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「落ち着いて判断すべきはモナの方だぞ。まぁ、多少は私も楽しみ過ぎたところがあるけど。どこからか私たちは……いいえ、モナ、あなたは最初から誘導されていたよ。おそらくは、この研究所のPCをハッキングした時から。……いや、もっと前から念入りに」
「ふぅん?? まだ話が見えないよぅ」
「敵の配置、鉛の壁、そしてそこから作る鉛のスーツ。おまけにこの予備電源の道標……。あなた以外の誰かが入れないようにしたの。余力を残してね。つまり、私はオマケ。第二帝国軍は単なる撤退なんてしていないわ。あれは誘い。実際にしたのは『戦略的撤退』。楽しい楽しいミニゲームなんてものは早々無いって思ってたあたりかな。完全に舐められててハメられてたってわけ。ああ……、恐ろしいね…………」
子供の頃の思い出がナフトを緊張させた。ナフトが嫌いなものは、弱いものと大型爬虫類、それと核。 この世界には存在していないことになっている禁忌とされている原子の諸刃の剣。
「私を……呼び込むためぇ? でもなんで恐ろしいのぉ?」
表情がややこわばり始めるモナ。深呼吸をするナフト。これは非常に稀なことである。
「落ち着いてね、モナ。……私がこれから言う通りの場所に放射能が見つかるはず」
この発言に驚いたのはモナだった。放射能とは文字どおり、放射線の根源を指す。普通の人間には見ることはできない。 無理をして、例えば体を犠牲にし、ある程度の探知ができたとしても。
ナフトが放射能の場所が分かるはずがない。
「え……、なんで、ナフトちゃんが? 分かるの?」
「……いいから、一度だけ信じてみてよ。モナが削り取った入り口部分の周辺だけにしか見つからない。
もしかしたら、鉛の表面にわざわざご丁寧に塗ってあったのかも」
「???」
謎めくモナ。放射のは塗れるものではない。混ぜ込んでいた? わざわざ? なぜ?
「謎めくかもしれない、でもやってみて」
謎めくモナを落ち着かせるナフト。モナは鉛を削り取ったドア、さっき微量の放射能を探知したドアをスキャンした。青い光が扇状にスライドして、電子音のあるスキャンが完了する。
「…………ほ、本当だ。…な、なんで分かったのナフトちゃん。それと私以外が入れないって……もしかして」
モナは機械の体で動揺していた。二人は警戒しながらゆっくりと歩き、部屋の中央、照明の当たる鉄球へと進む。
「モナ、私のパワードスーツのところまでナノマシンを剥いでくれ。そう、モナの分もだ。この鉄球を調べるためには、少しでも多くの使えるナノマシンがあったほうが得策だろう」
ナフトはやや慎重さに欠けていたかもしれない。これは間違いなく『核戦力』だ――。ミューオン触媒核実験と、もう一つの試みは間違いなく行われていた。
「私の容量を奪うだろうってことぉ?」
有機生命体独自の緊張からか、モナは能力を活かしきれていない。




