31
疑問の思いと共に、地面からグングニルを大きくふりかぶる、――投擲。答えなどはどうでも良くなったから。ナイトボアはグングニルの高スピードに驚いたように、逃げ出す。
「見切れてるとは良いセンサー持ってるじゃん? でもさ」
半ば炭となった高い木々の成れの果ての間をくぐり抜けて。酸素プラズマ弾を定期的に出す蛇腹状のノズル位置に当たれば良いと思っている。ナイトボアはナフトに向け、小さな、たった少しで良い、人間が壊せるほどの酸素を大気から集めようとしている。事実、もう一刹那あれば、撃ち出せる。――運命の女神はどのように微笑むのだろうか? また、微笑むのはどういった存在だろうか? グングニルにはモナの付けたナノマシンが軌道修正を刹那に行っている。 モナが付けたナノマシンで作ったブースターが起動を曲げ、逃げる森の支配者の(ボ)蛇を追い続ける。
「制される気分はどう? ってお返事できるまで高性能じゃないか」
つまりは、ナイトボアの胴体には穴が空いていて。空中から見たならば、ナイトボアを通じて雪原と研究所が見えたであろう。
「あらー、残念ねぇ」
の言葉と同時に、ナフトは落ち着いて、アイグラスの裏チャットに目をやる。つまりは二重。 ――火炎放射とナノマシンの分身のダブルフェイク。からの投擲。アイグラスのチャットログにちらっと目をやる。
【ナフトちゃん、ナフトちゃんと同じ要素のデコイをジャンプさせておいたよぉっ♪】
【それ、いいね】
【あとでアイスクリームお願いね】
【全く、わかったよ、レプソーのストロベリー・アイスだろう?】
【わぁい! トリプルでお願ぁ~い。三段目だけはカラメルプディングでぇ!】
この余裕、結果はすでに決まっている。ナイトボアの残骸が、どこか悔しげに地面に沈み、……砕けた。
白さ。淡白な印象。寒さ。冷酷な印象。それぞれを二人に与え。見渡す限りの雪。滑るように、滑らかに 颯爽と雪原を走る二人。アイグラスでデータ資料を送り。ナフトも安全な場所、数十cm四方を踏むことができた。瞬く間に後ろに遠ざかる静かに灰になった森の残滓。陰鬱な気が抜けて、明るく見えるのは二人が戦っ(あそん)た(だ)結果なのかもしれない。サーチライトを無効化できていて、戦闘の跡が伝わるなら。ナイトボアからの定期連絡が、迅雷につながっているならば。万が一を考えて、早期に進まなくてはならない。
「あとは地上戦だよ。ナフトちゃん、メインでお願いねぇ~」
「お前もSクラスのエージェント、だろっ?」
「えっへへ。でぇはぁ、一部頂いちゃいまぁ〜すっ」
そのナフトの言葉には「相棒だろ」という意味も込められていた。阿吽の呼吸でモナも察する。正面ゲートが見えて。モスグリーンの扉。その重厚さに驚く二人。映像にはこんなものは映り込んでいなかったはずだ。何が起こっている? いや、何かが起こっている! も、進むしか選択肢はない。進むためには、ある種、裏口から入り込むのがスマートなのかもしれない。しかし、裏口から入り込むのは二人には向かない、性格がそうさせない。




