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「おかしいなぁ。センサーは、うーんと……。迅雷とブラックアウトのところしか反応してないんだけど……」
「鉛のお部屋。このワードから空気が変わったんだ。匂いも変わった、戦場がよりリアルになってる」
「小難しい哲学はぁ、モナちゃんには分からないのでーっす!」
「そうだね。迅雷と遊んできな。先に行ってるよ」
「そんなにお待たせしません~」
夜間の迅雷は警戒レベルが上がっている。機械兵器は、その姿は、旧世代の案内ロボットを大きくしたような、そして流線型がシャープになったようなボディを見せる。加えて正面ゲートが破壊されたために、センサーは特定のセキュリティチップを持たない個体に敏感だ。迅雷の電子的な視界の片隅に小さい物体が映った。全身の生体反応が薄い、機械の敵だと瞬時に判断し、アクチュエーターの動きを予想して武器を向ける。敵は素早い動きで移動している。結果、現在は建物の壁部分に隠れているようだ。非常時にシャッターが降りてくる場所、敵が防壁に利用しやすい安易な隠れ場。迅雷の武装、ガトリングガンの難点は初弾までの時間がかかることにある。迅雷には夜間侵入者を排除するためならば、施設の破壊も厭わないようにインプットされている。迅雷は壁ごとの破壊を選択した。毎四〇〇〇発のガトリングガンとは、戦艦がミサイルの最終防衛に使うほどの高火力である。Samy52は正確にその機械の体を狙っていた。砲身の回転が始まる音。鉄の長棒が回転する。初弾が発射され、放熱用の空冷に光がほとばしる。二〇〇〇発は打った頃だろうか、対象は見事に破壊された。――撃ったはずの迅雷もまた二〇〇〇発を打った頃見事に破壊された。電子干渉能力「メジャーシーキング」は防御や索敵だけに使えるわけではない。電子製品の対策が施されていない全てを、ほんの少しのナノマシンで操作することもできる。迅雷は操作され、逃げ隠れさせられていた迅雷を撃っていた。その機影を機械と生体の混ざった敵兵と判断させられたからだ。生体反応からが偽装。迅雷の打ち合いが起こり、同士討ちになったのだ。倒れた迅雷にはモナが映っている。武器はサブマシンガン。もちろん干渉の結果であるもう片方、完全に撃ち壊された迅雷。武器も同じ理由も同じ。
「やっちゃったかなぁ〜、このガトリングガン使いたかったのにぃ~。ま、次のを残しておけばいっかぁ~
確かぁ、あっちに4体でナフトちゃんが1体もうやっつけちゃったでしょ。ということはこっちには、もう1体しかいないんだぁ」
モナは戦場で時に、陽電子脳――頭脳を管理する高度な計算ができる人工頭脳――を遮断する。人間らしく思考したいらしい。モナは人間であるという自覚がある。どこまで機械化されても人間の女の子だ。そんなアイデンティティが。
仲間から警戒連絡を受けた右の通路にいた迅雷4体は連携モードに入った。敵のスピードが早い場合、迅雷はとある作戦を実行する。両手に付いているガトリングガンを撃ちまくる。といっても、やたらめったらに撃ちまくる訳ではない。通路の断面を四分割して、一体が右上の四角を、一体が右下の四角を、左下、左上と面として無駄なく撃つ。これでは避けられる兵士や機械兵器、アンドロイドやバイオロイドはいないはずだ。加えていうならば、弾先は尖っている。これを毎四〇〇〇発打たれて生き残れる、この程度の大きさの敵は――存在しない。




