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「怖いかもしれないけど、……おそらくは違う」

 ナフトは首を振る。部屋の暗さのせいかナフトの顔にも影が多く伸びる。

 そして、()()帝国(ニア)で被験者となっていた時に、偶然的に聞こえてしまった話を思い出す。

   『皇帝陛下は、使用出来る戦術核を持ちたいと願っておられる』

        『ニュークリア・キャンセラーだっけか?』

   『ああ、そうだ』

        『放射線を〇にできるって装置の話だろ?』

   『そう、放射線は確かに即時吸収されちまう』

        『だが公にできないんだろう? 国家間条例があったはずだ』

   『そうだ、これを守らないとマイナス・サム・ゲームになっちまう』

        『マイナス・サム・ゲーム? 難しい言葉だな』

   『すっごく簡単に言うと、核ミサイルを打ち合うことになるよ、ってこと。

    相手を滅ぼして自分も滅びるのが選択肢に入っちゃうかもしれないじゃん?』

        『お前、かなり過激で怖いこと言うよなぁ』

   『さて、皇帝陛下は公にすることをお望みだろうか?』

        『公にはなさらないだろう、イコール、抑止力にもならない』

   『そう、作れば作るほど経済的損失がある、ってことだ』

        『だが、上手く使えれば話は別だろう?』

 嫌なイメージと臭いがフラッシュバックする。灰色のコマ送りで想起された。つまりは……、第二帝国は核を決戦兵器として保持しようとしているのかもしれない。それも、どんな天候・環境でも作戦実行ができる『電子の天使』に実行させる可能性は非常に高い。何せ、全天候型で、ほんのちょっとの改造を加えればモナ単体も戦略兵器にもなる。戦略兵器と戦略兵器のコンビネーション……。ぞっとしないはずがない。

        『だが、上手く使えれば話は別だろう?』

 そう、第二帝国は「上手く」作ったのだ。核の放射能をノータイムで吸収・無害化するナノマシンを常時展開すれば良い。今私たちがしたように。 ここれは条約違反ではない。というより、証拠が残らない。当然、条約違反にされない。濃縮ウランの入ったナノマシンを統合させ、瞬時に核爆発を起こす。そして、ニュークリアキャンセラーを使う、これもナノマシンでだ。これなら、空中の敵なら放射能を残さす、大きな痕跡も残さず使用できる。陸上で使用しても、『放射能』という痕跡さえ残さなければ、外交でなんとでもなる。他の国の専門機関には火力や震度計上のデータが残るだろうが、新兵器開発実験などでごまかせばまずバレることがない。そう、これはきっと公開される兵器、別の名称で。核があるべきでない世界に存在すべきではない。大資本家によって独占された富があまねくではない。が、国民に分配されているこの危険にも安定した世界。公になったならば、必ず破壊か奪取を考える国や組織がある。同時多発でそれが起こったら? E-DENでは対処ができないかもしれない。……と、ナフトが思っている時。モナは鉄球に触れていた、まるで野生動物が餌に引き込まれるように。ナフトは考え込むとやや周りが見えなくなることがあった。モナを想っての考察だったからかもしれない。引き込まれたモナは、鉄球に吸引されていく。

「きゃぁあああああああっ!! なっ…ナフトちゃんっ!!」

 モナの叫び声がナフトの耳に突き刺さる。

「モナ、どうした? 脱出は出来そうか?」

 慌てて現状を確認するナフト。これはつまり、核爆発できるナノマシンとナノマシンを操れる兵士。やはりこの組み合わせで使用する核爆弾。そして取り込もうとするということは……。トラップを意味する。

【ダ…、ダメっ…、かもっ…、ナフトちゃん。もの凄い力で吸い込んでいくっ! 私より、……すっごい、すっごい力で……】

 苦悶(くもん)の表情でモナがアイグラスにメッセージを送った。モナは歯を食いしばって抵抗している。

「モナァァァア! 早く、逃げ出せぇぇぇえ! 早く切れぇぇぇえ」

 ナフトは叫んだ。今回ばかりは剣より声が早い。

 外は放射能の海だからだ。

「ムムムムムッッッ、ンンンンンンッッッ!!!!」

 口の奥から絞り出したような声が聞こえた。

「そうだ、鉛だ! 鉛を送り込め!」

 咄嗟とっさ、ひらめくナフト。

「やって……、み…、……るぅぅぅぅうう……!!」

「この鉄球が核爆弾のためのナノマシンならば、鉛は拒絶するはずだっ!」

 モナは、先ほどたっぷりと蓄えた鉛を、ナノマシンの表面に持ってきた。モナを包むようにして吸い込む可変の鉄球。その四方八方から触手が抜けていき、モナとの同化を始めていた液状球体は少し触手を動かすだけで、ほぼ元の球体に戻って行った。

 ――『上手く使えれば話は別だろう?』 

 ()()帝国(ニア)の研究所からの三度目の脱走をして、ダクトの内部に入り込んで聞いてしまった雑談だった。 逃げることに全神経を使っているはずで。こんな記憶があるとも思わなかった。モナを見据える。

「なんて……、なんて宿命なの……」

 ナフトは悲壮と同情のダブルの表情。

「ごめん、…ナフトちゃん。……鉛で電子回路がぁ、少しダメになってるみたい…。現状、把握、認識、能力が、12.89%まで低下、ちゅう……」

 これはナフトにとって、奇跡、暁光(ぎょうこう)であった。今のモナでは全ての事柄を、つまり自分が核戦略兵器として生まれてきたことを、有機的にまとめることはできない。

「演算能力を一時的に上げて、スリープするね……。現ポイントから一〇二m先、異分子のナノマシンと鉛を体外排出できる場所あり。現状把握はナフト・アーベントロートがこれを担当……」


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