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空を舞う。エア・バイク。そんな風に呼称できるだろうか。空を切る羽。定点エネルギーを使うために着いているは。タイヤ状のゾーグ機関の車輪が前後に二つ。全体的に黒みを帯びている。それは、深夜の闇に溶け込むため。『夜鷹』のように見えるシルエット。誰の趣向だろうか。青い光を定期的に出していて。
それは、ナノマシンでの索敵目的以外の何物でもない。遠くから見た者には、高速のホタルが見えることだろう。一方、ナフトが座る空間は広く備わっている。物量に限界があるためか、外気に触れてるとは言えども。さて、モナが座る空間は? 否、モナはこのエア・バイクと同化している。ちょうど『あの時』のように。モナにゆりかごのように包まれているナフト。重力や揺れはなるべくモナが吸収する。ナフトはそこまで疲れていなかったが、モナらしい配慮といえる。ゆったりとして、深い安心感に優しく包まれ。ナフトにとって、これ以上快適で愛くるしい乗り物は存在しないだろう。闇夜に浮かぶ雲。徐々に見え始めたかと思うと、半ばミストのようにエア・バイクを覆う。苦も句もなく、ナフトはシートに腰掛けていて。モナはナイトボアと迅雷を使って、小型の飛空挺になったのはついさっきのこと。すでにだいぶ、海上を進んできているようだった。E-DENはネフィリムからキグナスで送ると言っていたが。しかしながら、再打ち上げの時間が勿体無い。それに、どこに着陸すれば最適かが、どこにどうやって着地・したらバレないか。相手が相手だけに不安でいた二人。結果採択したのが、自らが移動手段になるというもの――。
「どう、ナフトちゃん。第四帝国の数少ないデータでも画面に移そうか?」
現在、ナフトの目の前にあるのはディスプレイ。光学的に人体工学的に最適化されたそれが映すのは。 現在地点と予想航路のみ。第四帝国が魔術的特異点。ナフトも真剣みを帯び始め。モナらしい、未来的な流線美を使った飛行機には、ディスプレイまであったのだ。
「……ふっ。どうせあの日の映像だろ?」
「ほぼ、ね。 第(N)一(I)帝国(C)領サウス・ハグランドで取れた情報もあるよ。情報の質に変化はないけどぉ~」
つまり、まとまった戦闘データはモナの中にはない。
「ねぇ、モナ。もし、不安と緊張を同時に感じるとしたら、どんな感じかな?」
「どうしたのぉ? 急にぃ〜。あぁー! ナフトちゃん。まだナノマシン型核爆弾の件を気にしてるの?
「……んーんっ、まっさかあ!」
「では、ズバリのズバリのところを言っちゃうとぉ?」
「そうよ、簡単な答えでしょ? 第四帝国の魔術的特異点……忘れるはずもないっ!」
意味ありげにゆっくりと、しかし力を込めてナフトは言った。
「『あの日』も……第四帝国と戦ったんだよね」
「うん、そう。私たちにとって特別で、…………悲しい日でも、……ある」
感慨深げにナフトが天を仰いでつぶやく。果たして天には届くのだろうか?
「私が第(N)一(I)帝国(C))の特殊部隊にいて。モナがジークムント・エフェクトの試作として現場にいたんだったね、あの日」
「そうそう、そして未だに試作のまんまだけどねぇ~♪」
「……」
(もうすでに、完成したと思うよ)




