い油で清められたものに浄化してもらう。そして、約束されたその地、ララデラに入り生命を新たにした』咄嗟に思い出せたのは、基礎課程で習ったときに印象的だからたったのかもしれない。
「『創聖の(ヴァ)書』には、もしかしたら科学的根拠が見つかるかもしれないんですよ」
当時の学習担当ザフラ・トッカードの言葉。今回に限っては、この不可解な現象を見てしまっては、それが特異点由来なら、ルーベック教授は、逆の形で生を受けてしまう? 三人の何かを使って、第四帝国に復活する? 馬鹿げた迷信だという人もいる。迷信が確信に変わるのは、存外あっけないものだ。私は無我夢中でサブマシンガンを撃った。撃ち続けた。この不穏な空気も共に掃いてしまえるように。悪夢ならば早く終わるように。私は三体にめがけてサブマシンガンの掃射を食らわせ続けた。が、虹色の波紋のような紋様が出て、銃弾がどこかに消えくだけだった。噂に聞く亜空間か、見たことのある虚数空間かと、今では思っている。後に、守りきれなかったということで始末書を一九〇枚程度。以前から溜めておいた分のも含むんだけどね。 ソレを書かなくてはならなかったんだっけ。ええと、骸骨三体は。ぐちょりぐちょぐちょ、がきょりばきばきと。ルーベック教授の脳みそ、内臓などから皮まで全てを食べ尽くしてた。そして、その内一体が、ルーベック教授が言っていたところの「予言の書」を持って、黒いホールとなった特異点まで向かおうとしていたんだ。
私はサブマシンガンというチョイスが良くないと思い始めていた。理屈は良く分からない。不運から来る直感なのかもしれない。だが、電離気体のようなもので、弾いているとするなら、この仮説が正しいのなら、私ごと弾かなくてはならないことになる。十死零生、こんな戦術も想定してる? 死ぬ気で突っ込んでくるアホがいるなんて誤算だろ? 突っ込んできたら、死ぬだろうと思わせてるんだろう? 私が持つ不安を、私はそんな心の叫び声でかき消した。そういえば、戦いの匂いを明確に感じるようになったのは、この時が初だ。私は背中の汎用大剣を引き抜き、骸骨目掛けて高速でジャンプした。一気に刃を振り下ろすとその骸骨自体は案外もろく、真っ二つになったかと思うと灰塵に帰してた。一定の重さ以上の物は弾けない。私はそう結論付けていた――私も若かった。ともかく、こちらの物理法則は、作用反作用の法則は、第四帝国にも通じたの。今になっての想像を言うとね。敵の障壁は二重になっていた、と考えるとうまくいく。敵の打撃を弾くエリア。その打撃をクッションのように受け止めるエリア。私の攻撃の反作用が、相手を切り刻んだに過ぎない。つまりは、その虹色の粒子は、一点集中に弱い。では、あの魔術的特異点にも? それはナイ。私は時に、こうやって過去の戦闘データを、瞑想中に楽しむ。戦闘以外では、これも醍醐味。
……そうそう、あの日の戦いの続きね。リナとエッジ率いる各分隊はサブマシンガンで応戦していた。




