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「モナ、何時に集合だっけ?」
「へぇっ? ……っとねぇ…………、あー、他のことやっててい~ぃ?」
「ああ、いいよー。遅れることは多分ないだろうしね。……って何やってるの?」
「ジファ記の意味を探ってるのぉ。ナノマシンちゃんはオフにしてるよぉ」
「ああ、創世の(ヴァ)書のお勉強か。ご高尚なこったねぇ」
やや厚く潤った唇から、そんな声が出ている。顔は白く。透き通るほどに。髪は黒く。見入ってしまうほどに。そして――。エナメル質のタイトなスーツ。上下ともに、光沢を帯びた黒で統一。 それは、伸縮と防御力に優れたカーボン製。それに優しく身を包ませる男騙しの美女。
「ナフトちゃん、今日も綺麗ぃ~っ!」
「あらそ? 今日はメイクのノリがイマイチだと思ってたんだけどなっ」
眉を下げ、頬を上げ、笑顔を見せる女性。吸い込まれてしまいたいほどの美貌を持つ女性。その名は『ナフト・アーベンフロート』。彼女は大胆にも、お尻を見せつけるように、しなりしなりとふりふりと廊下を歩く。廊下にはE-DENとしての、国家間調停組織としての威厳を保つためだろうか、赤い絨毯が敷かれている。その見事なスカーレット・カラーをも、自分を見せつけるアクセサリに利用する。反射する赤みは、太ももの黒みを蠱惑的にさせていて。引き締まった筋肉が野生の猫科の動物を思い出させる。同じようにくびれの流線型は、見た者全て、まさに全て、嫉妬してしまうような女性構成員ですら、ため息をつくような美しさ。なめらかで肉感があって。野生的な美女特有の肌の潤いでさえ、タイト・スーツの上から感じられるほどに。年齢は三十一。エージェントとしても女性としても脂の乗った齢。も、彼女の特技は剣技に舌戯。つまり、誰も本当の年齢など知らないのかもしれない。背中に収められた、チューニング用の音叉のような。二股に分かれている、鬼のごとく尖った大剣『グングニル』。その音叉のような形をすっぽり収める大きな鞘ごと背に携えている。それをもまた、はっきりと見せびらかすように歩いていた。といっても今、その豪快で妖艶な様を見ることができるのは、廊下に敷かれた絨毯か艦内の壁くらいのものだ。彼女の妖艶な動きは戦場でこそ、その本領が発揮される。
「第十八次ニグレブ争奪戦争」聖地ニグレブで起こった悲劇。
「同時多発極東革命紛争」極東の独立紛争の沈静化。




